リッチキングとの戦い
「アリス!今すぐ魔力を解放しろ!」
アリスは呪文を唱え、レイヴンの魔力を解放させる。
呪文に『封魔と使役の腕輪』が共鳴し、封じ込めれていた魔力をレイヴンに流入させる。
レイヴンは、火の玉を何個も作り、スケルトンの群れに放つ。
火の玉はスケルトンの集団に直撃し、何体かの骨がバラバラと崩れる。だが、散らばった骨は集まり、また形を取り戻す。
「なるほど、自称・智謀に長けた王を名乗るだけある。こうやって相手を消耗させていくわけか」
レイヴンはスケルトンがいくら倒しても、無駄だということを理解する。
スケルトンを見据えながら、アリスに声をかける。
「お前、聖職者だろ!アンデットには強いはずだ!」
アリスはその光景に身震いしながらも、自らを奮い立たせ、返事する。
「は、はい!わかりました!やってみます!」
アリスは手を合わせ祈りをささげる。
そして、スケルトンの群れに向かって叫ぶ。
「主よ……どうかこの者たちに安らかな眠りをお与えください」
そして、スケルトンに手を広げると、頭上から眩い光が差し込み、スケルトンたちの身体が崩れ落ちてゆく。スケルトンたちは、土に還ってゆく。
アリスはその光景を見て安堵する。
「よかった……ちゃんと出来た……」
「安心している暇はないぞ、第二陣が来る!」
次は鬼火とインプがスケルトンに加勢し、レイヴンに対して突撃してくる。
「この程度の雑魚、何体来ようと同じだ!」
レイヴンは魔力を両手に集中する。
すると、黒い霧が両手を覆い、徐々にそれが曲がった刀の形になっていく。そして、向かってくるインプと鬼火を斬りつける。
すると、鬼火が黒い霧に覆われて消滅し、インプは両断され、血しぶきをあげて、バラバラになる。
控えているインプは震え、そして敗走し始める。
リッチキングは、静かに呪文を唱えると、氷の刃が出現する。
そして、敗走するインプたちの元へと、それを飛ばす。
氷の刃はインプたちの胸を突きさし、インプは力なく地面に倒れこむ。
「昔から変わらないな。生者には意思がある。だから死者のほうが扱いやすい。それがお前の言い分だったな」
レイヴンはリッチキングに吐き捨てるように言う。
リッチキングは、死んだインプ達をその死霊術で生き返らせながら述べる。
「レイヴン。君が最弱である理由は、その融通の利かなさにある。その点私は違う。使えるものは使えるようにする」
「ほう、貴様が勇者との決戦で逃げ回った後に、新魔王に仕えているのも、融通ってわけか」
リッチキングはその言葉に、反応する。
「レイヴン、それは貴族と王の違いだ。王には生き延びる責任がある」
リッチキングは杖を振り回し、インプのゾンビを突撃させる。
レイヴンは、高速で飛んでくるインプを叩き切ろうとする。
だが。
インプのゾンビが爆発する。
寸前のところで、レイヴンは吹き飛ばされ、そして受け身を取る。
「インプ爆弾という奴か」
切り捨てられたインプの死体が次々と起き上がり、そしてレイヴンに突撃していく。
レイヴンは回避しようとするが、それでも幾つかのインプは回避することができない。
そして、インプゾンビに被弾しそうになった、そのとき――。
「光の防壁!」
そう言うと、アリスが光によってレイヴンを守り、爆風からレイヴンを守る。
「よくやった!アリス!」
レイヴンは体勢を立て直すと、襲い掛かってくるインプのゾンビを斬りつける。
その斬撃によって、爆発するまでもなく、インプゾンビはバラバラになる。
その様子を見て、リッチキングは驚いた表情を浮かべる。
「貴様も人間の聖女様に命乞いをしているのなら、私のことをとやかく言う筋合いはないな」
「ふん、お互い様だ」
「私は少なくとも自らの意思で魔王に仕えている。貴様はどうかな」
レイヴンは鼻で笑うと、リッチキングに向かって斬りかかる。しかし、リッチキングは巧みに杖を操り、刃を弾き返す。
「口だけ達者なだけあって腕は確かだな。だが……」
そう言うとレイヴンは、再び斬りかかろうと、剣に力を込める。
しかし、リッチキングは杖の先から衝撃を放ち、レイヴンを吹き飛ばす。吹き飛ばされたレイヴンは地面に叩きつけられ、土煙をあげる。
そして、体勢を立て直そうとするが、衝撃によってうまく動くことができない。
「さて、私がなぜリッチキングと呼ばれているか、その真髄を見せてやろうか」
リッチキングは杖を高く掲げる。
そして呪文を唱えると、地面に散らばった骨やインプの欠片がカタカタと音を立てて、リッチキングを中心として集まり始める。
集まってきた骨やインプのゾンビたちは、リッチキングと融合し、巨大なスケルトンの集合体となる。
リッチキングは、そのスケルトンの中心で、レイヴンに語り掛ける。
「これが私の真髄だ。どうだ?少しは見直したかな?」