◎人物紹介と設定 ~その5~
◎人物紹介
〇ドルテ
だれも知らずにこっそり誕生した新生魔王。魔王の末娘であり、それゆえに大切に育てられたいわゆるお嬢様。
世間知らずでどこかズレたところがあるが、他人を思いやれる優しい子である。
父である前魔王の死によって魔王を継ぐこととしてしまったが、今後どうするかは実はよく考えてない。なんとかなるだろうと前向きに考えている。
彼女自身の魔力はかなり大きく、それゆえに魔王の使っていた漆黒の鎧を扱うことができている。戦闘センスは意外にも高いのだが、性格がのんびりしているのであまり生かせてない。
魔王には多くの妻と子供がいたが、その多くは過去の戦いで失われているため、戦後に生まれたドルテは自分の兄弟と会ったことはない。
また、魔王自身がドルテの存在を隠していたため、彼女の存在を知る者は少ない。ちなみに母親はすでに他界しており、唯一の家族である父親である魔王がかつての故郷を取り戻すため躍起になっているの応援しつつも体を心配していた。
〇魔剣タルタロス
喋り方の軽い魔剣だが、その実力は本物で凄まじい魔力を集め放つことができる。魔王の鎧に慌てて乗り込もうとしたドルテが額をぶつけて、僅かに血が滲んだ手で触れたことで契約に至る。
全盛期の力を失った前魔王が見せていた魔力はこのタルタロスのものである。
◯魔王
ドルテの父親。八百年以上生きる魔族で本名はアルバンというが知る者は少ない。三百年以上前に魔族の代表として最後まで戦った経歴を持ち、フィーネ島へ逃げ延びた後も生活できるようにと氷に閉ざされた世界を開拓していった。
その功績ゆえ他の魔族からの信頼は高い。
人間との戦いで家族や仲間を失い開拓の際も失った仲間は多く、その度にかつて魔族が住んでいたブリッサの地へと帰る気持ちが強くなっていった。
いよいよ大陸へ進軍というときに寿命がきてしまったが、娘であるドルテの優しさに包まれて幸せだったと思われる。
彼が着ていた魔王の鎧、そして魔剣タルタロスの存在は外部から持ち込まれたもの……かもしれない。
〇メッルウ
三天皇の一人。全てを焼き尽くす炎、『劫火』の名前を持つ彼女のスキルは『劫火』であるが、もう一つ彼女は『支配』のスキルを持っている珍しい二重スキルの持ち主である。
『支配』はアトラの『魅了』と違い対象は一人だけだが使った相手の能力を向上させ操る能力を持つ。
フレイムドラゴンの血が混ざった竜人であり、背中のドラゴンの羽で飛ぶことができる。サトゥルノ大陸へと渡り人間の戦力や国の事情など情報を集めていた。グランツやアトラなどを使って人間たちがどのような動きを取るのか観察し、そこから各国の情報を得ようとしていたがそこで聖女セシリアの存在を知る。
聖女セシリアが放つ魔力と人を一つにまとめ率いる姿を見て、今後の作戦の障害になると危険視している。
〇オルダー
三天皇の一人で『虚空』のスキルを持つ。彼は中身のない、いわゆる歩く鎧であるが、どこかクワガタ虫を彷彿させるひし形の兜や銀の下地に金の文様の混じったデザインはどこかロボットを思わせるフォルムをしている。
生まれはゴーレムと同じく物に魔族の魂のなれの果てが宿り、新たな生命体になったものであるが、オルダーは多くの魂の欠片が長い年月をかけ鎧に蓄積されたため自分の意志をはっきりと持っており、スキルまで発現している。
鎧の体なので寒さを感じないゆえ、外へ出てフィーネ島からサトゥルノ大陸へと渡るための橋などを建設していた。
〇ザブンヌ
三天皇の一人で『暴食』のスキルを持つ。食べれば食べるほど強くなるスキルであるが、ザブンヌ本人はお腹が弱く食べ過ぎによる腹痛と体のだるさに悩んでいた。
ある日食べ過ぎでだらしない自分の姿に嫌気がさしスキルに頼らない肉体作りを決意する。
ザブンヌは魔族の拠点である住居や家畜や作物を育てるスペースの保全と増設を担っており、その作業と筋トレを合わせ肉体を強化しつつ食事制限を行い現在の筋肉質な肉体と生まれ変わった。
◎設定
〇現在の魔族事情
現在する存在する魔族の多くは三百歳以下で魔族と人間の争いを経験した者は少ない。過去に人間との間に起きた戦いのことは伝え聞いており、今の厳しい生活から抜け出したいという気持ちと、ここまで自分たちを支えてくれた魔王のために頑張ろうという気持ちからこの度の進軍を決意した。
長い年月をかけ今の場所に生活拠点を築き上げ戦いからは離れていた生活が長く、昔のような血気盛んな者たちは少なくなった。
だが人間に比べれば魔力も体力も段違いに高いため戦いになれば人間の脅威となるのは間違いない。
グランツやアトラのように各地に散っている魔族は、過去の戦いの際に散り散りになった者たちやその末裔。