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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
北の大地に光を

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第225話 賑やかな日々に聖女は未来を語る

 ヴェルグラの町を歩くのにも目立って仕方のないセシリアは、女性陣に衞られその中心で歩くことになる。セシリア目的でやって来る男たちを女性陣が追い払ってくれる。

 それはすごく頼もしくていいのだが、中セシリア本人の心境はなんとも複雑だ。本当はもっと町をのんびり探索したい、なんて言える感じでもない雰囲気の中、エノアが一歩前に出る。


「セシリア様! わたくし、おわっ!?」


「はいはい、今聖女様はプライベートなんで、話しかけないでくださいねぇ」


 どこかの貴族っぽい男性がエノアによって排除される。さらに後ろから豪華な包みを手にした男性が急ぎ足でやってくるが、声を上げる前にカメリアが仁王立ちで立ち塞がる


「姫への直接手渡しのプレゼントは禁止されていますのでー、ギルドへ行って聖女様プレゼント受付の窓口にて正式な手続きをしてくださいねー」


「だ、だけどそれじゃあ聖女様のもとに届かないって」


「検疫を行い問題がなければちゃんと届きます!」


「でも、検疫終わるの数か月はかかるって聞いたぞ。これ食べ物だから早く渡したいんだけど」


「食べ物は原則禁止です! ちゃんとルールをよく読んでください!!」


 カメリアに怒られ涙目で帰って行く男性。


 やって来るのは男性だけではなく、多くの女性が手紙や花を持って突撃してくる。そんな彼女らをラベリとリュイがシャーシャーと威嚇して追い払う。


「なんか大変だな」


「人間ってよく分からない」


「だよな」


 セシリアの両隣を歩くペティとミモルの会話を聞きながら、セシリアはこの二人が一番まともなのではないかと思ってたりする。


 アメリーとファラ、ノルンはなんだか気が合ったようで三人で仲良く話しながらセシリアの後ろをついてくる。


「へー、人間の恋愛ってそんな感じなんだぁ。すごいねノルン」


「ん、びっくり」


「そうそう、他には年下の男の子がお姉さんに魅了されて、メロメロになっちゃうんだけど、そのお姉さんが別の男にねと……」


 セシリアがアメリーの肩を掴んで、会話を遮る。


「アメリー、変なことを教えるのはやめようか」


 セシリアに睨まれ、コクコクとアメリーは無言で首を縦に振る。


「アメリー、私、その薄い本読みたい」


「私も私も! 遊戯語(ゆうぎご)は姫に読んでもらえばいいんだよね。今度四人で朗読会しよっ!」


 空気を読まずにノルンとファラが間に割って入ってきて、アメリーが必死に首を振って「それ以上言わないで」と目で訴えかける。


「アメリー……全部没収して処分してもいいんだよ」


「そ、それだけは……勘弁して……」


「ファラとノルンに間違った知識を教えたらダメだから」


「う、はい……ごめんなさい」


 もとより本気で処分する気はないセシリアは、謝るアメリーに微笑んで許す。そのとき周囲が騒がしくなる。

 声がする方にセシリアが目を向けると赤い鎧を装備した男が向かって来るのが見える。


「おい、あれは五大冒険者第一位の……」

「ああ間違いない猛炎(もうえん)のフェルナンドだ!!」


 道の真ん中を堂々と歩いてくる男が無精ひげの生える口元をニンマリさせ向かってくる。


「おい、あっちは! 五大冒険者第二位、剣聖(けんせい)のグンナーだ!」


 横から現れた、グンナーがフェルナンドの隣を歩き始める。


「おいおい、あっちは第三位の流水のジョセフじゃねえか」

「あっちは第……五位だったっけ? 穿孔(せんこう)のロックだぜ!」


 フェルナンドとグンナーの両サイドから現れたジョセフとロックが横に並ぶ。


「おい、あれはだれだ?」

「なんで上半身裸なんだ?」

「変態か?」


 まだ知名度の低い五大冒険者第四位のミルコが上半身裸で現れ、四人の前に立って歩き始める。

 横並びだった四人が、自分たちを差し置いて前を歩くミルコを見て怒りを露わにし、足を速め追い越すと五人が横にいる相手と体をぶつけ合いながら、小走りでセシリアの方へと向かってくる。


「おい、てめえ! 止まれ」

「断る!」

「おいこら! グンナーのおっさん、しれっと先に行くな」

「こら、引っ張るな!」

「お前服着ろよ!」


 もみくちゃになりながら、いがみ合い向かってくる五大冒険者に威厳はなく、周囲の視線は冷ややかである。だが、そんなことは気にもしない五人は我先にと、セシリアのもとへたどり着く。


 ぜえぜえと息を切らせながら一塊になった全員が一斉にセシリアの方を向く。


「「「セシリア!」」」

「「セシリア様!」」


 五人が一斉にセシリアの名前を呼ぶと、それぞれが睨み合い、「俺がさきだ」「お前は黙っていろ」と争い始める。


「なにをやっているんですか、あなたたちは……」


 セシリアは額を手で押さえ、ため息混じりに呆れた声を出す。すると、もみくちゃの団子になったままの五人が一斉に喋り始める。


「この戦いが終わった━━」

「私と一緒に━━」

「俺と━━」

「これからの人生━━」


 などなど見た目も一塊なら、好き勝手に喋る言葉もぐちゃぐちゃに絡まってなにを言っているのか分からないほど。だが━━


「「「「「結婚してほしい‼」」」」」


 最後の言葉だけがピッタリ重なる。公衆の面前でよくそんな恥ずかしいことを言えるものだと、ドン引きするセシリアだが、血走った目で『結婚』の答えを待つ五人の圧に後ずさりしてしまう。


 周囲の好奇心に満ちた目を全方向から受け、逃げ場がないことを悟ったセシリアが大きく息を吸って、五人を見るとゆっくりと口を開く。


「お断りします」


 周囲がセシリアの発言に注目し町中が静かになっていたのもあって、ゆっくりと丁寧、そしてシンプルなセシリアの発した言葉はよく響いた。固まる五人とセシリアの写真を撮るために集まっていた記者たちが、一斉にシャッターをきる。


『聖女様 五大冒険者の求婚をまとめてお断り』


 なんて記事が夕方には号外として町中に配られ、「どんな刃物よりも鋭いお言葉」「聖女セシリア様の心を射止めるのはだれなのか?」「これはある意味我々にもチャンスがあるということではないか!」などの内容が世間を賑わせることになる。


 ***


 固まった五人の写真を見ながらセシリアは(よく撮れてる……なんだか可哀そうだけど求婚なんて受けれるわけないし)と思いながら紅茶に口をつける。


『だって、男の娘だもの』


「ぶふっ!」


 突然頭に響く聖剣シャルルの声に紅茶を噴き出したセシリアを、影から出てきたアトラがハンカチを取り出しセシリアの口を拭う。


『セシリアがどんな相手と結婚するか、楽しみなようで不安なようで』


「少なくとも今のままでは誰とも結婚しません! そういえば、前々から思っていたけどシャルルってどの立ち位置なの?」


『立ち位置とは?』


「グランツやアトラとは違って、結婚とか求めてこないよね。どっちかというと……変態なお父さんか変態なお兄ちゃん的な立ち位置だなって。または変態な世話焼き好きの近所のおじさん」


『全部に()()がつくのは非常に気になるが、そうだな、お父さんポジションは魅力的だが、もっと男の娘を広めたい我としては、プロヂューサーもありか……ふむふむ』


「ああもう、なに言ってるか分からないから、()()でいいよ」


 雑に立ち位置を決められて、ショックを受ける聖剣シャルルに、セシリアがそっと手を置くと微笑む。そんなセシリアの両脇にアトラとグランツが寄りかかる。


「正直、なんでこんな格好してて、聖女とか呼ばれて今ここにいるのか意味分からないよ。分からないけど、聖女じゃなければ、ここまでこれなかった」


 セシリアは三人を順に見て笑みを浮かべる。


「それにシャルルとグランツ、アトラの三人に出会わなかったら、魔族ひいては魔物も含めて皆と共存できる方法を探そうなんて思わなかったよ。だから……ありがとう……うん、」


 恥ずかしがりがら言うセシリアにグランツとアトラが抱きつき、聖剣シャルルがベッド僅かに跳ねる。


「それで、魔王の件がひと段落したら、前に言った通り三人と旅に出てみようかなと思うんだけど、どうかな?」


『我はずっとセシリアの剣として側にいる』

『どこまでも一緒にお供します』

「もちろん、わらわは一緒に行くのじゃ」


 三人の返事を聞いたセシリアは満面の笑みを浮かべる。


「それでさ、サトゥルノ大陸だと私のことみんな知ってるから、別の大陸に行ってなんてのも楽しいかなって」


 語り出すセシリアに三人の微笑んで「うん、うん」と頷く。


「別の大陸に行ったら、私のことを聖女だからって今みたいにチヤホヤされたり、助けてくれないと思うけど、それもまたいいかなって思うんだ。うまく言えないけど、一からスタートして冒険してるって感じだし」


 セシリアの言葉に三人が「うん、うん?」と頷く。


「セシリアってだけで、通じない世界は辛いけどやりがいもあると思うんだ。なによりも男の娘じゃなくていいし」


『え?』

『え?』

「え?」


「え? ってえ?」


 さっきまで「うん、うん」と微笑ましく頷いていた三人が急に真顔になってセシリアを見る。想像していた反応と違ったセシリアは、驚き聞き返してしまう。


『無理だな』

『ええ、無理です』

「無理なのじゃ」


「ごめん、無理って……どういうこと?」


 ()()の意味が分からないセシリアは、恐る恐る尋ねる。するとニョロリとその場を離れ戻って来たアトラがセシリアに新聞を渡す。


「新聞? 先日の五大冒険者とのやり取りの記事だけどこれが?」


 アトラが記事の後半の部分を指さすので、セシリアは指先を辿って文字を目で追っていく。


「……五大冒険者だけでなく、多くの貴族、王族の誘いを断る聖女セシリアの動向にはここ、サトゥルノ大陸を超え各大陸の国々も注目……して……おり……デェーゼル大陸のシムン王国……エリアル王子が興味を示しているという噂もあり……今後動きが活発化する気配を……」


 セシリアは読み進めて震え始めた手で揺れる新聞から目を離して、三人を見ると三人は満面の笑みで見つめ返しくる。


『男の娘、世界デビューおめでとう』

『これからも世界に羽ばたきましょう。男の娘は永遠です!』

「男女問わず世界を股にかけ魅了する男の娘の嫁として、わらわも鼻が高いのじゃ」


「こんな世界デビューやだぁーっ! これが終わったら男の娘やめれるって、ちょっぴり期待してたのにぃ~」


 悲しみにくれるセシリアを三人は「うん、うん」と頷きながら「男の娘、一緒に頑張ろう」と励ますのだった。

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