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とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第二部 呪い人形のエクソシスト事件

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番外編短編・寛容は本当の愛じゃない

 琴羽と牧師の父はいつものように朝食をとっていた。


 テレビは朝のドラマからニュースに。動物の赤ちゃんやコンビニ店員の万引き犯逮捕などほのぼの系話題の後だった。思わず二人とも顔を顰めている。


 外国人インフルエンサーが神社で下品なダンスを踊り、ネットで炎上中らしい。実際、テレビでも鳥居の下で踊る外国人インフレエンサーが映し出され、琴羽の表情が引き攣る。


 エクソシストとして霊的な事情を知っている琴羽は全く笑えない。こんな事をしたら絶好の悪霊のターゲット。琴羽も依頼がない限りは絶対に他宗教の敷地には入らない。相当の霊的な武装(祈り、讃美など)が必要だ。


「しかし、神道はこういう時に強く言えないのが大変ね」

「確かに。我々、一神教界隈はこういう時にブチギレしても、いつもの事かーっていう」

「一神教界隈とか何よ、お父さん」

「〜界隈って流行ってるらしい」

「SNS見てるのー?」


 朝はこんな冗談を言っているぐらいだったが、夕方。


 琴羽は仕事が終わり、自宅の教会に帰ってくると、客がいた。


 田中悠人というアラサー男。なんでも神社のインフルエンサー騒ぎは全部外国の一神教のせいだと抗議に来たらしい。


「神社の事は神社界隈で収めてくださいよ。外国人はカトリック信者って聞きましたが、こっちはプロテスタントですし、全く関係ないですね」


 琴羽ははっきりと田中に主張。オタクっぽい容姿の田中は、明らかに後ずさっていたが、反論してきた。


「これだから一神教は不寛容だ。愛の宗教とか言って愛がない。日本人は全ての八百万の神様を尊重し、寛容ではないか」


 頭が痛い。こういった日本人の寛容さを持ち出されると、何とも言いがたいが。


「でも、寛容、寛容ばっかり言ってるから、外国人に冒涜された時、強く言えないのは大きな欠点ではないかと思います」


 琴羽は笑顔を作り、わざと感じ良く話した。


「それに、子供がいじめられていたら親はいじめっ子に怒りますでしょ? いじめっ子も事情があるんです、寛容で何でも認めようって言うのが本当に愛ですか? いじめっ子を警察に突き出したり、学校に訴えたり、裁判に持ち込むのも、子供を愛する行動よね?」


 より優しい笑顔で田中に詰めると、口篭っていた。


「自分達が大切にしているものを不当に汚されたら怒ってもいいんですよ。イエス・キリストも神殿で金儲けする連中にブチギレていました」

「そっか……」

「私にではなく、ちゃんとその外国人に言ってね。暴力的手段はダメ。口があるんだから、言葉で表現できるよね? SNSでも動画サイトでも何でも活用するといい」


 こうして宥めると、田中は帰っていく。


「はぁ、疲れた……」


 田中の対応でどっと疲れた琴羽だが、悪霊と比べたらまだまだ彼も大人く、聞く耳もある。


「ま、この件も忘れるかー。日が暮れるまで起こるなって聖書に書いてあるしね!」


 すぐに気持ちを切り替え、琴羽は夕食の買い物へ向かっていた。

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