赤と青の出会いー2
1時間ほどで隣の町に着くと、そこには先程の遊牧民のうちの一家族が、すでに安宿を取っていた。
遊牧民たちは羊を放牧場に放すと、数家族が交代で羊の面倒を見て、残りは町で過ごすのだ。
町の向こう側には大きな城がある。
ブライス城だ。
城に近くなるに連れて店や宿も高級になり、兵士やその家族が暮らしている。
背後には山が広がっており、牧草地の緑が眩しい位だ。
そして、農業も盛んで、この町はブライス王の恩恵を受けている城下町だ。
俺は、遊牧民の家族と同じ宿を取った。
安宿の一室に荷物を運び入れ、まだ意識の戻らない少年を抱えベッドに寝かせた。
そして、その少年の手足をベッドに縛り付けた。
赤の戦士だからな。
その後、俺は遊牧民の家族の母親と10歳の娘と一緒に、食料品を買いに行った。
そして、その後ある場末の小さな酒場に寄った。
この町の用心棒を名乗る荒くれ者の溜まり場だ。
「ゲンガーはいるかい?」
「ちょっと待ちな」
安い果実酒を注文して待つ。
青いマントのおかげで、誰も喧嘩はふっかけてこない。
そこに、髭面の大男が現れた。
ゲンガーだ。
この町の用心棒兼便利屋だ。
「よう、久しぶりじゃないか、ウルフ」
「やぁ、ゲンガー!早速だが、頼みがある」
「仕事か?いくらだ?」
「宿にブツがある。仕事内容は聞かないのか?」
「俺様は何でも引き受ける」
ゲンガーを伴って、安宿に戻る。
部屋に置いてあった革の袋を手渡す。
中身は、戦場で拾った持ち主のいなくなった剣の数々だ。
「これを、鍛冶屋に持っていってくれ!くれぐれも武器商人に渡すなよ」
「鍛冶屋で農具や鍋にしても、大した金額にはならねえんだよ。それより、武器として売った方が金になるんだよ」
ゲンガーはブツブツ言いながら、俺の顔を見る。
「はいはい!平和の使者様」
「わかってるだろう?」
「足りない分は、お前の体で払って貰うっていう手もあるな」
そう言って、俺の尻を撫でる。
俺が、その手を振り払おうとすると、慌てて手を引っ込めるゲンガー。
「おっと、危ねー!手の骨折られるところだったわ!ワハハ……」
「部屋に武器は置いておきたくない。さっさと持っていってくれないか!」
「で、仕事って何だ?」
「この子だ」
「綺麗なガキだな。俺にくれるのか?」
「赤の戦士だ」
ゲンガーが少し顔をしかめた。
「まだガキじゃねぇか?」
「赤の戦士は皆子供だ」
「首のついた赤の戦士は初めてだ。いや、ふたり目か」
「くれぐれも内密に頼む」