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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
聖女セシリア

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第250話 前線のため、男の娘はお願いをする

 ラファーに乗ったセシリアは、集まって来た混合軍の兵たちの前で止まると、聖剣をぎゅっと抱きしめる。


「皆さんには魔族たちをここから先に通さないように、防衛をお願いします」


 セシリアの訴えに多くの者が頷く中、一人の兵が手を挙げると掌を向けたセシリアに発言を促される。


「先ほど姫の声でグレジルに魔王がいると聞きました。私も姫と共に魔王を討ちたいと思います。ここで防衛するのではなく一緒に連れて行ってもらえないでしょうか!」


 真剣な表情で懇願する兵にセシリアは優しく微笑む。


「申し出は大変嬉しいのですが、この場の防衛をお願いできるのはあなた方しかいません」


 聖剣をさらにぎゅっと抱きしめ、やや潤んだ瞳を向ける。その瞳を向けられた兵は、顔を赤らめ思わず目を逸らしてしまう。


「どうか、私が魔王との対決に集中するためにもこの場を守っていただけないでしょうか」


 潤んだ瞳の聖女セシリアにお願いされ断れるわけもなく、混合軍がキレのあるいい返事をすると、セシリアは笑顔を見せ次の場所へと向かってラファーに走ってもらう。


『足下をすくわれないためにも後方の陣形はきっちりと固めておくことが大切だ。今スキルを使うのは危険だし、なによりも直接セシリアがお願いすることが重要だ。それにしてもあんな感じでお願いされたら我も断れんなぁ~。今度我にもお願いしてほしいなぁ~。なんて思っているんだが、どうだ? なにかお願いないか?』


「願いなんてない。……大体ね、自分でやっておいてなんだけど、ときどき終わったあとに、ふと冷静になって後悔するんだ。私なにやってんだろってさ……」


 へへっと自虐的な笑みを見せるセシリアを乗せるラファーが口を開く。


『男の娘の魅力って深いよな。この葛藤するセシリアの姿もまた、いいって思ってしまう俺がいる』


『ほう! その域まで達したかラファーよ。おめでとう』


『おめでとうございます』


『おめでとうなのじゃ』


『よせやい、照れるじゃねえか』


 ラファーに向けられる聖剣シャルルの称賛の声に、グランツとアトラのお祝いの言葉が重なり、照れるラファーを見てセシリアが目に光のない冷めた視線を向ける。


「私の周りには変なのしかいない」


 セシリアの呟きは、男の娘談義で盛り上がる聖剣シャルルたちには届かないのである。


 ***


 セシリアが後方の陣形を整えている間にグレジルでの戦闘は激しさを増していく。


 ドルテと魔王の鎧、そしてフォスを中心に激しいぶつかり合いが繰り広げられる。魔王の剣と爪がぶつかったとき、ドルテが反対方向から魔剣を振るう。


「ぐっ」


 反対の手で受け止めたフォスの顔が歪む。


「フレイムドラゴンさん、あなたは前回のわたくしとの戦いで怪我をしていますよね。怪我を押してまで出て来たのはセシリアお姉様のためですか?」


「愚問だな。わしが人間のために戦うと思うか? 聖女セシリアの願いだからこそ、こうしてここに立っている」


 フォスの答えにドルテが唇を噛んで不快感を露わにすると、魔王の鎧が自ら剣を引きフォスの爪を頭で受け止めそのまま蹴りを入れる。

 のけ反るフォスにドルテが魔剣を振り下ろして追撃をすると、フォスの巨体が大きく後退する。


 翼を広げバランスをとりつつ、足を地面にめり込ませ踏ん張ったフォスが腕に火を巻き振り下ろすが魔王の鎧が体で受け止め、その体を駆けのぼったドルテが飛び降りながら魔剣を振り下ろす。


「怪我もさることながら、この混戦の中で全力を出せないんじゃありませんか? 周囲を巻き込まないように炎も吐けないのでしょう」


 ニヤリと笑みを浮かべたドルテを叩き潰そうと両手と、翼に生えた手の四本の腕を振るうが、両手を広げたドルテから伸びた闇が全て受け止める。

 それでも叩き潰そうと四本の腕に力を入れるフォスと、それを両手を広げて闇で押し返すドルテが互いに目を合わせる。


「魔王を名乗るだけあって凄まじい魔力だ。だがその恰好では剣を振るえまい」


「わたくしが剣を振るうならですけど」


 笑みを浮かべるドルテが、魔剣を持っていないことに気がついたフォスが目を大きく見開くと、巨大化した魔剣を持った魔王の鎧がフォスの頭上に魔力をまとった魔剣を振り下ろす。斬撃と共に膨大な魔力がフォスを押し潰し、その凄まじい質量の魔力がフォスの体を地面にめり込ませる。


 地面に押しつぶされるフォスを見たピエトラが、苛立ったようにくちばしをカタカタ鳴らす。


『あのやろう簡単にやられやがってぇ。情けないったら、情けない』


「け、怪我もしてますし。一人で魔王を相手にしてますから……そ、そんなこと言ったらいけないと思います」


 背中に乗っているリュイの言葉を聞いたピエトラは、頭のとさかを揺らしながら目をぐるぐる回す。


『うん、確かにそう。精鋭部隊の言うことは正しいね。うん正しい』


 素直に自分の言葉を聴いてくれたピエトラにホッとするリュイが、後方を見てついて来る混合軍を確認する。


「セ、セシリア様が到着するまで、頑張りましょう」


 緊張して上擦った声で発破をかけると、混合軍は拳や武器を掲げ声を上げる。野太い返事に驚き、ドキドキする胸を押えたリュイが腰に装備していた短剣を鞘から抜く。


「ピエトラさん、いきましょう」


『任せて、任せて』


 真正面から向かって来るメッルウを瞳に捉えたリュイとピエトラが戦闘態勢に移る。

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