第12話
東京でちょっとした休憩を終えた次の日、俺は金羊国第一都市に戻って残りの仕事に励むことになる。
今日はブラッシュアップされた展示品を見せて貰う日だ。
「今日も宜しくお願いします」
金羊国側のトンネル出入り口で合流したヘルカさんに上野で購入したミニマドレーヌを一つお裾分けすると「ありがとうございます!」と目を輝かせた。やっぱり女子には甘いものである。
「ちと朝早いですけどこんな時間から行って大丈夫なんですか?」
「私達は月が沈んだ頃に寝て、日が昇る頃に起床しますから」
俺らの感覚では朝早い時刻ではあるがこちらの人には気にならない、という感覚の差にこの土地のお国柄を感じる。
日付が変わるまでダラダラ遊んでしまいがちなうちの妹に聞かせてやりたい言葉である。
グダグダとどうでもいい雑談をしつつ司法宮に到着すると、さっそくシメオンさんのいる副司法宮長執務室の扉を叩いた。
『おはようございまーす、ヘルカですけどー』
返事が無いので『入りますよー』とヘルカさんがドアを開けると、シメオンさんがビャルキさんの羽毛でふわふわした胸元に顔を突っ込んでいた。
ビャルキさんもそんなシメオンさんを愛しむように羽毛で包み込んで優しく微笑んでいる。
「あの、僕らお邪魔してませんか?」
「お気になさらず」
ヘルカさんがそう声をかけると2人の空間を破壊するように割り込んでいく。
(あんなイチャイチャした空気の中に割り込んでいくの勇気あるなあ……)
三人がどういう話をしているのかはよく分からないが、ヘルカさんに予定忘れてイチャつくな!仕事しろ!とお説教しているようだ。
そのお説教を受けてビャルキさんは自分の執務室に戻っていき、僕らもようやく仕事する気になってきた。
『先ほどは失礼しました、』
「いえ。本当に仲のいいご夫婦なんですね」
2人とも男性だから夫婦と呼んでいいのかは定かではないが、咄嗟に出てきた言葉をヘルカさんがそのまま伝えるとシメオンさんが嬉しそうに微笑む。
『ありがとうございます。展示品の日本語と英語の修正は終わったので確認をお願いしてもいいですか?』
『はい』
*****
見せてもらったのは修正の入った展示品の実物サイズの下書きだった。
レイアウトを一から組み直し、日英文の誤訳やこの世界特有の用語に補足が付け足され、展示品と年表を直接つなぐ番号まで振り直されている。
「これを3日かそこらで仕上げたって中々ですね」
俺が同じ立場なら一からレイアウトを組み直して下書きから作り直すなんてしたくないし、俺が気になった部分を完全に修正してきている。
「もうこれに直すところはないと思うので、これで展示用の本番品作ってもらうようお願いしてください」
俺がそう伝えるとヘルカさんの表情が輝き、シメオンさんに伝えられるとその輝きは彼にも伝染する。
(作ったものが認められる嬉しさってあるわなぁ)
あとはこのまま本番の展示品制作に入って貰うだけだ。




