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とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第四部 宇宙人少年エクソシスト事件

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第三話

 数日後。大変な事になっていた。


 暁人がチャネリングした結果、本当にあの場所に女性の白骨遺体が見つかったという。


 当初は暁人の戯言、デマ、台本などと誹謗中傷を受けていたそうだが、警察にも連絡し、実際に動いたそうだ。警察も何か予感を持ったのかは定かではない。普通はこんなオカルト発言で実際に調査はしないだろう。


 それでも、実際に警察が動き、その場所を調査した結果、本当に白骨遺体が出てきてしまい、新聞やネットニュースの記事を騒がせていた。


 ネットニュースによると、まだ詳しい情報は何もわかっていないというが、白骨遺体は八十年ほど前のものと推定されているという。事件性は警察も現在調査中というが、ネットでは戦中のゴタゴタで沈められた死体ではないかという意見も多かった。身元も不明で、琴羽もその可能性が高いだろうと思っていたが。


「あの宇宙人少年ってすごいわね。死体の在り方を見つけ出すなんて。宇宙人って本当では?」


 会社の昼休み中、花岡はネットニュースを見ながら、暁人の噂話を琴羽にふっかけてきた。


「宇宙人って本当にいるの? ねえ、早乙女さん、チャネリングって何?」


 花岡の事はあのエクソシストの一件依頼、好意を持っていたが、目を細め、暁人の噂話をする様子にはついていけない。


「そんなチャネリングなんてないですよ。あれは悪霊の声を聞いているだけです。宇宙人も悪霊ですよ」


 琴羽はため息をつきつつ応じた。弁当も食べてはいたが、花岡の相手で全く進まない。


「でも、クリスチャンでも神様の声が聞こえる人っているでしょ? その宇宙人のチャネリングってやつと、どう違うの?」


 純粋な花岡の疑問に琴羽も口籠もる。


「ち、違いますよ。そもそも神様の声は、クリスチャンでもあまり聞こえませんよ。よっぽどの事です」

「なんだ、そういう声とか聞こえないんだ」


 あからさまにガッカリしている花岡。琴羽は苦笑する。


「元々、人間は悪魔の声の方が聞こえやすいんですよ。たぶん、チャネリングもそっちの場合が多いでしょうね」

「なんだ、つまんない。でも、悪霊がそんな死体の在り方を教える意味って何? 人間を揶揄っているの?」


 花岡は首を傾げ、菓子パンを貪っていた。


「た、確かに何で?」


 これは琴羽も悪霊の意図が読めない。


 確かに悪霊どもは常時人間を観察しているので、死体の在り方を知っている場合がある。または、死体が殺人だとしたら、犯人に憑依していた悪霊と繋がり、真相がわかるパターンもあるが……。


 よく前世のフリをし、人間に先祖崇拝させる悪霊もいる。霊媒師がやっているパターンだったが、今回の件はわからない。


 琴羽は弁当を急いで食べ終え、スピリチュアル系や霊媒師のチャネリングした結果などをインターネットで検索してみたが、いまいち分からない。そんなチャネリングして死体を発見したケースは、暁人以外に見つかっていない。


 チャネリングしているスピリチュアルや霊媒師の関係者を見ていると、それで信者を作ったり、高額なセミナーを開いたり、金儲けに走っているものも多い。


 暁人も金目的か?


 もう少し暁人のことを調べたいと思ったが、仕事もしないといけない。


 琴羽はとりあえず仕事を定時で終わらせ、急いで教会のある自体に帰った。


 それは翠も同じだったらしい。琴羽が会社から帰ると、もうすでに礼拝堂に翠が座っていた。翠も会社帰りで、いつものようにスーツ姿で、イケメン御曹司らしく、髪もきちんとセットしていたが、渋い表情だ。


「わからないな。なんで、あの暁人っていう少年は死体の在り方なんてわかった? 警察まで動く? 宇宙人は悪霊ではないのか!?」


 翠は前髪をぐしゃぐしゃとかいていた。せっかくのセットも台無しだったが、琴羽も深く頷く。


「私もわからないのよね。そんなチャネリングで死体の在り方なんて。それがわかったなら、警察もいらないじゃない?」

「そうだな。あ、でも警察ではこういうオカルト調査している部署があるっていう噂、聞いた事あるな」

「本当?」


 確かにそんな噂だけなら琴羽も聞いたことがあったが、わからない。


「というか、これで暁人くんに悪霊が憑依しているの確定よ。そっちの方が心配」

「だなー。もし、このまま放置したら?」

「とんでもないことになるわ。霊媒師になるぐらいならマシ。教祖になってカルト宗教作るかも?」

「は?」

「だいたいのカルトは自称神の声が聞ける存在が教祖やってたりするからね……」


 その上、暁人はあのルックスだ。女性信者を中心にカルトを作るのは朝飯前ではないか。ますます二人とも神妙な表情になってしまう。


「まあ、悩んでいても仕方ないだろ。琴羽さん、祈ろう」

「ええ。暁人くんのために」


 結局、祈るのが一番という判断となった。


 不思議なことに祈っていると、不安や焦りのようなものが消える。暁人のこともそう悲観しなくてもいいだろうと、二人とも笑顔を見せるぐらいだったが。


「こんにちは。早乙女さんの教会ってここですか?」


 信じられない事が起きた。あの暁人礼拝堂に尋ねてに来ていた。


 暁人は琴羽のDMを見て尋ねに来たというが。


「はは。僕だって神様の声が聞こえるから。僕はキリスト教も聖書も信じちゃいないけど!」


 実際目の前にいる暁人は、テレビよりも何倍も偉そうに胸を張る。


「僕はすごいんだ。僕が神様だよ」


 そう語る目は、テレビやネットで見るよりも暗い。海の底のような色だった。

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