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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
聖女セシリア

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第246話 聖女は全てを見通す

 ヴェルグラ城内を兵たちが慌ただしく走り回る。その中の一人に近づいたカメリアが何事かと尋ね、話を聞いてファラたちのもとへ戻ってくる。


「なんでもソレーイエとプレーヌ、あとはネーヴェ辺りも魔族が攻撃してきたって。それと隣のグレジルに魔王を名乗る少女が現れたって。それでバジリスクとコカトリスと交戦中だってー」


「魔王を名乗る少女? それ偽物だよ。だって魔王様ってこーんな大きな鎧の人だし。あんな大きな鎧を着れるってことは、中も大きな人に決まってるから」


 カメリアに反応したミモルが否定するが、隣にいるララムが首を横に振る。


「ミモルは聖女といたから知らないんだもん。魔王様はララムと同じくらいの伸長のお嬢様なんだもん。名前はドルテ様なんだもん」


「は? お嬢様? って待って……ドルテって名前どこかで聞いたことがある」


 腕を組んで首を捻って考え始めるミモルだったがすぐに手をポンと叩く。


「そうだ! セシリアがドルテって子を知ってるかって聞いてきたんだ。ってことはセシリアは魔王の正体を知っていたってこと?」


 混乱気味に首を捻るミモルのもとにやってきたラファーが口を開く。


『セシリアお嬢さんは俺らが考えつかないようなことを口にする。今回もピエトラとウーファーを自由に動かし、フォスのおっさんを待機させていたのもセシリアお嬢さんの采配だ。おそらく魔王の出現と魔族の攻撃をも予想していたと思われる。そんな聡明なセシリアお嬢さんのことだ、魔王の秘密にも誰よりも先に気づいていたのではないか』


 ラファーに触れて声を聞いていた、ノルンが両手を挙げてぴょんと飛ぶ。


「姫は、魔王も苦しんでいると言ってた」


「そうそう、なんでも倒してお終いってことにはならないって。本当に解決するなら相手にも寄り添う気持ちは大事だって言ってた」


 ノルンにファラが続くと、ララムが眉間にしわを寄せる。


「魔族たちよりも聖女の方が先に魔王様の正体を知ってるって、とんでもないヤツだもん……」


 呟くララムの頭に、ラファーが角を振り下ろす。


「いたたっだもん」


 頭を押さえて涙目でララムは抗議の視線をラファーに向ける。


『セシリアお嬢さんの考えは深い。ミモルの手助けに行ってほしいと言われたとき、本当は離れたくなかった。美しく可憐で、優しいセシリアお嬢さんに乗られてどこまでも走りたかった……あぁ愛しのセシリアお嬢さん』


「え、なんなんだもん。このお馬さん、賢いんじゃなくて、頭おかしい馬だったんだもん?」


 鼻息荒く、角でバシバシとララムの頭を叩きながらラファーが語る内容に、ララムは困惑する。


『つまりだ、俺がこうしてララムと会うことを、予想していたのではないかということだ』


「なにが、つまりなんだもん。全然繋がってないんだもん」


『察しが悪いな。前にフォティア火山で俺とララムがスキルを合わせてだろう。あれをやることで、今起きている争いに一石を投じろってことじゃないか』


 ラファーに触れ、話を聞いていたカメリアたちにはラファーの言葉の意味が理解できないが、あの場にいたミモルはララムを指さす。


「あれじゃない。フォティア火山でララムのスキル『能力向上』をラファーに使って全員に声を届けたじゃん。あれを使えってことだって」


「えぇー、でもあれってあそこにいる人たちだけだったんだもん。そんな限定的な力で一石投じれないんだもん」


 ここまで、離れて見ていたラベリとアメリー、そしてエノアの三人。そのうちのエノアが立ち上がると口を開く。


「全部が聞こえていたわけじゃないし、断片的にしか理解はできなかったんだけど、つまりはセシリアに会えば解決するんじゃない? こっちの居場所を知らせて来てもらう方法とかないの?」


 エノアに視線を向けられたラファーは、視線と共に言葉をエノアに投げる。


『俺の魔力を空に上げて、信号として送れば気付いてくれるかもしれない。セシリアお嬢さんは魔力察知能力にも長けているからな』


「じゃあ、行きましょうよ。セシリアは魔族が攻めてくることを予想していたからこそ、各国にセシリアの花を用意していたんでしょうから」


 そう言ってエノアがふと笑うと、ラベリとアメリーがセシリアの花が咲いた植木鉢をかかえやって来る。


 ***


 ヴェルグラから出発したラファーの背中にはララムが乗っている。隣を走るコッレレはミモルを乗せ、二人を追従するエルフ三人のうち、ファラとカメリアの後ろには、セシリアの花を抱えたラベリとアメリーが乗っている。


 広々とした草原で立ち止まったラファーが角を空に向ける。


『今から俺の魔力を上に向けて発する。魔族側にも魔力感知能力に優れたヤツがいたら、確認のため向かって来る可能性もあるから気をつけてくれ』


 ラファーは注意をして皆が頷いたのを確認すると、角を中心に魔力を集め始める。光が集まりほのかに光始める角からやがて一つの大きな白い球が生まれ、ふわふわと空へ向かって昇り始める。そして白い球は風船のようにふわふわと空を泳ぐ。


「……」


 10分ほど経っても空になんの変化もなく、それまでじっと白い球を見上げていたファラたち全員が頭を下げて、長時間使ってじんわりと痛む首や肩を押えたり回したりする。


『くるぞ!!』


 ラファーの鋭い声に下げていた顔を一気に皆が上げる。すぐに赤い点が見えたかと思うと、一瞬で自分たちの真上に巨大な物体が止まり影を落とす。


 巨体に似合わず、静かにすっと地上に四つ足で降りたドラゴンのフォスの背中から、翼を広げたセシリアが降りてくる。

 その後ろでは、ぐったりとフォスの背中の上で目を回しているリュイとペティの姿がある。フォスがそっと体を揺らすと、ふらつきながら二人と一匹は下りて、座り込むクリールを枕にリュイとペティが寝っ転がってしまう。


 巨大なフォスの登場に驚きを隠せないラベリたちだが、セシリアならなんでもあり得るとすんなりと受け入れてしまう。


「皆無事でよかった。ミモルも友達をちゃんと説得できたみたいでよかった」


 セシリアに声をかけられ、満面の笑みを返すラベリたちと恥ずかしそうにするミモルを見て微笑んだセシリアは、ラファーを撫でる。


「ラファーさんもありがとう。それと、私は何回かララムと会ってるんだけど覚えているかな?」


 ラファーにしがみついて、緊張した面持ちで見つめるララムにセシリアは声をかける。ぎこちなく頷くララムを見てセシリアが優しく微笑むと、ララムは頬を赤くして下を向いてしまう。


「なんで、ララムが恥ずかしがってるのよ。そんなキャラじゃないでしょ」


「だって……すごく綺麗な人なんだもん」


 綺麗と言われ、どう反応していいのか分からないセシリアは苦笑いをしながらララムを見ると、ララムはますます恥ずかしがって下を向く。


「そういえば、ラファーさん、私を呼んだ?」


『そうだった。セシリアお嬢さん、俺とララムのスキルを使ってなにかをするんではないかと思って呼んだのだ。魔王の出現場所を完璧に予期し、事前にピエトラとウーファーを向かわせ、フォスのおっさんを向かいに寄越した。多分俺がここに来ることも予想していたセシリアお嬢さんなわけだ。俺にミモルの手伝いをさせたこと、ララムと組ませたことにもなんらかの意味があるとみたのだが』


「え……あ、うん」


 曖昧な返事をするセシリアだが、皆には真意を言い当てられ戸惑っていると捉えられてしまい、「やっぱりそうなんだ」と尊敬の視線でセシリアを見つめる。


(魔王の出現位置はたまたま配置がピタッとあっただけで、そこまで深くは考えてなかったんだけどなぁ。それにラファーさんは単純にミモルの手伝いに行ってもらっただけで、その後のことは考えてなかったんだけど)


 そんなことを思いながら、ラファーの角に触れるセシリアの手にララムが手を重ねる。


「せ、聖女さんは、魔王様をどうするつもりなんだもん?」


「どうって、帰る場所を探しているなら手伝うし、困っていれば力は貸すけど、とりあえず今は止めるのが先かな」


 セシリアの言葉にララムは黙ったまま見つめる。セシリアが微笑み返すとララムは恥ずかしそうに下を向いてしまう。


 ララムの反応に困っているセシリアに、セシリアの花が咲いた鉢を抱えたラベリが歩み寄ってくる。


「セシリア様、各国に用意してもらっていたセシリアの花を使うときですよね!」


 期待に満ち溢れた目で見てくるラベリに、セシリアは思わず後退る。


「前にヴェルグラ開放でやったときの、もっと広いバージョンをやるんでしょ!」


 追従してくるアメリーの圧にセシリアは、更に半歩後退る。


『なるほど! それに俺らのスキルを合わせてセシリアお嬢さんの声を大陸中に届けるってわけだな!』


 興奮気味に言うラファーの言葉に、意図を理解したと皆がセシリアに向ける尊敬と期待の目を強める。


「あ、いや……大陸中は無理だと思うけど。うん、まあ花を使って奇跡が起こればいいなぁ的なことはやるつもりではあるけど」


 フォスに移動してもらいつつ、各地で花びらを舞わせて人々の士気を上げるつもりではあったセシリアだが、過度な期待を受け、不安いっぱいのままセシリアの花を手にする。

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