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二十五:常夜野高校・職員室 ―二〇〇二年六月七日 三時十分―

 堀さんの低く押し殺した声が、僕の頭の中で、いつまでも響いていた。


 あの子は、殺されたのか。そんな、くだらない奴等に。

 自分達の罪を隠すという、身勝手な理由で。


 堀さんは推測だと言うが、彼の話は欠けていたピースにしっかりと噛み合った。カチリと、脳内で音がするほどに。

 彼女の調査ノートは、開かずの間についての話が書かれた時点で終わっている。実際に調べに行って、そこで男達に見つかったのだとしたら……姉が自殺なんてするはずが無いと主張していた、弟の言葉が蘇る。


 僕の内に湧き上がるこの感情が怒りなのか、それとも悲しみなのか、それさえも良く分からない。怒りをぶつけようにも、ぶつける相手は既にこの世に居ないのだ。もう十五年も前に、死んでいる。


 せめて、当時知っていたのならば。

 ――知っていたら、僕は彼等を殺したいと思っただろうか?


 いや、それ以前にもっと彼女の傍に、この学校に、居られたならば。

 ――そんなのは無理な話だと、自分でも分かっているくせに。


 いくつもの言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡っては、沈んでいく。

 僕は、あまりにも無力だ。十五年も経ってから、今更、君の苦しみを知るだなんて。ごめん。不甲斐ない僕でごめん。気付いた時には、僕の両目からはボロボロと涙が零れていた。


「神尾さん、あんた……」


 堀さんが驚いたように何かを言いかけて、それっきり口を噤む。詮索せずに居てくれる彼の優しさが、今はただ有難かった。

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