残り二人を紹介した私は。
やっと残り二人も絡みました。
言い争う二人に脱力し、とりあえず放置することにした私。
今日の夕飯はなんだろう、なんて現実から目をそむけていると、救世主が現れた。
「真尋、裏庭のスプリンクラー壊れ、て…なにやってんだ」
「竜太!良いところに来ました!」
覚えているだろうか、攻略キャラの一人、風紀委員長の四山竜太を。
助けて!と言外に叫ぶと、竜太はぱちぱちと目を瞬かせて、すぐに私の腕を引っ張った。
言い争いに夢中だったからか、統也の腕は思ったよりもあっさりと離れて竜太に抱きとめられる。
大丈夫か?と私を覗き込む竜太に笑顔を返した。
「助かりました」
「いや、大丈夫ならいいんだが…あの女生徒は?」
「新しく生徒会に入ってもらう、佐倉愛莉さんです」
「生徒会に?」
訝しげに眉を寄せる竜太に苦笑しつつあらましを説明する。
話し終えると、竜太が何とも言えない表情で私を見下ろした。
頭一つ分竜太の方が高いため、私が竜太を見下ろすことはまずないが、なんだか悔しい。
「真尋お前な…もっと警戒心をもて」
「副会長なのですから、生徒を守るのは当然でしょう?」
「それで性別がバレてどうする。…しかし、偶々とはいえここに来たのは正解だったな」
「何か言いました?」
小さい声だったから、竜太の言葉を聞きのがした。
重要なことだろうかと聞き返すも、なんでもないと返される。
「それより、スプリンクラーはどうするんだ?流石にあのままで放っておけないだろ」
「明日にでも修理に来ていただきます」
「ん、そうしておけ。あと真尋、今日はもう帰った方がいい」
「なぜですか?」
「風呂に入って体を温めておけ。風邪をひくぞ?」
「そこまで柔じゃありません」
「拗ねるなって」
ぽんぽんと頭を撫でられ、渋々ながら頷く。
すると、竜太の手が頭からぺしりと払いのけられた。
「真尋に触るな」
「ほったらかしてたのは誰だよ」
今度は統也と竜太が険悪な雰囲気になる。
慌てて止めに入ると、竜太は私に向かって笑い、愛莉ちゃんのもとに向かった。
「あいつは…油断も隙もないな」
「竜太はおかしなことは言ってませんでしたよ?」
「放置して済まなかった。…嫉妬か?」
「何言ってるんです?」
統也の言葉にくすりと笑う。
姉を取られる、みたいな気分なんだろうなあ。
少し高い位置にある頭を背伸びして撫でて、もう帰る旨を伝えた。
「なら俺も一緒に帰る」
「…まあ、今日は特に業務はありませんし良いでしょう」
「ああ、今迎えを呼ぶ」
電話をかけ始めた統也をひとまずおいて、愛莉ちゃんのもとに向かう。
竜太と何か話していた愛莉ちゃんは、私を見て満面の笑みになった。
「真尋先輩!」
「愛莉さん、私はもう帰りますのであなたも今日は帰宅して結構ですよ」
「いいんですか?」
「ええ。校門まで一緒に行きましょうか」
「はい!」
元気に返事をした愛莉ちゃんの頭を竜太が撫でる。
目が完全に妹を見る目だ。
「じゃあ俺はもう行く。真尋、風邪をひくなよ」
「わかっています」
「ああ、またな」
竜太が出ていくのと同時に、統也が私の隣に来る。
葵や颯に頭を下げて、私たちは生徒会室から出た。
帰宅組はもうすでに帰っているし、部活組はまだ終わっていない、絶妙な時間。
これなら、愛莉ちゃんに何かあることはないだろう。
「…真尋さん?」
「あれ、要?」
名前を呼ばれて振り返ると、最後の攻略対象、五十嵐要が立っていた。
昔ちょっとしたことで手を貸したら、私に懐いていてくれている可愛い後輩だ。
要は典型的な不良のような容姿だが、サボることはあっても暴力をふるったりすることはない。
喧嘩は強いらしいけど、それを見かけたことすらない。
要は私の両隣に立つ統也と愛莉ちゃんを見て、不愉快そうに眉をひそめた。
統也としばし睨み合って、私に真っ赤な瞳が向く。
相変わらず、統也とは合わないみたいだ。
「一宮はともかく…誰スかその女」
「こら要。統也は先輩だと前にも言ったでしょう?」
「…ス。すんません。で、その女は?」
「新しい生徒会役員です。ああでも、まだ秘密ですよ?」
「秘密…?」
首を傾げる要が可愛くて頭を撫でる。
照れたように頭を振った後、要は小さく「…性別」と呟いた。
たぶん、私の性別がバレてしまったことに気付いたのだろう。
軽く苦笑しながら頷く。
「ああ、そういうこと。佐倉さん、彼は五十嵐要と言って、私の後輩です」
「佐倉愛莉です!よろしくね、五十嵐君」
「…」
差し出された手をちらっと見て、そっぽを向いた要。
警戒心が強い分、打ち解けられるのはまだ先になるだろうな。
「すみません愛莉さん」
「いいえ、真尋先輩が謝ることじゃないです!」
「真尋、先輩…?」
要の目が鋭く光る。
ぎろっと愛莉ちゃんを睨む瞳に、今度は私が首を傾げた。
「要?」
「…なんでもないっす」
「本当に?」
「…」
一拍あいたがこくんと頷いたので、一応引き下がる。
要は愛莉ちゃんをもう一度睨んだ後、私に頭を下げてその場を去った。
なんで睨んだ?
「すみませんでした、愛莉さん」
「いえ!五十嵐君は、真尋先輩のことが大好きなんですね!」
「そうだと嬉しいですね」
愛莉ちゃんに微笑みかけて、若干空気になってた統也の手を取る。
こうでもしないと、拗ねた彼の機嫌は直らない。
「さ、帰りましょう」
「…おう」
「あ、じゃあ私はこの辺で!真尋先輩また明日!会長も!」
「俺はついでか」
「まあまあ。また明日」
ぱたぱたと駆けていった愛莉ちゃんを見送り、統也と二人で車に乗り込んだ。
すぐに風呂に入って、今日はもう寝てしまおう。
明日からは本格的に、愛莉ちゃんと彼らの恋の行方を見守らなくちゃ。
恋愛シーンがうっすい…
他視点だともっと増えますかね…
ということで、次回は統也か愛莉ちゃん視点になる予定です、予定。