バカ
短編三作目です。読んでくれたら嬉しいですね。
「もうほっといてよ!」
どうしてあんなことを言ったのだろう?
彼は悪いことはしていない。
全部私のせいだ。
「どうしてこんなことなっちゃったのかなあ…」
ほんと呆れてる。
我ながら自分に程々に。
元々、今日は私たちのデートの日なのだ。
「もう…」
さっきまで遊園地で遊んでたのに
今は自分の部屋だ。
「ううっ…」
ポロポロと涙が零れる。
バカだな私。
自己批判が好きになるぐらいに批判した。
「ごめん…」
彼は遊園地に置いてきた。
未だ彼は私の家を知らない。
だから私の家に来てくれるわけも無い。
「でも、会いたいよ…」
「そうだな。だから会いにきたよ」
「………え?」
振り向くと、部屋の入り口に彼が立っていた。
「な、なんで……?」
「心配だからだろ? 決まってる」
「あ……」
見れば、彼の服には所々汚れや傷ができていた。
「なんで、私の家が分かったの…?」
今、私の頭の中はストーカー警報が鳴っている。
そんなことじゃないと願ってるけど。
「クラスのみんながみんな、お前の家を知らないわけないだろう?」
そう言われればそうだ。
「……ごめん」
ぶっきらぼうに明後日の方向を向いて、
私は謝った。
「俺もごめんな」
正直言うと耳を疑った。
彼が謝る必要は無いのに、
どうして謝るのだろう?
「なんで、謝るの…?」
「なんで? んー、そうだな…」
数秒考え込んで彼は
「好きな人が走って行くのをただ呆然と眺めて、すぐにあとを追わず、こうして、会いに来るのが遅れたことに対して謝るよ」
そう言われて照れたのか、恥ずかしかったのか分からないが
反射的に、つい反射的に私は
笑いながら
泣きながら
言い返した
「バカ」