番外編短編・クリスマスの真相
「クリスマスって悪魔崇拝なんだって! だめだよ、早乙女さん。そんなものを祝ったら」
クリスマスが近づくある日、ディスクで昼ごはんを食べていたら、琴羽は花岡に話しかけられた。
花岡はエクソシストの一件では入院してしまったが、今は回復し、仕事もバリバリこなしていた。
入院中はネットを見ている事も多かったらしい。クリスマスの起源はミトラ教という悪魔崇拝という陰謀論動画にハマり、わざわざ琴羽にも忠告しに来たというが。
「いえ、クリスマスの起源が悪い事は知っていますよ。ええ」
「そうなの!?」
花岡は驚いていたが、琴羽は深く頷く。クリスマスに起源の悪さなどは、わざわざ陰謀論動画を見るまでもなく、地域教会では一般的認識だ。教会によってその認識の差はある。クリスマスは一切祝わず無視する教会、サンタやトナカイなどのシンボルは無視し、イエス・キリストが誕生された事を強調する教会。または普通にクリスマスを祝う教会もある。
その全てが間違いではない。「神様を愛する」という心の元、クリスマスの解釈が違っただけ。問題なのは自分とは違う解釈を、事情も省みず無闇に否定すること。
とは言っても、日本人の宗教嫌いは想像以上だ。特にオウム真理教の事件をリアルタイムで経験した世代は、どんな宗教もお断り。そんな日本人でもクリスマスの時期だけは、受け入れやすいし、その機会を利用するのは悪くない。聖書にも機会を用いるようにという箇所もある。
「神様も内心はクリスマスなんて嫌いでしょうね。特にバカ騒ぎされたり、ラブホテルが満員になる事は。花岡さんが言うように起源も良くない。でも、だからってこの日を利用しないのは、ちょっともったいない気がするんですよね」
「そうねー。日本人は宗教嫌いでキリスト教にも関心薄いけど、クリスマスと結婚式は違うよね」
花岡ももう陰謀論動画の話をするのをやめて、ディスクに戻って弁当を食べていた。
もっとも、クリスマスの起源を暴く陰謀論動画だって悪くない。陰謀論、都市伝説、厨二病のにとっては、地域教会に誘うより何倍も効果的だろう。要は何を活かすかが問題だ。人によって刺さるものも違う。
「まあ、クリスマスを無邪気に祝っているクリスチャンは陰謀論者が言うより案外少ないよ?」
琴羽もそう呟くと、残りの弁当を食べ始めていた。




