第16話
金羊国から帰ったあと大陸標準語が多少分かるスタッフ探しを派遣会社に丸投げしたところ、『そんな人いませんて!』と言うコメントが来た。
「完全に話せる人でなくていいので、異世界に興味があってあいさつといくつかの単語が分かるレベルでいいので……」
派遣会社の担当者は「無茶言いはりますね」とぼやきつつも条件に合いそうな人を探そうと試しに募集したところ、想定の10倍以上の希望者が集まってくれた。
そこから語学力で篩をかけてもらうことで大陸標準語のできる日本人スタッフを欲しいという要望は思いの外あっさりと片付いてしまった。
(みんなどんだけ異世界に興味あるんやろなー……)
スタッフ募集でそれだけ集まるとなると、警備面もある程度気をつけてもらうことになる。そこも考えていかなければならない。
そんなことを考えていくうちに万博開催まで1年を切り、金羊国ブースを設置するコモンズ館も完成した。
下見のために金羊国大使館の人たちにコモンズ感の完成をメールで知らせると「いい感じですね」と返事が来た。
物販版の税金関係だの、スタッフの配置問題だの、展示物と人員の輸送問題だとの日々は飛ぶように進んでいく。
そんな中、上司がある提案を口にした。
「金羊国のナショナルデー、複数日開催にせぇへんか?」
ナショナルデーとは万博期間中に行われる参加国のアピールイベントの日である。
金羊国は今回の参加国の中でも注目度が高いことを踏まえ、人が集まりやすい夏のホリデーシーズンに数日間に渡って行うことを提案して来たのである。
「ナショナルデーって本来単日ですよね?」
「せやけど金羊国は注目度が高いから1日だけにすると見れん人が多くなりすぎるからな、これは局長の提案でもある」
「ナショナルデーのイベントも考えなあかんくなりましたね?」
「そこは先方と相談したってや」
また余計な仕事を増やしやがったと言う気持ちはなきにしもあらずだが、ナショナルデーは全ての万博参加国に設けられているのだから金羊国だけナショナルデーなしというのも変な話になってしまう。
「とりあえず今度来た時に相談しておきますわ」
来る前にナショナルデーにやれそうなことの提案も出しておかないとならないし、まだしばらくバタバタする羽目になるのだろうなと思うと憂鬱だった。
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「ナショナルデーのイベント、ですか……」
困ったような返事を返されて「ですよねえ」と返さざる得ない。
金羊国からすればナショナルデーなどまだ思考の外であっただろうに、しかもナショナルデーが3日もあるとなれば考えるのも一苦労だろう。
「他国がやってるナショナルデーイベントの概要を集めてきたんですが、記念式典にプラスして自国のプレゼンテーション・自国からパフォマーを招待してのパフォーマンスイベント・料理の展示なんかが主流ですね」
「複数日あるのに記念式典のみだとたぶん物足りない感じになりますよね?」
「記念式典のみの国もありますが、ほとんどの国は式典プラスなんらかのイベントをやってますね」
少し考えてから何かを思いついたように「よし」と呟いて答えを出す。
「パフォーマンスぐらいならやれると思うので、相談してみます」
「無理そうなら式典のみで構いませんよ?」
「大丈夫です、私達の国には素敵なサーカスがありますから」




