赤と青の出会いー3
少年が眠っている間に、傷の様子を見ようと巻いていた白い布を外していると、少し声を上げた。
傷口にまた消毒をし薬草を塗り込んでいく。
背中を見ようと、片方の腕の縄を外した。
身体を傾けると、「ううっ」と唸った。
痛みを感じているのだろうか?
まだ出血はしているが、止血剤のおかげか出血量はそう思ったより多くはない。
消毒し、白い布を巻き直す。
そして、首の傷を見ようと手を伸ばした。
その時、少年はカッと目を見開いた。
赤く光る鋭い瞳が俺を捕らえた。
アルビノか?
そして、咄嗟に俺の首元に手を伸ばして、喉仏を狙ってきた。
拘束もされている上、力が上手く入らなかったのか?
それとも、痛みで動作が遅れたのか?
俺は、その手を咄嗟に掴んだ。
「おいおい、威勢がいいな!」
少年は、その手に力を込めようとしているが、結局力尽きた。
「動くな!致命傷は追っていなかったとはいえ、死んでもおかしくない程の傷だったんだ。大丈夫だ。手当てをするだけだ」
意識を保とうとしているが、その赤く光る瞳は瞼に引き込まれ、ついには白目になって目を閉じた。
「すまないな!しばらく手足は拘束させてもらうぞ」
そして、少年が完全に意識をなくす前に、薬を飲ませなければ。
少年の体を少し起こしたいが、わずかに抵抗してきて、なかなか上手くいかない。
しかたねーな!
口移しで少しずつ飲ませる。
自分で配合しておきながら言うのもなんだが、不味い。
少年も顔をしかめて、少しむせた。
「もう少しの我慢だ。そうでもないか。でも、俺が一緒にいてやる。だから頑張って生きろ」
少年の頭を元に戻し、俺は耳元で呟いた。
そして、その美しい白い髪をクシャクシャっと撫でた。
そこに、ゲンガーが戻ってきた。
手には酒瓶、ポケットからは小銭の音がチャリチャリと聞こえてくる。
「あまり飲むなよ!この子は手強そうだ」
「もしかして、コイツが史上最強の赤の戦士って呼ばれている奴か?」
「たぶんな」
「そんな恐ろしい奴を何で助けようと思った?」
「まだ子供だ。幸か不幸か戦場に捨て置かれた。まだ人間の感情が残っていれば、この子にも生きていく権利はある」
「戦場とは言え、無慈悲に何十人もの人間を殺した奴だぞ。もし、人間の感情がなかったら、どうするんだ?」
「その時は、植え付けていくさ」
「お前は、自分と重ね合わせているのか?」
「さあな」
俺がそう言うと、ゲンガーが俺を抱き締めてきた。
そして、俺の唇を奪った。
「ウルフ、今のお前を知っている俺からしたら、お前の好きな様にやらせてやりたい。でも、危険過ぎる」
「じゃあ、体を離せ!あの子が目を覚ましていたら、今頃俺達は串刺しだぞ」
いつ頃からだろう?
ゲンガーと俺は持ちつ持たれつの関係だ。
俺が無理な仕事を頼んでも、何も言わずいつも引き受けてくれる。
ゲンガーが窮地に追いやられた時には、俺も助ける。
しかし、一度許してしまってからは、仕事の対価は俺の肉体でいいと期待しているところがある。
まぁ、それだけではないが。
お互いの為に命を懸けられる。
親友、戦友の様な関係だ。
決して、恋人同士ではない。