第244話 姫様プレイ
突如グレジル城の壁が爆発し、破壊された壁の一部が庭園に降り注ぐ。
そして爆発した宙には、黒い球を鋭い足で掴むピエトラの姿があった。翼を広げ滑空しながら足で掴んだ球に全体重をかけ踏みつける。
同時に破裂し解けた黒い球がピエトラの足を掴み、放り投げる。
投げられ庭園の土の上に頭から落ちつつも一回転し転がり立ち上がったピエトラが、足の鋭い爪で地面を掴み石化させた土の塊を投げる。
闇を魔剣に巻いたドルテが、次々と飛んでくる塊を斬り伏せていく。
投げる塊に紛れ翼を広げて大きく跳躍したピエトラが、鋭いくちばしをドルテ目掛け振り下ろす。
軽々と受け止めたドルテだが、ピエトラは構わず連続でくちばしを振り下ろしていく。それらを魔剣で弾いていくドルテ目掛けて前蹴りを繰り出すが、それもあっさりと魔剣に受け止められる。
受け止めた魔剣を足で掴む、ピエトラとドルテの目が合うと、ドルテがふと笑みを浮かべる。
「魔力を流してわたくしを石化しようだなんて、無駄ですよ」
魔剣を掴んだままドルテを投げようと体に力を入れるピエトラだが、びくりともしないことに首を傾げる。
ドルテが魔剣を握る手に力を入れ、ピエトラごと振り抜いて、小さなドルテが、巨大なピエトラを軽々投げ飛ばしてしまう。
数軒の家を破壊しながら止まったピエトラ目掛け、闇の斬撃が飛んでくる。地面を足で蹴り、翼を真横に広げバク転しながら避けたピエトラの上に黒い翼を広げたドルテがニヤリと笑うと、ピエトラの頭を掴み地面目掛け投げる。
地面に激しく叩きつけられたピエトラに、魔剣を振るい闇を落とすと、闇でピエトラを押しつぶしていく。
凄まじい闇の質量に押しつぶされ、その圧に地面だけでなく周囲の建物に亀裂が入っていく。
トドメと言わんばかりの爆発が起き、地面は大きく抉られ周囲の建物は粉砕される。
抉れ凹んだ地面から立ち昇る煙を切り裂く翼を、しゃがんで避けたドルテが魔剣を振るうと石になったピエトラの足が受け止める。
「自らを石化して攻撃力、防御力ともに上げるとは驚きました」
石化したピエトラの足を跳ねのけ、石化した翼を魔剣で受け止める。コケッと短く一鳴きしたピエトラが、反対の翼も石化し振り下ろす。石化した翼の乱打を、魔剣で受け止めていくドルテが、僅かに瞳を揺らしながらピエトラとは別の方向に向ける。
ピエトラの翼を強引に叩き伏せたドルテが瞳の光を鋭くすると、横方向から高速で飛んでくる緑色の塊を回し蹴りで蹴り飛ばす。
蹴られた塊は家々を破壊しながらどこかへ飛んでいく。そして塊が飛んできた方向を睨むと、高速で這いなが向かって来る巨大な物体目掛け闇の斬撃を放つ。
放った斬撃の衝撃を受けるも、目をつぶりながらも構わず突っ込んでくるバジリスクのウーファーを見てドルテはふと笑う。
大きな口を開け飲み込もうとするウーファーの頭を横にステップを踏みながら華麗に避けながら、魔剣を振り下ろす。
だが、ウーファーの硬い鱗の前に魔剣は弾かれてしまう。
「さすがにこの大きさだと、溜めずには切れませんね。タルタロスさんお願いします」
驚く様子も、悔しがる素振りもなく冷静にドルテは呟くと魔剣を地面に刺す。地面に刺さったタルタロスは、自身のスキル『倍化』によって巨大化する。ドルテの伸長の三倍はあろうかという大剣は急速に周囲の魔力を集め刀身に力を蓄えていく。
その間にウーファーは町の一部を破壊しながら急旋回し、ドルテに顔を向けると口を大きく開く。口の中でチカっと青い光が走ったかと思うと、光は渦を巻き青い水に白い泡が混ざる水流となってウーファーの口から発射される。
凄まじい勢いで放たれた水流はドルテと魔剣タルタロスを襲う。
ドルテは素早く離れるが、魔剣タルタロスは真正面から水流を受ける。水流が放たれたと同時に走って来たピエトラが、魔剣を持たないドルテ目掛け飛び蹴りをして襲う。
「あらら」
飛び蹴りを避け、続く回し蹴りを体を反らして避け驚くドルテに、ピエトラが回し蹴りをした軸足で土を掴み石化した塊を投げる。
そのとき、ドルテの正面に火が落ち真っ赤に燃え上がると、姿を現したメッルウが炎で飛んできた塊を薙ぎ払う。
さらにピエトラが連続で放った蹴りをオルダーの剣が受け止める。
そして町の瓦礫から首を何度も捻り体の調子を確かめながら歩いてくるザブンヌが現れる。
「ザブンヌさん、蹴ってしまってごめんなさい」
「いえいえ、蛇野郎に投げ飛ばされた俺が悪いんで。姫様に怪我さえなければ俺などどうでもいいので」
謝るドルテに、ザブンヌが慌てて謝り返す。
「みなさん、予定通りに事は進んでいますでしょうか?」
「はい、予定通りソレーイエ、プレーヌの二国へ攻撃を開始しております。こちらへ戻る際、あたしとオルダーでファーゴ、ヴェルグラへの攻撃も行っていますので人間どもの統率を乱すことに成功しています」
メッルウの報告を受け、微笑んで頷いたドルテが目の前にいるピエトラを見る。
「あなた方魔物も人間は嫌いなのですよね? わたくしたちと一緒にきませんか?」
ドルテのお誘いにピエトラは目をパチパチさせると、胸を張り大きく一歩踏み出しくちばしを振り下ろす。
ドルテを抱えて大きく後ろに下がるメッルウが、ドルテをそっと下ろすとピエトラを睨む。
「フォティア火山では言葉を交わした仲だが、お前はあくまでも聖女に仕えるというわけだな。敵となるなら容赦はしない」
握った拳から炎を上げるメッルウの両隣にオルダーとザブンヌが立つ。
「……姫様、お下がりください。ここは私たちが姫様をお守りし戦うときです」
「助かります。わたくしも、セシリアお姉様の相手をするのに、大部分の魔力を削っているのでここはお願いします」
笑みを浮かべるドルテに、三天皇が力強く頷くとそれぞれ構える。
魔族三人と魔物二匹が激しく睨み合う。




