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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
聖女セシリア

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第262話 触れ合う手が道を切り開く

 遠浅な池に刺さる青色の剣は、遠くから見ると池の中心に大きな青い花が咲いているように見える。


 ニャオトは手に持った絵本を広げ、自前のノートも広げる。隣に立ったイーリオが手を伸ばし絵本を受け取ると一ページ目を開く。それを見たセシリアが皆の方を向き口を開く。


「えーと、予定通りまず始めにこの封印が解けないか、ミモルとララムにやってもらうね」


 皆が頷くと、一歩前に出たミモルの背中にララムが飛び乗る。


「うぅ、緊張するなもう」


「ミモルが一番手なんて、名誉なんだもん! ガツンといくんだもん!!」


「気軽に言ってくれちゃってから。あぁ〜もうやります!」


 ミモルがスキル『解呪』にララムのスキル『効果向上』が乗り強力な『解呪』のスキルが封剣にかけられる。


 その瞬間、キンッと空気が緊張し穏やかな池の周辺の気温が一気に下がると、白い霧が足下に広がる。


「むぐぐっ、私の力だけじゃ、か、解呪は無理だけどこの感じ……多分きっかけ与えればいける気がする」


「イマカラボクガ、イウジュンバンデ、ケンニフレテ、クダサイ。イチバンメ、ニ、ニンゲン。オネガイシマス」


 歯を食いしばりながら必死に状況を説明するミモルの言葉に、ニャオトが慌てて指示を出す。

 その言葉に一番近くにいたセシリアが手を伸ばしカシェに触れる。


「あれ? なにも起きない……ミモルなんか変わった?」


「い、いや特になにも変わってないけど」


 触れた瞬間なにか反応があるかと思ったセシリアは首を傾げる。


『セシリア様、私とアトラが引っついていますから純粋に人間として反応しないのかもしれません。誰か別の者にやってもらってみてはどうでしょう?』


「たしかにそれはあるかも。リュイちょっといい?」


 足下にいるグランツの助言を聞いてセシリアはリュイを呼ぶ。突然呼ばれたリュイは驚いた表情で自分を指さし、緊張した様子でセシリアのもとにやってくる。


「リュイ、カシェに触れてくれる?」


「わ、私? 私がですか?」


「うん、私だと上手く反応しないっぽいからちょっとお願いできる?」


 セシリアのお願いにリュイが恐る恐る手を伸ばしカシェに触れる。その瞬間空気がさらに緊張感を増し、温度が下がったかのように皆が感じる。


「た、多分一段階外れた。そんな気がする」


 ミモルの言葉を聞きニャオトが口を開く。


「ツギハ、マ、マゾクデス」


「では、わたくしが」


 ニャオトの呼ぶ種族名にドルテが前に出て、リュイの手の上に手を重ねる。再び空気が引き締まり周囲の温度が下がる。


「エ、エット、エルフ」


「あたいが出る」


 ファラやカメリア、ノルンの声援を受け前に出たペティがドルテの手の上に手を重ねる。


「ツ、ツギハ、マモノ」


『ここで俺の出番か』


「おい、もっと優しく置けよ。痛えだろ」


 前に出て角をペティの手にペシッと乗せ、ふふんと鼻で笑うラファーにペティが文句を言いながら頬をグリグリする。この二人のやり取りは日常茶飯事なので誰もツッコムことなくニャオトが口を開く。


「ツギ、ドラゴン……デス」


「うむ、この上に手を置けばいいのか……む、難しいな」


 神妙な顔をしたフォスがぷるぷる震えながら指先をそーと伸ばす。そのたどたどしい指の動きにリュイとペティ、ラファーが悲鳴と文句を上げるなかフォスの指がラファーの角の上に触れる。


 周囲の空気が小刻みの震え始め、水面もカシェを中心に波紋が広がり何重もの輪を生み出す。


「あ、あとちょっと。あと少しで外れそう。ニャオト、次は?」


 ミモルに声をかけられニャオトは慌てふためく。


「ツギ、ツギハナイ」


「いや、ここまできて、ないはないでしょ。なんとか考えてよ!」


 ミモルに睨まれ、ますます慌てるニャオトをじっと見ていたセシリアが口を開く。


「もしかしてだけど、これが封印を解く鍵……というよりも魔族のために皆が思いを合わせることが条件だとしたら、遊戯人(ゆうぎびと)であるニャオトさんも必要なんじゃないです?」


「ボ、ボクモ?」


 セシリアに名前を呼ばれ驚くニャオトだが、今の段階でやれることはそれしかないと覚悟を決め資料をイーリオに手渡すと、背伸びをしてフォスの指に触れる。


 カシェを中心にして切り裂くような鋭い衝撃が空気と水面に輪を広がっていく。


 ━━中心となる者が私を抜け


 低い男の声が周囲に響く。


『カシェ……』


『カッコつけた声出しやがってよ。似合わねえっての』


 その声にシャルルとタルタロスが反応し、それを聞いたセシリアは声の主の正体を知る。そしてこの場にいる全員に自分が見られていることに気づき目を丸くする。


「えっと、私でいいのかな」


「いや、セシリア以外誰がいるってんだ?」


 戸惑うセシリアにペティが素早くツッコムと、全員が頷くのでセシリアが恐る恐るカシェに手を伸ばす。


 手を伸ばすときドルテと目が合ったセシリアが微笑む。


「大丈夫だよ」


「え、ええ……そうですね。ちょっと不安に駆られてしまいました」


 微笑み返したドルテは、セシリアが再びカシェに手を伸ばすより先に口を開く。


「セシリアお姉様、ありがとうございます。わたくしだけでは、全ての種族の協力を得るなんてことはできませんでした。本当にありがとうございます」


 涙ぐむドルテに、フォスが口を開く。


「別にわしは、魔族のためではないがな。セシリアのお願いだからやっているだけだ」


 ぶっきらぼうに言うフォスにセシリアはふっと笑みを浮かべる。


「これで全ての種族間での争いがなくなるわけじゃないとは思う。けど、こうして皆が一瞬だけでも同じ目標に向かって進めたのは大きいと思うんだ。フォスさんだって、魔族全員は認めてなくてもドルテのことは認めてますよね?」


「う、うむぅ。まあ、わしには及ばんが強くはあるしな。その若さで魔族を束ねる実力は認めなくもない」


 目を逸らして答えるフォスを見てクスクス笑うセシリアがカシェの柄を握る。


「種族間とかじゃなくて、個人としてなら分かり合える。全体を好きになるんじゃなくて、皆が自分の手の届く範囲、それこそ手が触れられる人たちを好きになれれば、もっと優しい世の中になれるんじゃないかなって最近思うんだ。ま、私個人的な理想だけど」


 恥ずかしそうに言いながらセシリアは、自分が握ったことで刀身から眩い光を放ち始めたカシェをそっと抜く。


 次の瞬間、カシェが抜けた穴から眩い青い光が空に昇り、雲を突き抜け天に突き刺さると遥か上空で集まり球体を作った青い光は、地上のある場所へ向け一直線に走る。


 その日フォティア火山の北側に広がる剣山のような山々がつらなるモンタニャー山脈に青い光が落ち、一部の山が崩れ消え去ってサトゥルノ大陸に太古の大地と道が蘇る。

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