第13話
「そういえば、お土産品の販売もやるんですよね?」
ふと思い出してヘルカさんに聞くと「今は販売物の選定を終えて、商品制作に入ってもらってます!」と答えが来た。
「金羊国からの人員の派遣ってどうなってますか?」
「一応私がパビリオン責任者で10人のスタッフと一緒に来て貰うことが確定してます、今はあちらの日常に慣れて貰うための練習してるところです」
金羊国の人にとっては日本の日常風景ですら異様に見えるため、事前に公募されたスタッフにはその辺の練習をしたいという要望があった。
練習のため大阪府で所有しているいくつかの機材を貸し出して使い方の練習をおり、その中にはあるものが含まれている。
「日本の通貨もお借りできて助かります」
そう、日本円(もちろん本物)である。
一応盗難対策のために使う時以外は金庫に収納して貰い、万博開催前には返却して貰う約束となっている。
「その練習にお貸しした機材、新しく追加するものができまして」
「新しく追加するものですか?」
「今回の万博、完全キャッシュレス……つまり、現金を使わないんですけど、使用機材を使うかがやっと決まりまして。異世界人であるみなさんには事前にキャッシュレス支払い用機材の使い方も覚えてもらうべきじゃないかという指摘がありまして」
俺が金羊国出張中の間に事務局内部でそういう話が出たらしく、使う機材を事前に金羊国側へ貸し出して練習して貰うべきと言うことになったのだ。
地球上の諸外国であればキャッシュカードやQRコード決済という概念くらいは知ってるはずだが、こちらの世界にはそもそも銀行があるのかすら怪しい。
「つまり練習することが増えるんですね?」
「増えますね」
「分かりました、なんとかしてみます」
練習に使う機材に関しては後で在日金羊国大使館経由で届けて貰うことになっている。
「せっかくなので、練習風景見てみますか?」
*****
万博派遣を目的とした練習は第一都市の中の小さな建物の中で行われていた。
「おはようございます」
「「「「「「「「「「オハヨーゴザイマス!」」」」」」」」」」
「good morning」
「「「「「「「「「「グッモーニ」」」」」」」」」」
「你好」
「「「「「「「「「「ニャーハウ」」」」」」」」」」
犬耳や猫しっぽや蛇の鱗に包まれた老若男女様々な人が様々な地球上の言語で挨拶する練習をしているのがなんだか不思議な感じがする。
さらにスペイン語やアラビア語での挨拶を練習したのち、算用数字の勉強や日本で一般的に使われる生活道具の扱い方の練習などが進められていく。
しかもそれを教えているが地球人ではなくヘルカさんに似た黒猫の女性なのもなんだか不思議だ。
『ヘルカ来てたの?』
『うん、今日は押し付けてごめんね』
親しげに声を掛け合い、しばらく話をした後ふいにヘルカさんがこちらを見た。
「橘さん、せっかくなので練習にお付き合いいただけませんか?」
「練習ですか?」
「みんなにちょっとした日本語での実践的なやり取りを覚えてもらおうかと思いまして」




