番外編短編・土地の呪いの真相
琴羽には飯田椿という友達がいた。いわゆる敏感体質で、悪霊が見えるらしい。そのせいでいじめられたり、仕事も途絶えていたが、今はメンタル系のカウンセラーになっていた。
「困ったよ、琴羽。最近引越したんだけど、家に悪霊いるっぽい。仕事のトラブルあるし、十匹ぐらいいるんだけどー」
そんな椿から電話がかかってきた。悪霊は動物の姿をしているらしく、一見の見た目は悪くないらしいが。
「椿、大丈夫? 応急処置的だけど、讃美歌や祈りの音源を部屋に流すと、少しはマシになるよ」
「そうなん? うん? だったら琴羽がやってるみたいにイエス・キリストの名前で出てけってやったら、いなくなる?」
「それはやってもいいけど……」
椿はクリスチャンでも何でもない未信者だ。イエスのば名前で追い出しは、別に未信者でもセルフでできるが、信仰告白(イエスは主ですという告白)がない場合、悪霊が帰ってきて、最初よりもっと酷くなってしまうケースもある。だから琴羽はその辺りを慎重にエクソシストを断っていたりしたが。
「わかった! イエス様で追い出してみる!」
「ちょ、わかってないよね? 私の今の信仰告白の話聞いた!?」
椿は早合点してしまった。電話を切り、本当にそうエクソシストしてしまったらしい。
数日後、また電話がきた。エクソシストやった結果、見えていた悪霊が全部消えてよかったと笑っていたが、琴羽は全く笑えない。
とりあえず、椿の家に行くことに。郊外にあるオシャレば古民家に住んでいるらしいが、まずは周辺で噂話も収集した。特に前の住民はどんな人だったか等。
「あの家の前の人? なんか人間関係悪化して離婚してたよ」
近所の住民に噂を聞くと、そんな解答が。その前の住民も人間関係が悪化し、ネットで炎上したという。
「なるほど」
琴羽は納得。家や土地には、情報が残る。特に人の念、感情、気などの情報が残りやすい。その情報をパクり、人間に悪き事を起こすのが、いわゆる呪縛霊や土地の呪いと言われているものだ。
例えばその土地に死ぬ間際の無念な気持ちが情報として残っていた場合。それを悪霊が食べ、幽霊のフリをし、人間を脅したりする。
椿の場合は、悪霊より土地(家)に残った情報そのものを何とかした方がいいだろう。今は実際に悪霊は消えている。安易に追い出ししても、土地に残る情報が消えない限りは、さほど意味がない。
「え、琴羽それって本当? 土地に情報が残り、変な事起きるの!?」
「そう。悪霊が悪さするパターンもある。そうじゃなくても土地に残った情報で人間が影響受ける場合もあるのよ」
「あー、だから前の住民やその前の人にも悪い事起きてたの? そういえば、この家に住んでから仕事のトラブルがやけに多いのよ。実は今もある」
椿も前の住民、その前の住民の噂を知っていたらしい。
「で、その情報消す方法は? 悪霊みたいにイエスの名前で消える?」
琴羽は首を振る。
「残念だけど、土地の情報を消すのには祈りと賛美が一番有効。コツコツ積み上げるしかないのよ」
「えー、そうなん?」
椿はガッカリしていたが、琴羽は毎日のように椿の家に向かい、土地の情報をキャンセルする祈りを続けた。
一ヶ月弱続けた時だろうか。ようやく椿の仕事上のトラブルが消えたらしい。また、家で見えていた悪霊が帰ってくる様子もないらしい。
「琴羽さん、よくそんな毎日、友達の家行ってたね」
この事を翠に話すと、引いていたが。
「まあ、土地に残った情報はコツコツ積み上げ方式で消すしかないからね。悪霊のエクソシストと若干方法が違うから」
「なるほど。俺もやろうかね。ホテルとか悪い情報すごそうじゃね?」
翠は思い立ったら即決タイプらしい。本当に荷物をまとめ、ホテルに住み始めてしまった。
「大丈夫かな? ホテルって普通の家より相当な情報残っていて、ヤバいんだけど……」
琴羽の心配をよそに、翠は楽しそうにホテル暮らしをしていたが。何かゾクリと背中が寒い。嫌な予感がする琴羽だった。
ご覧いただきありがとうございます。感想ありがとうございます。番外編書いてしまいました。
今は次のホテルエクソシスト事件編書こうかとプロット書いているところです。コージーミステリなども書き溜めております。初夏〜夏頃にまとめて連載できるかと思います。pixivにも新作載せています。よろしくお願いします。




