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とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第四部 宇宙人少年エクソシスト事件

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番外編短編・五年前のクリスマス

 五年前のクリスマス。琴羽はまだ大学生だったが、家庭で深刻な問題が起きていた。


 教会の金庫に泥棒が入り、金庫を丸ごと盗まれた。他にも様々な事件やトラブルに巻き込まれ、経済的な問題がのしかかっていた。


 クリスマス礼拝も終わった後だが、近所で悪い噂も広められ、礼拝参加者も数人だった。もちろん、根も葉もない噂だったが、一度広まったデマは消すのが難しい。


「困ったわね。どうするの?」


 礼拝堂で琴羽は呟く。


 一応、ツリーやリースばどの飾りで賑やかな礼拝堂だったが、牧師の父も兄の直哉の表情は重い。母は海外に宣教旅行中だった。


「仕方ないよ、琴羽。これはもう祈るしかねぇー」


 兄がそう言い、家族三人で祈る事に。


 経験上、祈ってすぐに問題が解決する事は少ない。せめて金庫泥棒の犯人だけでも捕まれ!と涙ながらに祈っていた。


 まるで人の不幸を願うように見える祈り。全く敵を愛していない。一般的なクリスチャンのイメージからは差がある光景だろうが、聖書では安易に許す事は特に推奨されていない。


 優等生的な宗教人として敵を許した結果、相手につけ込まれ、犯罪者に子供を殺されたクリスチャンも知っていた。そ


 う、まずは正当な手段で訴える事も必要。我慢は美徳ではない。警察も司法も神が立てた権威であり、そこに頼るのは別に聖書でいう罪にはならない。むしろ、安易に許した方が事態が悪化する事は、琴羽達は経験上よく知っている。


 こうして祈り終えた時だった。


「メリー、クリスマス!」


 近所に住む清川という男性がやってきた。清川は四十半ばだが地主でもあり、マンションやアパートを持っている。そこで悪霊がらみのトラブルを琴羽達がよく解決していた。清川は別にキリスト教や聖書に何の興味もない人だったが、時々ふらりとやってきては、礼拝堂で讃美歌を歌って帰っていく。近所では変わり者という噂もあったが。


 涙ながらに祈っている琴羽達に、最初、清川は引いていたが、こうも提案。


「まあ、クリスマスだし、琴羽ちゃんにはエクソシストやってもらったしな。その献金ってやつ、してもいいか?」


 そして、本当に献金してくれた。一応、牧師の父が献金の意味なども説明したが「こまけー事いいよ。パーと使ってな!」と大笑いしていたほどだった。


 その後、琴羽の頭では予想がつかない事がおきた。金庫泥棒の犯人も捕まり、近所の噂もいつの間にか消え、信徒も戻ってきた。経済的な問題も解決した。


 清川のその後だが、事業が発展したという。外国人旅行客向けの宿泊施設を開き、経済的にも安定して発展しているとか。


 逆に琴羽達に悪意の噂を流した人達は、自滅していると聞いた。


「ひっ! そんな事あったんだ?」


 そんな五年前の話を翠にした。翠は顔が真っ青。震える指で聖書を開く。


「全く聖書通り過ぎるのでは? スピや自己啓発では全く言われていないけど……。まさかまさかクリスチャンを助けると、神様から祝福されるって事???」


 翠はさらに青くなっていたが、琴羽は深く頷いていた。

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