婚約者は妹に譲ります。でも、私の人生まで譲るつもりはありません
「エレノア。すまない。僕は君ではなく、リリアを愛している」
婚約者のセドリックからそう告げられたとき、私はしばらく言葉を返せなかった。
隣には妹のリリアがいる。
申し訳なさそうに目を伏せながら、それでもセドリックの腕をしっかりと抱いていた。
「お姉様、ごめんなさい。私……そんなつもりじゃなかったの。でも、どうしても気持ちを抑えられなくて」
「そう」
胸の奥が、少しだけ痛んだ。
セドリックとは三年前から婚約している。
政略結婚ではあったけれど、私は彼を嫌いではなかった。
むしろ、一緒に穏やかな家庭を作れればいいと思っていた。
だから、何も感じないわけではない。
けれど。
「分かりました」
私が答えると、二人は同時に顔を上げた。
「エレノア、本当に?」
「ええ。二人がそこまで言うのなら、私が間に立ち続けても仕方がないでしょう」
その場にいた父が、ほっと息を吐く。
「そうか。さすがエレノアだ。お前なら分かってくれると思っていた」
その言葉を聞いて、私は少しだけ苦笑した。
昔からそうだった。
妹のリリアは身体が弱かった。
今ではすっかり元気になったけれど、幼い頃は熱を出すことも多く、家族中が彼女を心配していた。
だから、新しいドレスを欲しがれば私は譲った。
珍しい菓子が一つしかなければ、リリアに渡した。
家族で出かける予定の日に彼女の体調が悪くなれば、中止になって当然だった。
そのたび父は私の頭を撫でた。
――お前は姉なのだから。
――リリアに譲ってやりなさい。
別に、それが嫌だったわけではない。
妹は可愛かったし、私は大抵のことなら自分で何とかできた。
だから今回も、同じなのだろう。
婚約者まで譲ることになるとは思わなかったけれど。
「それでは、婚約解消の手続きを進めます」
私がそう告げると、父は大きく頷いた。
「うむ。それがいい。ああ、それと結婚式の準備も頼むぞ」
「……結婚式?」
「セドリック殿とリリアのだ」
私は父の顔を見た。
父は何の疑問も抱いていない様子だった。
「リリアにはこういう大きな催しの経験がないだろう。体調にも気をつけなければならん。お前なら各家への招待状も、式場の手配も分かっている」
妹も、ほっとしたように笑った。
「お姉様がやってくれるなら安心だわ。私、難しいことはよく分からないもの」
セドリックまで頷く。
「僕からも頼むよ。エレノアはこういうことが得意だろう?」
私は三人を順番に見た。
そして言った。
「お断りします」
三人の表情が同時に止まった。
「……何?」
父が聞き返す。
「結婚式の準備はいたしません」
「なぜだ?」
むしろ、なぜ私がすると思ったのだろう。
「リリアとセドリック様が結婚なさるのでしょう?」
「ああ」
「でしたら、お二人でなさればよろしいのでは?」
妹が困ったように眉を下げる。
「でも、お姉様。私にはできないわ」
「なら、これから覚えればいいのよ」
「え?」
私は妹を見た。
「だって、あなたがこの家を継ぐのでしょう?」
今度こそ、本当に部屋が静かになった。
我が家には男子がいない。
父の子は私とリリアだけ。
だから本来、長女である私が婿を迎え、伯爵家を継ぐ予定だった。
そのため私は十六歳の頃から父の仕事を手伝っている。
最初は簡単な帳簿の確認だった。
やがて領地から届く報告書に目を通し、商会との契約を確認し、使用人への指示を出すようになった。
父は数年前から体調を崩しがちで、今では日々の実務のほとんどを私が担当している。
けれど、私がセドリックとの婚約を解消し、妹が彼と結婚するのなら。
話は変わる。
「待ちなさい、エレノア」
父の声が少し低くなる。
「リリアが家を継ぐとしても、お前は姉だろう」
「はい」
「ならばこれまで通り、リリアを支えてやればいい」
「どの立場で?」
父が黙った。
「リリアが次期伯爵夫人になるのでしょう。その夫がセドリック様。でしたら領地経営も社交も、お二人が覚えるべきです」
「だから、お前が教えてやれば――」
「もちろん引き継ぎはいたします」
私は微笑んだ。
「ですが、引き継ぎが終われば私はこの家を出ます」
「出る?」
「はい」
妹が驚いて私を見た。
「どこへ行くの?」
「母方の叔母上が、以前から遊びに来いと仰ってくださっていたでしょう。しばらく公爵家にお世話になります」
「でも、お姉様がいなくなったら困るわ」
「どうして?」
妹が口を開きかけて、止まる。
私はそこで初めて気づいた。
私がいなくなると困る。
けれど、それは私にいてほしいからではない。
私がしている仕事がなくなると困るからだ。
少しだけ、胸の奥に冷たいものが落ちた。
父が苛立った声を上げた。
「勝手なことを言うな。家族なのだから助け合うのは当然だろう」
「そうですね」
私は頷いた。
「ですが、お父様。私は何になるのでしょう?」
「何を言っている。お前はリリアの姉だ」
「姉というのは、伯爵家の無給の執事を意味する言葉でしたか?」
今度こそ、誰も何も言わなかった。
私はその日のうちに、引き継ぎ資料を作り始めた。
三年間続けた婚約は、一か月もしないうちに正式に解消された。
そして、それからさらに半月後。
私は伯爵家を出た。
◇
母の姉が嫁いだアルヴェイン公爵家は、王都でも指折りの名門だ。
幼い頃から何度も訪れているため、私にとっては知らない家ではない。
叔母は私を見るなり抱きしめてくれた。
「よく来たわね、エレノア。部屋ならいくらでもあるんだから、好きなだけいなさい」
「ありがとうございます、叔母上」
「それと、しばらく仕事は禁止よ」
「……仕事?」
「そう。あなた、伯爵家では朝から晩まで働いていたのでしょう?」
「そこまででは」
「昨日届いた荷物の中に帳簿が三冊入っていたけれど?」
私は目を逸らした。
念のため持ってきただけだ。
本当に、念のため。
「母上」
呆れたような男性の声がした。
振り向くと、扉のところに長身の男性が立っていた。
アレクシス・アルヴェイン。
叔母の長男で、公爵家の嫡男。
二十六歳。
私より七歳年上で、幼い頃から何度も顔を合わせている。
「エレノアをいきなり責めるのはやめてください」
「責めてないわよ。心配しているの」
「同じようなものです」
そう言って、彼は私を見る。
「久しぶりだな、エレノア」
「ご無沙汰しております、アレクシス様」
「婚約解消の件は聞いた」
一瞬、身構えた。
慰められるのだろうか。
かわいそうに、と言われるのだろうか。
けれど彼は、わずかに口元を上げただけだった。
「よく決断した」
「……それだけですか?」
「それ以上、何か言ってほしいのか?」
「いえ」
少しおかしくなって、私は笑った。
それが公爵家での新しい生活の始まりだった。
叔母からは休めと言われたけれど、一週間もすると暇を持て余した。
読書も散歩も好きだ。
けれど、一日中それだけをしていると落ち着かない。
そこで公爵家の図書室で領地資料を眺めていたところを、アレクシス様に見つかった。
「何をしている?」
「何もしておりません」
「では、その手に持っている東部穀倉地帯の収支報告書は?」
「読書です」
「ずいぶん趣味の悪い読書だな」
仕方なく事情を話すと、アレクシス様はしばらく考えたあと、一冊の資料を差し出してきた。
「なら、これを見てくれ」
「よろしいのですか?」
「暇なのだろう?」
その資料は、新しく整備する街道の予算案だった。
私は夢中になった。
輸送量の予測。
建設費。
沿道の宿場町に与える影響。
気づけば机いっぱいに資料を広げていた。
「ここです」
私は一つの数字を指差した。
「この計算、春の輸送量を基準にしています。でも秋の収穫期には倍近くなるはずです。この幅員では数年後に拡張工事が必要になります」
「やはりそう思うか」
「お気づきだったのですか?」
「ああ。担当官と意見が割れていてな」
アレクシス様は満足そうに頷いた。
「これで決心がついた。最初から広く取る」
「お役に立てたなら何よりです」
「ところで」
彼が私をじっと見る。
「伯爵家の帳簿を実質一人で管理していたというのは本当か?」
「一人ではありません。文官が三人おります」
「その三人から上がってくる書類を全部君が確認していたのだろう?」
「はい」
「それを世間では一人で管理していたと言うんだ」
私は瞬きをした。
そんなふうに言われたことはなかった。
伯爵家では、私ができることは私がして当然だった。
「……そういうものでしょうか」
「そういうものだ」
アレクシス様は当然のように言った。
その日から、私は時々彼の仕事を手伝うようになった。
もちろん、公爵家には優秀な文官が大勢いる。
私がいなければ回らないわけではない。
そこが不思議だった。
必要だから使われているのではない。
意見を求められ、答えれば感謝される。
間違えれば一緒に考える。
疲れていれば休めと言われる。
ある夜、私は翌日の会議に使う資料を読んでいた。
あと少しだけ確認しておこう。
そう思っていたら、アレクシス様が書斎に入ってきた。
「まだ起きていたのか」
「東部の収支報告を確認していました」
「それなら終わっている」
「え?」
「君が昨日終わらせた」
「でしたら、別の仕事を――」
「エレノア」
「はい」
「私は君を働かせるためにここへ呼んだんじゃない」
思わず彼を見る。
「でも、何もしないで置いていただくわけには」
「なぜ?」
「なぜって……」
答えようとして、言葉に詰まった。
役に立たなければ、ここにいる理由がない。
そんな考えが、あまりにも自然に自分の中にあった。
アレクシス様は小さく息を吐いた。
「明日は休め」
「ですが」
「命令だ」
「私は公爵家の家臣ではありません」
「ならお願いする。明日は私と出かけてくれ」
「……どちらへ?」
「王都の南に新しい菓子店ができたらしい」
私はしばらく彼を見つめた。
「それは、お仕事ですか?」
「違う」
「視察?」
「違う」
「では何です?」
彼は少しだけ困った顔をした。
「君を菓子店に誘っている」
そこでようやく気づいた。
「あ」
アレクシス様が眉間を押さえた。
「頼むから、もう少し早く気づいてくれ」
その翌日から、私たちの関係は少しずつ変わった。
一緒に菓子を食べた。
劇場へ行った。
庭を散歩した。
仕事の話をする日もあれば、一度も仕事の話をしない日もあった。
アレクシス様は、私が何かを譲ろうとすると気づく。
菓子が一つ残れば、
「君が食べたいなら食べろ」
と先に言う。
馬車の席を叔母に譲ろうとすると、
「母上なら向こうの馬車だ」
と逃げ道を塞ぐ。
最初は少し困った。
けれど、だんだん楽しくなった。
自分が何をしたいか。
何が欲しいか。
そんなことを考えるのは、思っていたより難しくて。
思っていたより楽しかった。
◇
公爵家に来て二か月ほど経った頃。
伯爵家から客が来た。
リリアとセドリックだった。
応接室に入ると、二人とも以前より疲れて見えた。
「お姉様!」
リリアが立ち上がる。
「お願い。帰ってきて」
挨拶より先にそれだった。
私は向かいの椅子に座った。
「どうしたの?」
「どうしたのって……全部よ」
妹は今にも泣きそうだった。
「商会の人が契約の話をしてくるし、領地から毎日書類が届くし、使用人たちも何でも私に聞いてくるの」
「次期伯爵夫人なのだから当然でしょう?」
「でも私、そんなことしたことないもの」
「だから引き継ぎ資料を作ったでしょう?」
「読んでも分からないの!」
隣のセドリックも口を開いた。
「エレノア。僕からも頼む。君が抜けたせいで伯爵家は混乱している」
君が抜けたせいで。
その言葉に、昔の私なら罪悪感を抱いただろう。
でも今は、少し違った。
「私は必要な引き継ぎをしました」
「それでも君ならもっと簡単にできるだろう」
「ええ」
「だったら」
「だからといって、私がする理由にはなりません」
セドリックは言葉を失った。
リリアが身を乗り出す。
「お姉様、もう怒ってないでしょう?」
「怒っていないわよ」
それは本当だった。
婚約を奪われたことも。
家を出たことも。
今となっては、もう怒っていない。
妹の顔が明るくなる。
「だったら帰ってきて!」
「でも、帰らないわ」
「どうして?」
「怒っていないことと、元の生活に戻りたいことは別だから」
リリアは理解できないという顔をした。
セドリックが苦しそうに言う。
「結婚したあとも、君には伯爵家にいてもらえばいいと思っている」
私は彼を見た。
「あなたは、妻の姉と同居したいのですか?」
「そういう意味ではなくて」
「では、どういう立場で?」
「それは……」
答えは返ってこなかった。
妹が唇を噛む。
「でも、お姉様ならできるじゃない」
「ええ」
「私はお姉様みたいに何でもできないの。昔からそうでしょう? お姉様は元気で、頭もよくて、何をやっても上手で。私は身体も弱かったし……」
「リリア」
「だから、お姉様が助けてくれたっていいじゃない!」
私は妹を見た。
昔から何度も聞いた言葉だった。
姉なのだから。
あなたならできるから。
妹にはできないから。
だから譲って。
だから代わって。
だからやって。
私はそれをずっと受け入れてきた。
できるから。
家族だから。
困っているなら助ければいいと思っていたから。
でも。
私はもう知っている。
できることと、しなければならないことは違う。
「ええ。私は何でもできるわ」
妹の目を見る。
そして、笑った。
「だから、あなたのために生きなくても大丈夫なの」
リリアの顔から表情が消えた。
私は続けた。
「あなたができないことは、これから覚えればいい。セドリック様と二人でやればいいのよ」
「でも……」
「私も最初から何でもできたわけじゃないわ」
帳簿の数字を一晩中眺めたこともある。
商人に笑われたこともある。
父に叱られながら、何度も書類を書き直した。
少しずつ覚えただけだ。
「あなたもできるようになるわ」
慰めではなかった。
突き放しているわけでもない。
ただ、私は心からそう思った。
「だって、これからあなたの家になるんだもの」
妹はしばらく黙っていた。
やがて、小さく頷いた。
「……分かった」
驚いた。
もっと泣くと思っていた。
もっと責められると思っていた。
けれどリリアは、少しだけ悔しそうな顔をして立ち上がった。
「分からないことがあったら、引き継ぎ資料を読む」
「ええ」
「それでも分からなかったら?」
「専門家に聞きなさい」
「お姉様には?」
私は少し考えた。
「手紙なら、一度くらいは答えてあげる」
リリアはようやく笑った。
「一度だけ?」
「一度だけ」
「けち」
そんな妹の言葉を聞いたのは、ずいぶん久しぶりな気がした。
二人が帰ったあと、私は応接室で一人、息を吐いた。
終わった。
本当に終わったのだと思った。
婚約も。
伯爵家での役目も。
ずっと続いていた「姉だから」という生活も。
「随分と優しいんだな」
後ろから声がした。
振り返ると、扉のそばにアレクシス様が立っていた。
「聞いていらしたのですか?」
「最後の方だけな。入ろうと思ったが、必要なさそうだった」
「盗み聞きです」
「悪かった」
まったく悪びれていない。
私は笑った。
「もっと責めればよかったと思いますか?」
「いや」
アレクシス様が私の前まで歩いてくる。
「君らしいと思った」
「それは褒めています?」
「もちろん」
彼は少し黙ったあと、私を見た。
いつもより真剣な顔だった。
「エレノア」
「はい」
「私と結婚してほしい」
あまりにも突然で。
私は数秒、完全に止まった。
「……今の話を聞いたあとに?」
「今の話を聞いたからではない」
「では、いつから?」
「君の婚約がなくなった日から、ずっと機会を窺っていた」
「そんな前から?」
アレクシス様は苦笑する。
「正確には、君に婚約者がいると知った日から諦めていた」
私は目を瞬いた。
「それは……いつです?」
「七年前」
「私、十二歳ですよ?」
「だから何もしていないだろう」
「それはそうですが」
思わず笑ってしまった。
でも、胸が熱い。
私が帳簿を読めるからではない。
領地経営ができるからでもない。
誰かを支えられるからでもない。
この人は。
私自身を欲しいと言っている。
「一つ、確認してもいいですか?」
「何だ?」
「私と結婚すると、たぶん仕事をしますよ」
「知っている」
「かなりします」
「知っている」
「止めてもします」
「それも知っている」
「……困りません?」
アレクシス様は笑った。
「望むところだ。ただし条件がある」
「条件?」
「働いた分だけ休め」
「はい」
「欲しいものがあれば譲るな」
「努力します」
「嫌なことには嫌と言え」
私は少し考えた。
「……難しい条件ですね」
彼は私の手を取った。
「では、一生かけて練習するといい」
今度は笑えなかった。
代わりに、涙が少しだけ出た。
悲しくはない。
悔しくもない。
こんな涙もあるのだと、初めて知った。
「はい」
私は彼の手を握り返した。
「よろしくお願いします」
◇
それから半年後。
私はアルヴェイン公爵家の礼拝堂で、アレクシス様と結婚した。
伯爵家からは父とリリア、それにセドリックも参列した。
あれから伯爵家は、何とか自分たちで回しているらしい。
最初の一か月は質問の手紙が山ほど届いた。
約束通り、一度だけ返事を書いた。
二通目からは、返信していない。
それでも三か月目には手紙が減り、最近ではリリアから、
『商会との契約更新、一人でできました』
という自慢の手紙まで届くようになった。
だから、きっと大丈夫だ。
結婚式の夜。
部屋に戻る途中で、アレクシス様が私に尋ねた。
「何か欲しいものはあるか?」
「ありません」
反射的に答える。
彼がじっと私を見る。
「またそれか」
「あ」
半年間、何度も注意された。
欲しいものを聞かれたら、まず考えること。
すぐに「いらない」と答えないこと。
私は少し考えた。
ドレス。
宝石。
新しい本。
どれも素敵だけれど。
今、一番欲しいものは。
「……では、一つだけ」
「何だ?」
私は夫になったばかりの人の腕を取った。
昔の私なら、こんなことは絶対に言わなかっただろう。
誰かが欲しがるなら譲る。
誰かが困っていれば、自分のことは後回しにする。
それが当たり前だった。
でも、もう違う。
「今日は、あなたを独り占めしたいです」
アレクシス様が目を丸くする。
それから、とても嬉しそうに笑った。
「喜んで」
私も笑う。
欲しいものを欲しいと言うのは、まだ少しだけ恥ずかしい。
けれど、悪くない。
これから先もきっと私は、たくさん働く。
人を助けることもあるだろう。
妹に何かを譲る日だって、また来るかもしれない。
ただし、それは私が選ぶ。
私の人生は、もう誰かに譲らない。
私は夫の腕を取り、二人の部屋へ向かった。
今度は誰にも譲らず、私が選んだ幸せの中へ。




