↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある牧師の娘と御曹司のオカルト事件簿〜牧師の娘、御曹司とエクソシストはじめました〜  作者: 地野千塩
第二部 呪い人形のエクソシスト事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/79

第八話

 琴羽と翠は佐伯から駅前に向かって歩いていた。徒歩十分で佐伯の勤めている進学塾があり、その裏のカフェで待ち合わせ予定だった。


 どちらも住宅街にあったが、イルミネーションを飾っている家庭を眺めたり、カップルとすれ違い、今日はクリスマスイブだと琴羽も実感するぐらいだ。


 もっとも翠と二人で歩いていても、そんな甘ったるい空気はゼロだったが。途中ではおばあちゃんに「お!? 芸能人とマネージャーかい!?」と誤解されたりもした。もちろん、芸能人が翠、マネージャーが琴羽だろう。


「俺、そんなイケメンかな? やっぱりイケメンはつらいわー」

「本当に自虐風自慢はいいから。あ、あのカフェだよ。行ってみましょう」


 待ち合わせのカフェは個人経営のレトロな雰囲気な所だった。住宅街によく馴染んでいて、カフェというよりは、喫茶店と呼びたくなるような場所だ。


 クリスマスイブという事のあり、店内はカップルもいたが、常連客と思われるお爺さんや老夫婦も多く、居心地もいい。コーヒーも美味しい。翠はクリスマス特性パフェを注文し、「美味しい、美味しい」とガツガツ食べていたが。


 まだ佐伯は来ない。その間、コーヒーを飲んでいるだけは無駄だ。カウンターにいる店長に話しかけ、佐伯について聞いてみた。店の雰囲気同様、ダンディで落ち着いたマスターだった。


「ああ、佐伯くん。彼女とよく来るね。まあ、メディア用にキャラ作ってるよ」


 マスターの証言で確信した。佐伯はレミナと偽装結婚している。


「ありがとう。私もクリスマス特性パフェ注文していいですか?」

「ええ、少々お席でお待ちください」


 琴羽もクリスマス特性パフェを注文し、翠にいる席に戻った。


「パフェ、うまい!」

「うーん、呆れるけど、やっぱり美味しそうね」


 隣で食べている翠に影響され、琴羽もクリスマス特性パフェを注文し、食べる。クリームたっぷりで、チョコレートソースも大量だ。三口目ぐらいで胸焼けした時だ。


 ようやく佐伯がやってきた。今日はオシャレなスーツ姿で、髪もセットしている。少し翠と同じような雰囲気もあった。今日はクリスマスイブだ。これから冴子とデート?


「佐伯さん、こんにちは。今日はオシャレですね」

「そうだね。そのブランド、俺もよく着てる服だよ。気が合うね」


 翠はわざと何も知らないフリをしていたが、佐伯の表情はさっと凍る。目も泳ぎつつも、二人の前に座り、コーヒーだけ注文。コーヒーには砂糖もミルクも入れず、ちびちびと飲んでいた。


「えー、ブラックコーヒーなんてよく飲めるな」

「翠、あなたが甘党なだけでは?」

「いや、俺は甘党じゃない。イケメン御曹司だ」

「自分で言うかな?」


 琴羽と翠が会話するだけで、佐伯は黙ったままだ。といっても、このまま無言を通すわけにもいかない。


 琴羽はわざとらしく咳払いをすると、単刀直入に聞いた。


「レミナは本当に奥さん? 彼女いるよね?」


 ストレート過ぎたかとも思ったが、佐伯は下を向き、無言。


「レミナちゃん、埃かぶってたよ。服も少ないよね。ちょっと可哀想では? 服はともかく埃はね……」


 翠は遠回しに優しい。こっちの方が佐伯に刺さってしまったのか、ポツポツと事実を語り始めた。


 佐伯がAIアイドルのレミナにハマった事は本当。いつの間にかガチ恋だってしていた。メディアの取材も最初は本当の事しか言っていない。


 しかし、語学教習で知り合った冴子に一目惚れ。


「だって冴子さん、美人だったし」


 そう語る時だけは佐伯は素直そう。嘘はついていないだろう。


「で、久々にオシャレも頑張って冴子さんと付き合えたけど、メディアにも本当の事を言えず、ずるずると……。それに冴子さんの息子くんのこともあるしね。僕はレミナと結婚するような男っていう設定でしばらくいくよ。そっちの方が息子くんに良い気がするから」


 琴羽の推理は当たったよう。翠の推理はハズレだ。そこまで佐伯はズルい男ではなかったらしい。


「そっかあ」


 なぜか琴羽はそんな佐伯にホッとするぐらいだが。


「でも美穂ちゃんとご両親とかの件はなんなん? レミナを雑に扱った呪い?」


 翠は意外と意地悪だ。わざと佐伯を怖がらせるような事も言い、佐伯は「ひ!」と言うぐらい。


「人形の呪いなんて無いですよ。あれも所詮、偶像です。聖書ではそんな事では呪われないってあるから。呪われるのは、むしろ人形を過剰に崇拝したり、依存してしまった時です。人形自体に呪われるのではありません。あと、人形を怖がった時も悪霊の足場になります。恐怖心を悪霊が食べるんです」


 すぐに琴羽はフォローを入れた。ここでようやく佐伯は顔を上げ、琴羽達の目をしっかりと見た。


「本当ですか? 本当に人形の呪いなんて無いですよね?」

「佐伯さん、ありません。大丈夫です」


 キッパリと琴羽が断言すると、ようやく佐伯はホッとし、ゆっくりとコーヒーを啜る。


「だったら、何なの? 美穂ちゃんの件は何?」


 一方、翠は何も納得がいっていないらしい。もうパフェを食べるのは辞め、佐伯に詰めていた。


「佐伯さん、心当たりない?」

「御曹司さん、近いって!」


 佐伯は詰めてくる翠に引きつつも、何か思い出したらしい。


「そう言えば、うちの姉も、子供の頃、空想の友達作って遊んでいたな」


 この発言には琴羽も目を丸くした。


「うちの親、アニメ見ちゃダメ、異性と手を繋いじゃダメ。マックもケンタもダメって厳しかったから。テストも百点じゃないと怒るし。姉ちゃんも俺と違って優秀でさ、期待されてたし、プレッシャーも凄かっただろうね」


 あくまでも佐伯の声は他人事。兄弟といっても不仲である事は変わりない。


「まあ、でも姉ちゃんも気持ちもわかる。レミナのような人形に恋する気持ちもね。心が傷つくと、人形みたいに絶対拒絶しない相手に依存したくなるんだよ。つまりは、心の傷が原因か。取材に来たメディアの人も、そんな事言ってた。どこかに傷やトラウマがあるだってさ」


 その佐伯の声は、さっきよりは暖かい。心の底からすず花を憎んではいないようだ。


 琴羽はコーヒーを飲み考える。


 美穂がこうなったのも、親のすず花の影響か。もちろん、すず花の罪が子供が始末する事はない。それでも、霊の世界では、親の心の傷も遺伝子に刻まれるという。虐待や貧困、重病が遺伝するのも、これが理由だと言う。


「もしかしたら、すず花さんの心の傷が治れば、美穂ちゃんも……」


 その呟きは翠にも佐伯の耳にも届きはしなかったが、ちょうどスマホに着信が来た。


 しかもすず花からだった。


「すず花さん、どうしました?」

「ああ、琴羽さん!」


 すず花の声は掠れ、慌てている?


「助けてください! 美穂が、悪霊に襲われたかも! 意識がないんです!」

「え?」


 これ以上すず花の声は聞こえない。電話は勝手に切れてしまった。


「行かなくちゃ! すず花さんのところへ!」


 琴羽は一万円札だけ急いで置き、カフェを後にした。


「琴羽さーん!」


 翠も置いかけて来た。とにかく、二人ですず花の元へ走った!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。