第17話
ナショナルデーの中身が固まったことが伝えられたのはそれから数ヶ月後、万博まで半年ほどに近づいた秋のことだった。
「金羊国のサーカスが来るんですか?」
「正確には私達の国に拠点を置くサーカス団に所属する踊り子と楽師を20人ほど派遣出来ることになりました」
「と言うことは舞台で歌と踊りのパフォーマンスをやる形ですか?」
「舞台でのダンスパフォーマンスと楽師による音楽パレードをやろうと思ってます」
ヘルカさんはそこから自分の考えを熱く語り始める。
「舞台でのパフォーマンスは華やかですが、獣人と人間が同じ視線で目を合わせられると言うのが重要だと思うんです。見た目こそ違えど私たちは分かり合えると言うことを伝えるためにより近い場所を行き来することで伝えられないかと思って、その結論がパレードなんです」
舞台の時間割やパレードの計画ルートをまとめた資料を俺に見せて熱く語る彼女を見て、俺はその熱い気持ちを受け止めるので精一杯となってきた。
自分たちは対等になれると伝えていきたいと言う意志は、獣人の持つ歴史が生み出したものなのだろう。
「……分かりました。パレードについては警備上の問題があるのでちょっと厳しいかもしれませんが可能な限り要望が通るよう動きますね」
「よろしくお願いします」
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「パレードかァ、華やかそうでええな」
計画書に目を通した南海課長がそう呟く。
「見た目はだいぶ鮮やかになると思いますよ」
パレードのイメージスケッチからして万博の盛り上げに一役買ってくれそうなのは想像がつく。
「ただ20人体制でぞろぞろ歩きつつ、パレードの真ん中に大使さんも居るってなるとな警備面が気になるよなあ」
「そうなんですよねえ」
「向こうの大使さんを抜きにして、10人以下の小団体のパレードが巡回する感じやったら警備面は楽なんやけどな」
「そういや10人以下なら警備なしでやるんですっけ?」
「おう。いくつかの国がその予定や」
「大使さんのパレード不参加と小規模化が出来れば行けそうですね」
この辺は大使本人も含めての相談が必要だが、金羊国側の要望は通してあげたい。
ふと南海課長が俺の顔を見て「変わったなあ」とつぶやく。
「何がです?」
「金羊国の万博出展に寄り添いたいって気持ちがこっちのも伝わってくるわ」
南海課長とは俺が万博事務局移動直後からの付き合いだ、もう4年くらいの付き合いになる。
だからきっと出張で現地を見て来て以降の俺の気持ちの変化にも気づけたのだろう。
「そうですね」
「きばりや、お前の担当は万博の目玉なんやからな」
南海課長はポンポンと励ますように俺の方を叩く。
俺は万博のためというよりも金羊国の万博デビューを応援したい気持ちの方が大きい、という事を口にはしない。
「はい」
どっちにせよ、やる事は何も変わらないのだから。




