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とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第五部 悪霊ホテルエクソシスト事件

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第八話

 翌日。派遣の仕事が終了後、琴羽はまっすぐに家に帰り、礼拝堂で一息ついていた。


 紅茶を淹れ、ゆっくりと啜る。紅茶は派遣の仕事の上司が、花岡がお土産でくれたものだった。絵本作家のイラストがパッケージに描かれ、見た目もとても可愛らしい。


 ちなみに花岡は、最近紅茶にハマり、紅茶愛好会のオフ会にも参加し、プライベートも楽しそうだ。もう翠や異性に強い念を持つことないだろう。その辺りも安心だった。


「はぁ、やっぱり、ゆっくりするのはいいねー」


 思わず独り言が漏れる。今日はホテルの仕事は休み。想像以上に疲れたいたらしい。こうして休んでいるだけで、肩の荷が降りる。やはり多忙さは悪霊の足場になるらしい。休む事も大事だと実感中。神様がなぜ安息日を与えているのかは、ルールで縛りつけたい為ではないはず。


 ちょうどこんな風にリラックスしている時だった。礼拝堂のチャイムがなった。翠だった。しかも隣に若い女がいて、驚く。


 あの幻の女だった。翠はホテルのロビーで偶然、彼女を見つけて、ここに連れてきたという。琴羽も急いで彼女のために紅茶を用意した


 ようやく会えた。嬉しいが、彼女は終始不機嫌そうだ。下を向き、こちらが雑談を振っても上の空だった。単純に喜んでばかりもいられないだろう。


 女の名前は滝沢ミユキ。地方からこちらへ旅行に来たとは言うが、他は何も話さない。軽く翠を睨んでいるぐらいだ。


 それにしてもミユキの肌や髪はツヤツヤだった。肌の曲がり角に差し掛かった琴羽は、一体なぜ死のうとしているのか、あまり想像がつかず、思わず咳払いをしてしまった。


「なんか、琴羽さん、おばさんくさくない?」

「ちょっと翠、どういうことかな?」

「いや、おもしれー女ってことさ」

「ふーん?」


 琴羽と翠は冗談を言い、場を和ませようとしたが、ミユキは、さらに下を向く。そして、琴羽にも睨みつけてくる。


「そういえば、ミユキさん。教会は初めてじゃない? 普通の日本人はプロテスタントの教会に来ると驚くんだよね。地味すぎるって。学校みたいっていう人もいたな。日本人はカトリック教会のイメージが強いみたいでね」


 琴羽はなんの気なしに雑談のつもりで言っただけだったが、ミユキが息を飲んだ様子は見逃さなかった。


「そうだね。ミユキさん、もしかして教会に来たことある?」


 翠は無邪気に言う。


「俺、最近クリスチャンになったけど、毎日楽しいよ。イエス様に救われて、神様と一緒に人生を歩めるのが本当に幸せって感じで」


 若干照れながら話す翠。側から聞いている琴羽も恥ずかしくなってくるぐらいだが、ミユキは全く違う。さらに翠をキツく睨みつけていた。


「だからクリスチャンって嫌い。一世はそうやって無邪気に喜んでいて……」


 小さなミユキの呟き。とても低い声でもあったが、残念ながら翠の耳には届かなかった模様だが、琴羽の耳にはちゃんと響く。


 翠のようなクリスチャンを一世なんて表現するのは、ミユキは二世かもしれない。いわゆる親の信仰を引き継ぐ宗教二世だろうか。


「だから教会も嫌い。無理矢理行かされて大嫌い……」

「ミユキさん、もしかしてご両親がクリスチャン? 二世?」


 翠は驚いていたが、琴羽はミユキのような二世の存在は珍しくなかった。親に無理矢理教会に行かされて、かえってキリスト教が嫌いになってしまった人は珍しくない。特にいわゆる敬虔なクリスチャンの親は、ゲームや漫画を禁止したり、厳しい面みある。そんな中で育った二世の愚痴は琴羽もよく聞いた。


 世間では宗教二世の問題も大きく取り上げられている。主にカルトの宗教二世問題だったが、親の信仰を子供に押し付ける点においては、全く同じと言えるだろう。


 それは伝統宗教と呼ばれるキリスト教も同じ。幸いな事に琴羽の両親は信仰を押し付けず、楽しそうに聖書を読んでいる母に影響を受けてしまった背景があったが。


「そう。琴羽さんの言う通りです。私、両親がクリスチャンでね」


 琴羽の予想は大方当たっていたが、ミユキの中で何かが火についたらしい。


「無理矢理教会行かされて辛かった。ゲームも漫画も全部取り上げられた。クリスチャンのくせにクリスマスやイースターは悪魔崇拝とか言って遊ばせてもくれない。その上、罪だ、罪だって教会の連中が責めてくる。金持ちになったとか病気が治ったとかいう証でマウント取りながらね。私の祈りや信仰がダメだって責められる」


 ミユキは話しながら興奮してきたらしい。だんだんと本音を語っているようだが、顔は赤くなり、せわしなく瞬きをしていた。


「だから教会って嫌い」

「ミユキさん、何かあった? 大丈夫だよ。そんな教会なんてレアケースでは?」


 翠は空気が読めないらしい。確か翠はこの教会しか知らない。基本的にここはゆるい。一方、厳しい教会もあると琴羽でも知っている。そんな教会に嫌気がさす人が多い事もよく耳に入るので、ミユキの気持ちはわかる。


「うるさいな。だからクリスチャンは世間知らずで嫌い」


 静かに話を聞いている琴羽より、空気が読めない翠の方が嫌いらしい。ミユキはキツく翠を睨んでいた。


「しかも、宗教が問題だって婚約破棄されたんだから! だから嫌い。伝統宗教とかいってカルトじゃん。嫌い!」


 ミユキの暴言は止まらなかったが、謎が解けた。婚約破棄をきっかけんにホテルで死のうとしていた?


 今のミユキは明らかに情緒は不安定だ。暴言も悪霊の足場になる可能性が高い。


「罪とかいって責めてくるから嫌い! 罪悪感植えつけてくるんだから!」


 琴羽は即答でできない。牧師の娘として、伝統宗教二世の声や厳しい教会で躓いた話は珍しくもなく、立場は想像できてしまうから。


「あるよ! 愛はあるよ!」


 一方、翠は全く空気が読めなかった。

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