第4話
地球人が金羊国の何に興味があるのか?を想定するのは難しい。
歴史・政治・文化・習俗・国民・特産物……紹介すべきものは無限にあるはずだが、スペースには限界がある。
でも、見に来る人が一番に知りたいのは金羊国がどんな国なのか?だろう。
その二つを最も端的に示す展示内容とは?と考えると二つのキーワードが出てくる。
「歴史と文化ですかねえ」
万博のテーマである『命輝く未来社会のデザイン』と言う言葉はガン無視になるが、こんな曖昧なテーマを忠実に守る方がよほど難しい。
「その二つとなると特に歴史面が難しいんですよね、我々の国は建国して日が浅いですから……」
「大陸全体の歴史と獣人の歴史を並行して紹介する形で良いんじゃないでしょうか」
「それなら『奴隷解放後の私たちの未来社会構想』というテーマで展示物を作れるかもしれません」
「未来社会構想、ですか」
「歴史・宗教的背景に基づく私たちのこれまでの境遇と、そこから解放された私たちが作り上げた社会と文化、そしてそこから地球社会の協力を得てより良く進化していく未来。
この三段構成でやってみたいです」
たった一つのキーワードから一瞬で展示物の構成を組み立ててしまう、その頭の回転の速さには目を見張るものがある。
それにこの構成なら金羊国の歴史・文化を一通り紹介できそうだ。
「では、それでやってみましょう」
「ご指導とご協力のほど、よろしくお願いします」
*****
一か月後、展示スペースの大まかな割り振りが完成していた。
スペースの壁一面に大きな年表を張り、周辺には歴史や文化を物語る資料を飾る。
そして最後のスペースでは日本の協力で行われているトンネル工事や留学事業についての展示、さらに小さめの物販コーナーも置いておく。
『このような形でどうでしょう?』という意図で大使館から届けられた割り振り図には何の文句もない。
むしろ初めてだというのに一か月でここまで明確に何をどう作るかを決めてる時点で充分褒められる事だと思う。
こちらとしてはやめてくれと思うような要素は一切ない。
「とりあえず資料物品の持ち込みと物販関係の打ち合わせが必要だな……」
動植物系は持ち込み規制があるから展示資料の中に含まないようにお願いして、税金関係がややこしい物販関係も一度相談した方がよさそうだ。
後は他のブースの迷惑にならないように人の流れもある程度制御しておく必要もあるだろう、この辺は他ブースの担当者にも相談が必要だろう。
学園祭の展示物でも考えているようなわくわく感を胸の奥にしまい込みながら俺は返事を認めていた。




