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とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第一部 御曹司と初めてのエクソシスト事件

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第三話

 その夜、琴羽は早くベッドに入ったが、御曹司のエクソシストするという失態をやらかした事を思い出し、なかなか眠れなかった。


 目を閉じても眠りが浅く、夢まで見てしまう。悪夢だ。


 最初の方はいい夢だ。父の教会で結婚式を挙げる夢だ。


 キリスト教では結婚は神が与えた尊いもの。祝福だ。幼い頃から教会で結婚式に参加しながら、 絶対に姦淫せず、処女のままで花嫁さんになる事をよく誓ったものだ。姦淫の罪は想像以上に恐ろしい事は知っていたが、それ以上に神様に祝福された結婚が素晴らしいと知っていたからだろう。実際、処女と童貞同士で結婚したカップルはなかなか別れないというデータもあるらしい。


 それはともかく、夢の前半は本当に幸せ。美しいウェディングドレスを着込み、バージンロードを歩く。父が結婚の儀式を取り計らいので、バージンロードは兄と歩いた。


 バージンロードを歩き終え、いよいよ、花婿と対面だ。きっと推しのガチ童貞のファアリン君が旦那だ。夢に中では自由ゆえ、そんな事まで考え、琴羽はうっとり目を細める。


 が、楽しい夢はそこで終わった。花婿はなんとあの御曹司だった。


「琴羽ちゃん。俺と結婚しよう」

「は? どういう事!?」


 花婿姿の御曹司は、確かにイケメンだったが、そんな事では騙されない。


「いいや、琴羽ちゃんの旦那は俺。逃がさないぞ!」


 俺様風の偉そうな表情をしながら、御曹司は琴羽に壁ドンをした。


「きゃああああああ!」


 思わず絶叫。悪夢だ。多くの女性がウットリと夢見るシーンだろうが、琴羽は全くそんな事はない。


「私はフェアリン君と結婚したーい!」


 涙目でそう叫んだ時だった。目が覚めた。夢だったらしい。


「ひー。なんて夢を見たんだ?」


 時計を見ると、朝の五時前。いつもより早く起きてしまったが、悪夢のせいで胸のあたりが気分悪いぐらい。


「しかし、何という夢……」


 神様が夢に掲示を与える事もあるというが、これは悪夢。もしかしたら悪霊が見せた夢の可能性もあり、いつもより熱心に祈った後、身支度を始め、教会の掃除をし、朝ごはんを作った。


 いつもと全く同じ朝だ。あんな悪夢を見たせいで、人畜無害な父の顔も良く見えるぐらい。


「お、新しいドラマの宣伝やってる」


 父はテレビを指さした。あの昨日のツッコミどころの多いドラマはクライマックスだったらしい。次のドラマの予告も流されていたが。


「何このドラマ?」


 琴羽がそのCMを見て、顔が引き攣った。新しいドラマは、イケメン御曹司と冴えない派遣OLのラブコメディらしい。御曹司役の俳優が壁ドンまでしている映像が長れ、琴羽は居た堪れない。父は楽しそうにテレビを見ているので、チャンネルの変えられない。なんでも女性向けの恋愛小説が原作のドラマらしいが。


「琴羽も御曹司みたいないい男と付き合ってくれたらな」

「え!?」


 父の言葉に飲んでいた味噌汁を詰まらせそうになった。


「こういう御曹司なら、僕は大賛成だが。きっと神様だってそう」

「いやいや、そこで神様持ちだすのはズルくない?」


 これ以上、父と朝食を取るのは気まずく、琴羽は汚れた皿をかき集めて、洗い場に置くと、通勤カバンを掴み、玄関に向かった。


「全く、何なの。父まで御曹司推しとかってないわー」


 ぶつぶつ文句を言いつつ、ドアの鍵を閉め、さあ、こ今日も出勤だと気合いを入れて時だった。


 教会の門に前に人影が見え、琴羽は息を飲んだ。


 その人影は、今、一番会いたくない人物だったから。


「早乙女琴羽さん、だね?」


 御曹司はキラキラのスマイル。今からでもアイドルグループに入れそうなぐらいの笑顔だ。今日も高そうなスーツ、完璧にセットした髪。時計も靴の先までピカピカ。外見はどこにも隙のない男だったが、琴羽は再び息を飲む。


「おはよう。いい朝だね」

「ど、どこがでしょうか?」


 今日の天気は曇り。十一月の後半だ。風も大して暖かく無いのだが。


 おそらく御曹司特権で琴羽の住所も調べたのだろう。その光景を想像すると、琴羽は唇を噛む。ハイスペ男、恐ろしい。


「聞きたい事があるんだよ、琴羽さん」


 御曹司はジリジリと琴羽に近づいてきた。昨日と違い、御曹司の顔色は良かったが、琴羽は何も嬉しくない。


「いえ、知りません!」


 琴羽は無視し、一目散に駅まで走った。いや、御曹司から逃げた。


 逃げながら、嫌な予感しかしない。あの夢もドラマのCMも神様からの警告だったのだろう。今の琴羽にはそうとしか思えない。


「ああ、何で御曹司のエクソシストなんてしちゃったんだろう」


 頭を抱えた。

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