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婚約破棄された未来を見通す才女は、貴族至上主義の国を根元から再構築する  作者: しばゎんゎん


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第1話 公開断罪とこの国の未来

燦然と輝くシャンデリアの下、レグルス王国王城の大広間は華やかな喧騒に満ちていた。


国中の名だたる貴族たちが集う夜会。


その中心に立たされているのが、私、ユーア・グレイ。

グレイ伯爵家の長女。


そして、その正面に立つのは、レグルス王国王太子ライアン・レグルス。


「皆のもの、本日は私から重大な発表を行う」


「ユーア・グレイ。貴様との婚約を、ここに破棄する」


レグルスの声が、高らかに響いた。


ざわめきが、波紋のように広がる。


遂に、来た。


予想通り。いえ、予定通りと言うべきかしら。


私はゆっくりと視線を上げ、王太子を見据える。


王太子の隣には、しなだれかかるように寄り添う少女。


新興伯爵家の次女。金と権力にものをいわせ、好き放題しているという噂の家。


そして、彼女は愛らしい笑みの裏に、計算を隠した女。


「一応、理由を、伺ってもよろしいでしょうか」


あくまで形式的に問いかける。


周囲の視線はすでに、私を断罪される側として見ていた。


王太子は満足げに口角を吊り上げる。


「貴様は、貴族としてあるまじき思想を持っている」


ぴたりと、空気が止まる。


「平民を重用すべきだと?能力で人を評価すべきだと?笑わせるな。貴族とは血によって選ばれた存在だ」


「秩序とは、その血によって保たれる。平民ごときが貴族に口ごたえすることなど許されてなるものか」


賛同の気配が、背後から滲む。


どうやら、それは王国貴族の太宗を占める考えのようだ


やはり、この国はここまで腐っている。


それを改めて実感させられる。


行き着くところは、貴族至上主義。


そして、血統至上主義。


何ができるかなど重視されない。


誰の血を引いているのかだけが重視される。


「貴様のような危険な思想を持つ女を、王妃にするわけにはいかぬ」


彼はそう言い切り、隣の少女の肩を抱いた。


「私に、そして次の国母に相応しいのは、彼女のように貴族らしい者だ」


くすり、と少女が笑う。


周囲からは嘲笑が漏れた。


「なるほど」


私は、静かに頷く。


ここまでは、想定通り。


「では、殿下。最後にひとつだけ」


「なんだ、言い訳か?今さら何を言っても結果は覆らないぞ!」


「いいえ。言い訳などいたしません。ただの確認です」


私は一歩だけ、前に出た。


「今のご発言は、王太子としてのご判断でよろしいのですね」


その瞬間、ほんの僅かに空気が揺れる。


だが王太子は気付かない。気付けない。


「当然だ。私の決断だ」


誇らしげに言い切る。


「つまり陛下はご存じないと?」


「そうだ。だが、父上も話せば賛同するのは間違いない。後ほど報告すれば済むことだ。当たり前の結論だろう」


ああ、やはり。


私は心の中で、ひとつ印を付けた。


これで、王の関与なしが確定した。


つまりこれは、国家としての意思ではない。


ただの、無能の独断。


「そうですか」


小さく息を吐く。


その仕草に、なぜか周囲が一瞬だけ息を呑んだ。


「でしたら、この度の婚約破棄、承りました」


ざわめきが止まる。


私が、否定も弁明もしないことが意外だったのだろう。


「謹んでお受けいたします」


深く、優雅に礼を取る。


その所作に、一部の者が戸惑いを見せた。


本来なら、ここで取り乱すべきだと思っている。


婚約破棄された哀れな令嬢として、泣いて地位に縋り付くとでも。


「ほう、随分と物分かりがいいな、強がっているのか?」


王太子が鼻で笑う。


私は顔を上げ、まっすぐに彼を見た。


「いえ。無意味な契約に、固執する理由はございませんので」


「なんだと?」


空気が凍る。


だが私は続ける。


「能力を軽んじ、血統だけで国を回すおつもりなら」


一拍、置く。


誰もが、次の言葉を待っている。


「この国に、未来はありません」


完全な静寂。


次の瞬間。


「貴様!!戯言を言うな!婚約破棄された腹いせかっ!」


王太子の怒号が響いた。


だが私はもう見ていない。


視線の先にあるのは、王太子でも、取り巻きでもない。


ただ一つ。


この国の、レグルス王国の終わりだけ。


「失礼いたします」


くるりと踵を返し、歩き出す。


その歩みは、ただの断罪された令嬢のものではなかった。


それを、止める者はいない。


扉を開ける。


喧騒が背後に遠ざかる。


静かな廊下に出た瞬間、私はふっと息を吐いた。


「想定よりも少し早いですが、この程度であれば問題ないでしょう」


いや、むしろ早まったのは好都合かもしれない。


これで、内側からの改革という選択肢は完全に消えた。愚かな王太子の暴走によって。


ならば、選択肢は一つ。


「…壊しましょうか、この国ごと」


静かに呟いたその時。


「君は随分と物騒なことを言うのだな」


背後から低く、落ち着いた声が響いた。


振り返る。


そこにいたのは、遅れて到着した、第二王子。


鋭い視線でこちらを見つめるその男は、ゆっくりと口を開く。


「兄の婚約者。いや、元婚約者殿か」


一歩、距離を詰める。


「少し、話を聞かせてもらえないか」


その瞳は、確信していた。


目の前にいる女が、ただ者ではない、この国を変える何かを持っていると。


私はわずかに目を細める。


そして、


「ええ、構いませんよ」


初めて、わずかに口元を緩めた。


これは、終わりではない。


この国を巡る、静かな戦いが。


今ここに、静かに幕を明けた。


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