第20話
2025年4月12日は、春先の温かい日差しに大阪湾の潮風が心地いい日だった。
その賑わいの中には各国の駐日大使と肩を並べる白うさぎの獣人とリスの獣人がおり、俺たちも共に声をかけられる。
ステージでは関西ゆかりの歌手による万博テーマソングの演奏が響き渡り、まさしく祭の華やかさだ。
四拍子のノリのいいポップスが万博の呼ぶ明るい未来を歌い、ゆるキャラがその横でメロディーに合わせてKぁらだを揺らす。
「橘くん、ここにおったんか」
「南海課長?」
やれやれという風にため息を吐いて「さっき金羊国のヘルカさんから電話来よったで」と帰ってくる。
ポケットの業務用電話を取り出すとヘルカさんから不在着信が出ており、どうやらこの賑わいで着信に気づかなかったようだ。
「パビリオンのほうもう既に大変みたいやし、手伝いに行ってやり」
「まだ開幕式典終わってへんのにもう大混雑ですか」
恐らく式典をスルーしてでも行かないとゆっくり見られないと判断した人がそこそこいたのだろう。
好きなアーティストの生演奏ぐらいのんびり聞きたかったが仕方ない。
(ちょうどここから二番のサビやのになあ)
「ほな、行ってきますわ」
テーマソングのサビを背にコモンズF館を目指すと、すでにコモンズ館の入り口は行列が出来ている。
(朝一番でこれはテストデーより行列酷いわ)
恐らくテストデーに行った人から評判を聞いてみんな集まってるのだろう。
スタッフ用の裏口から館内へ入るとヘルカさんは忙しなくスタッフに指示を出している。
「橘さん!スマホ決済ができなくて」
決済レジを確認すると電波が弱くなっているらしく、たぶんみんなが一斉にスマホを使ってるせいで処理がパンクしかけてるのだろう。
(こらあとで通信会社に回線の強化要請せないけんのと違うか?)
他の回線に切り替えると言う手もあるが恐らくこの状態では回線を変えても50歩100歩といったところか。
レジ待ちの行列が既にできている事を考えるととにかく方法はどうであれ会計しないと後ろが詰まる。
「あー…‥ちょっと回線が混んでるみたいですね。スマホ以外の決済手段お願いしましょうか」
俺の言葉を他のレジ担当者(人間と獣人のペアで行う)に指示を飛ばし、俺が日本語と英語でクレカ決済をお願いする。
「イチマンゴセンエンノオシハライデス」
「商品への文字入れご希望の方は左端の4番レジへお願いします!」
「ツギノカタドウゾー」
日本人スタッフと一緒に片言の日本語で接客する彼らの姿に、お客さんたちも心なしか穏やかで彼らを応援するような面持ちをしている。
お客さんが帰り際に「パビリオン、面白かったです」と声をかけてくれる。
獣人スタッフも初めての異世界人相手の仕事を心んばしか楽しんでいるように見える。
(こう言われてまうと、頑張った甲斐はあるわなあ)
色々問題だらけでまだやる事も多いけれど、楽しいと言ってくれるならきっと俺の仕事に意味はあったのだ。
「ようこそ、金羊国パビリオンへ!」
-終-
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