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婚約者は妹に譲ります。でも、私の人生まで譲るつもりはありません

作者: よみなぎ
掲載日:2026/09/10

「エレノア。すまない。僕は君ではなく、リリアを愛している」


婚約者のセドリックからそう告げられたとき、私はしばらく言葉を返せなかった。


隣には妹のリリアがいる。


申し訳なさそうに目を伏せながら、それでもセドリックの腕をしっかりと抱いていた。


「お姉様、ごめんなさい。私……そんなつもりじゃなかったの。でも、どうしても気持ちを抑えられなくて」


「そう」


胸の奥が、少しだけ痛んだ。


セドリックとは三年前から婚約している。


政略結婚ではあったけれど、私は彼を嫌いではなかった。


むしろ、一緒に穏やかな家庭を作れればいいと思っていた。


だから、何も感じないわけではない。


けれど。


「分かりました」


私が答えると、二人は同時に顔を上げた。


「エレノア、本当に?」


「ええ。二人がそこまで言うのなら、私が間に立ち続けても仕方がないでしょう」


その場にいた父が、ほっと息を吐く。


「そうか。さすがエレノアだ。お前なら分かってくれると思っていた」


その言葉を聞いて、私は少しだけ苦笑した。


昔からそうだった。


妹のリリアは身体が弱かった。


今ではすっかり元気になったけれど、幼い頃は熱を出すことも多く、家族中が彼女を心配していた。


だから、新しいドレスを欲しがれば私は譲った。


珍しい菓子が一つしかなければ、リリアに渡した。


家族で出かける予定の日に彼女の体調が悪くなれば、中止になって当然だった。


そのたび父は私の頭を撫でた。


――お前は姉なのだから。


――リリアに譲ってやりなさい。


別に、それが嫌だったわけではない。


妹は可愛かったし、私は大抵のことなら自分で何とかできた。


だから今回も、同じなのだろう。


婚約者まで譲ることになるとは思わなかったけれど。


「それでは、婚約解消の手続きを進めます」


私がそう告げると、父は大きく頷いた。


「うむ。それがいい。ああ、それと結婚式の準備も頼むぞ」


「……結婚式?」


「セドリック殿とリリアのだ」


私は父の顔を見た。


父は何の疑問も抱いていない様子だった。


「リリアにはこういう大きな催しの経験がないだろう。体調にも気をつけなければならん。お前なら各家への招待状も、式場の手配も分かっている」


妹も、ほっとしたように笑った。


「お姉様がやってくれるなら安心だわ。私、難しいことはよく分からないもの」


セドリックまで頷く。


「僕からも頼むよ。エレノアはこういうことが得意だろう?」


私は三人を順番に見た。


そして言った。


「お断りします」


三人の表情が同時に止まった。


「……何?」


父が聞き返す。


「結婚式の準備はいたしません」


「なぜだ?」


むしろ、なぜ私がすると思ったのだろう。


「リリアとセドリック様が結婚なさるのでしょう?」


「ああ」


「でしたら、お二人でなさればよろしいのでは?」


妹が困ったように眉を下げる。


「でも、お姉様。私にはできないわ」


「なら、これから覚えればいいのよ」


「え?」


私は妹を見た。


「だって、あなたがこの家を継ぐのでしょう?」


今度こそ、本当に部屋が静かになった。


我が家には男子がいない。


父の子は私とリリアだけ。


だから本来、長女である私が婿を迎え、伯爵家を継ぐ予定だった。


そのため私は十六歳の頃から父の仕事を手伝っている。


最初は簡単な帳簿の確認だった。


やがて領地から届く報告書に目を通し、商会との契約を確認し、使用人への指示を出すようになった。


父は数年前から体調を崩しがちで、今では日々の実務のほとんどを私が担当している。


けれど、私がセドリックとの婚約を解消し、妹が彼と結婚するのなら。


話は変わる。


「待ちなさい、エレノア」


父の声が少し低くなる。


「リリアが家を継ぐとしても、お前は姉だろう」


「はい」


「ならばこれまで通り、リリアを支えてやればいい」


「どの立場で?」


父が黙った。


「リリアが次期伯爵夫人になるのでしょう。その夫がセドリック様。でしたら領地経営も社交も、お二人が覚えるべきです」


「だから、お前が教えてやれば――」


「もちろん引き継ぎはいたします」


私は微笑んだ。


「ですが、引き継ぎが終われば私はこの家を出ます」


「出る?」


「はい」


妹が驚いて私を見た。


「どこへ行くの?」


「母方の叔母上が、以前から遊びに来いと仰ってくださっていたでしょう。しばらく公爵家にお世話になります」


「でも、お姉様がいなくなったら困るわ」


「どうして?」


妹が口を開きかけて、止まる。


私はそこで初めて気づいた。


私がいなくなると困る。


けれど、それは私にいてほしいからではない。


私がしている仕事がなくなると困るからだ。


少しだけ、胸の奥に冷たいものが落ちた。


父が苛立った声を上げた。


「勝手なことを言うな。家族なのだから助け合うのは当然だろう」


「そうですね」


私は頷いた。


「ですが、お父様。私は何になるのでしょう?」


「何を言っている。お前はリリアの姉だ」


「姉というのは、伯爵家の無給の執事を意味する言葉でしたか?」


今度こそ、誰も何も言わなかった。


私はその日のうちに、引き継ぎ資料を作り始めた。


三年間続けた婚約は、一か月もしないうちに正式に解消された。


そして、それからさらに半月後。


私は伯爵家を出た。



母の姉が嫁いだアルヴェイン公爵家は、王都でも指折りの名門だ。


幼い頃から何度も訪れているため、私にとっては知らない家ではない。


叔母は私を見るなり抱きしめてくれた。


「よく来たわね、エレノア。部屋ならいくらでもあるんだから、好きなだけいなさい」


「ありがとうございます、叔母上」


「それと、しばらく仕事は禁止よ」


「……仕事?」


「そう。あなた、伯爵家では朝から晩まで働いていたのでしょう?」


「そこまででは」


「昨日届いた荷物の中に帳簿が三冊入っていたけれど?」


私は目を逸らした。


念のため持ってきただけだ。


本当に、念のため。


「母上」


呆れたような男性の声がした。


振り向くと、扉のところに長身の男性が立っていた。


アレクシス・アルヴェイン。


叔母の長男で、公爵家の嫡男。


二十六歳。


私より七歳年上で、幼い頃から何度も顔を合わせている。


「エレノアをいきなり責めるのはやめてください」


「責めてないわよ。心配しているの」


「同じようなものです」


そう言って、彼は私を見る。


「久しぶりだな、エレノア」


「ご無沙汰しております、アレクシス様」


「婚約解消の件は聞いた」


一瞬、身構えた。


慰められるのだろうか。


かわいそうに、と言われるのだろうか。


けれど彼は、わずかに口元を上げただけだった。


「よく決断した」


「……それだけですか?」


「それ以上、何か言ってほしいのか?」


「いえ」


少しおかしくなって、私は笑った。


それが公爵家での新しい生活の始まりだった。


叔母からは休めと言われたけれど、一週間もすると暇を持て余した。


読書も散歩も好きだ。


けれど、一日中それだけをしていると落ち着かない。


そこで公爵家の図書室で領地資料を眺めていたところを、アレクシス様に見つかった。


「何をしている?」


「何もしておりません」


「では、その手に持っている東部穀倉地帯の収支報告書は?」


「読書です」


「ずいぶん趣味の悪い読書だな」


仕方なく事情を話すと、アレクシス様はしばらく考えたあと、一冊の資料を差し出してきた。


「なら、これを見てくれ」


「よろしいのですか?」


「暇なのだろう?」


その資料は、新しく整備する街道の予算案だった。


私は夢中になった。


輸送量の予測。


建設費。


沿道の宿場町に与える影響。


気づけば机いっぱいに資料を広げていた。


「ここです」


私は一つの数字を指差した。


「この計算、春の輸送量を基準にしています。でも秋の収穫期には倍近くなるはずです。この幅員では数年後に拡張工事が必要になります」


「やはりそう思うか」


「お気づきだったのですか?」


「ああ。担当官と意見が割れていてな」


アレクシス様は満足そうに頷いた。


「これで決心がついた。最初から広く取る」


「お役に立てたなら何よりです」


「ところで」


彼が私をじっと見る。


「伯爵家の帳簿を実質一人で管理していたというのは本当か?」


「一人ではありません。文官が三人おります」


「その三人から上がってくる書類を全部君が確認していたのだろう?」


「はい」


「それを世間では一人で管理していたと言うんだ」


私は瞬きをした。


そんなふうに言われたことはなかった。


伯爵家では、私ができることは私がして当然だった。


「……そういうものでしょうか」


「そういうものだ」


アレクシス様は当然のように言った。


その日から、私は時々彼の仕事を手伝うようになった。


もちろん、公爵家には優秀な文官が大勢いる。


私がいなければ回らないわけではない。


そこが不思議だった。


必要だから使われているのではない。


意見を求められ、答えれば感謝される。


間違えれば一緒に考える。


疲れていれば休めと言われる。


ある夜、私は翌日の会議に使う資料を読んでいた。


あと少しだけ確認しておこう。


そう思っていたら、アレクシス様が書斎に入ってきた。


「まだ起きていたのか」


「東部の収支報告を確認していました」


「それなら終わっている」


「え?」


「君が昨日終わらせた」


「でしたら、別の仕事を――」


「エレノア」


「はい」


「私は君を働かせるためにここへ呼んだんじゃない」


思わず彼を見る。


「でも、何もしないで置いていただくわけには」


「なぜ?」


「なぜって……」


答えようとして、言葉に詰まった。


役に立たなければ、ここにいる理由がない。


そんな考えが、あまりにも自然に自分の中にあった。


アレクシス様は小さく息を吐いた。


「明日は休め」


「ですが」


「命令だ」


「私は公爵家の家臣ではありません」


「ならお願いする。明日は私と出かけてくれ」


「……どちらへ?」


「王都の南に新しい菓子店ができたらしい」


私はしばらく彼を見つめた。


「それは、お仕事ですか?」


「違う」


「視察?」


「違う」


「では何です?」


彼は少しだけ困った顔をした。


「君を菓子店に誘っている」


そこでようやく気づいた。


「あ」


アレクシス様が眉間を押さえた。


「頼むから、もう少し早く気づいてくれ」


その翌日から、私たちの関係は少しずつ変わった。


一緒に菓子を食べた。


劇場へ行った。


庭を散歩した。


仕事の話をする日もあれば、一度も仕事の話をしない日もあった。


アレクシス様は、私が何かを譲ろうとすると気づく。


菓子が一つ残れば、


「君が食べたいなら食べろ」


と先に言う。


馬車の席を叔母に譲ろうとすると、


「母上なら向こうの馬車だ」


と逃げ道を塞ぐ。


最初は少し困った。


けれど、だんだん楽しくなった。


自分が何をしたいか。


何が欲しいか。


そんなことを考えるのは、思っていたより難しくて。


思っていたより楽しかった。



公爵家に来て二か月ほど経った頃。


伯爵家から客が来た。


リリアとセドリックだった。


応接室に入ると、二人とも以前より疲れて見えた。


「お姉様!」


リリアが立ち上がる。


「お願い。帰ってきて」


挨拶より先にそれだった。


私は向かいの椅子に座った。


「どうしたの?」


「どうしたのって……全部よ」


妹は今にも泣きそうだった。


「商会の人が契約の話をしてくるし、領地から毎日書類が届くし、使用人たちも何でも私に聞いてくるの」


「次期伯爵夫人なのだから当然でしょう?」


「でも私、そんなことしたことないもの」


「だから引き継ぎ資料を作ったでしょう?」


「読んでも分からないの!」


隣のセドリックも口を開いた。


「エレノア。僕からも頼む。君が抜けたせいで伯爵家は混乱している」


君が抜けたせいで。


その言葉に、昔の私なら罪悪感を抱いただろう。


でも今は、少し違った。


「私は必要な引き継ぎをしました」


「それでも君ならもっと簡単にできるだろう」


「ええ」


「だったら」


「だからといって、私がする理由にはなりません」


セドリックは言葉を失った。


リリアが身を乗り出す。


「お姉様、もう怒ってないでしょう?」


「怒っていないわよ」


それは本当だった。


婚約を奪われたことも。


家を出たことも。


今となっては、もう怒っていない。


妹の顔が明るくなる。


「だったら帰ってきて!」


「でも、帰らないわ」


「どうして?」


「怒っていないことと、元の生活に戻りたいことは別だから」


リリアは理解できないという顔をした。


セドリックが苦しそうに言う。


「結婚したあとも、君には伯爵家にいてもらえばいいと思っている」


私は彼を見た。


「あなたは、妻の姉と同居したいのですか?」


「そういう意味ではなくて」


「では、どういう立場で?」


「それは……」


答えは返ってこなかった。


妹が唇を噛む。


「でも、お姉様ならできるじゃない」


「ええ」


「私はお姉様みたいに何でもできないの。昔からそうでしょう? お姉様は元気で、頭もよくて、何をやっても上手で。私は身体も弱かったし……」


「リリア」


「だから、お姉様が助けてくれたっていいじゃない!」


私は妹を見た。


昔から何度も聞いた言葉だった。


姉なのだから。


あなたならできるから。


妹にはできないから。


だから譲って。


だから代わって。


だからやって。


私はそれをずっと受け入れてきた。


できるから。


家族だから。


困っているなら助ければいいと思っていたから。


でも。


私はもう知っている。


できることと、しなければならないことは違う。


「ええ。私は何でもできるわ」


妹の目を見る。


そして、笑った。


「だから、あなたのために生きなくても大丈夫なの」


リリアの顔から表情が消えた。


私は続けた。


「あなたができないことは、これから覚えればいい。セドリック様と二人でやればいいのよ」


「でも……」


「私も最初から何でもできたわけじゃないわ」


帳簿の数字を一晩中眺めたこともある。


商人に笑われたこともある。


父に叱られながら、何度も書類を書き直した。


少しずつ覚えただけだ。


「あなたもできるようになるわ」


慰めではなかった。


突き放しているわけでもない。


ただ、私は心からそう思った。


「だって、これからあなたの家になるんだもの」


妹はしばらく黙っていた。


やがて、小さく頷いた。


「……分かった」


驚いた。


もっと泣くと思っていた。


もっと責められると思っていた。


けれどリリアは、少しだけ悔しそうな顔をして立ち上がった。


「分からないことがあったら、引き継ぎ資料を読む」


「ええ」


「それでも分からなかったら?」


「専門家に聞きなさい」


「お姉様には?」


私は少し考えた。


「手紙なら、一度くらいは答えてあげる」


リリアはようやく笑った。


「一度だけ?」


「一度だけ」


「けち」


そんな妹の言葉を聞いたのは、ずいぶん久しぶりな気がした。


二人が帰ったあと、私は応接室で一人、息を吐いた。


終わった。


本当に終わったのだと思った。


婚約も。


伯爵家での役目も。


ずっと続いていた「姉だから」という生活も。


「随分と優しいんだな」


後ろから声がした。


振り返ると、扉のそばにアレクシス様が立っていた。


「聞いていらしたのですか?」


「最後の方だけな。入ろうと思ったが、必要なさそうだった」


「盗み聞きです」


「悪かった」


まったく悪びれていない。


私は笑った。


「もっと責めればよかったと思いますか?」


「いや」


アレクシス様が私の前まで歩いてくる。


「君らしいと思った」


「それは褒めています?」


「もちろん」


彼は少し黙ったあと、私を見た。


いつもより真剣な顔だった。


「エレノア」


「はい」


「私と結婚してほしい」


あまりにも突然で。


私は数秒、完全に止まった。


「……今の話を聞いたあとに?」


「今の話を聞いたからではない」


「では、いつから?」


「君の婚約がなくなった日から、ずっと機会を窺っていた」


「そんな前から?」


アレクシス様は苦笑する。


「正確には、君に婚約者がいると知った日から諦めていた」


私は目を瞬いた。


「それは……いつです?」


「七年前」


「私、十二歳ですよ?」


「だから何もしていないだろう」


「それはそうですが」


思わず笑ってしまった。


でも、胸が熱い。


私が帳簿を読めるからではない。


領地経営ができるからでもない。


誰かを支えられるからでもない。


この人は。


私自身を欲しいと言っている。


「一つ、確認してもいいですか?」


「何だ?」


「私と結婚すると、たぶん仕事をしますよ」


「知っている」


「かなりします」


「知っている」


「止めてもします」


「それも知っている」


「……困りません?」


アレクシス様は笑った。


「望むところだ。ただし条件がある」


「条件?」


「働いた分だけ休め」


「はい」


「欲しいものがあれば譲るな」


「努力します」


「嫌なことには嫌と言え」


私は少し考えた。


「……難しい条件ですね」


彼は私の手を取った。


「では、一生かけて練習するといい」


今度は笑えなかった。


代わりに、涙が少しだけ出た。


悲しくはない。


悔しくもない。


こんな涙もあるのだと、初めて知った。


「はい」


私は彼の手を握り返した。


「よろしくお願いします」



それから半年後。


私はアルヴェイン公爵家の礼拝堂で、アレクシス様と結婚した。


伯爵家からは父とリリア、それにセドリックも参列した。


あれから伯爵家は、何とか自分たちで回しているらしい。


最初の一か月は質問の手紙が山ほど届いた。


約束通り、一度だけ返事を書いた。


二通目からは、返信していない。


それでも三か月目には手紙が減り、最近ではリリアから、


『商会との契約更新、一人でできました』


という自慢の手紙まで届くようになった。


だから、きっと大丈夫だ。


結婚式の夜。


部屋に戻る途中で、アレクシス様が私に尋ねた。


「何か欲しいものはあるか?」


「ありません」


反射的に答える。


彼がじっと私を見る。


「またそれか」


「あ」


半年間、何度も注意された。


欲しいものを聞かれたら、まず考えること。


すぐに「いらない」と答えないこと。


私は少し考えた。


ドレス。


宝石。


新しい本。


どれも素敵だけれど。


今、一番欲しいものは。


「……では、一つだけ」


「何だ?」


私は夫になったばかりの人の腕を取った。


昔の私なら、こんなことは絶対に言わなかっただろう。


誰かが欲しがるなら譲る。


誰かが困っていれば、自分のことは後回しにする。


それが当たり前だった。


でも、もう違う。


「今日は、あなたを独り占めしたいです」


アレクシス様が目を丸くする。


それから、とても嬉しそうに笑った。


「喜んで」


私も笑う。


欲しいものを欲しいと言うのは、まだ少しだけ恥ずかしい。


けれど、悪くない。


これから先もきっと私は、たくさん働く。


人を助けることもあるだろう。


妹に何かを譲る日だって、また来るかもしれない。


ただし、それは私が選ぶ。


私の人生は、もう誰かに譲らない。


私は夫の腕を取り、二人の部屋へ向かった。


今度は誰にも譲らず、私が選んだ幸せの中へ。


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