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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
北の大地に光を

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第217話 知略と脚力がものを言う

 グレジルから南下し、ヴェルグラへと向かうセシリアたち。これと同時にプレーヌ側からも混合軍が北上しており、南北から同時に四方向にある要塞都市を攻め落とすことになる。


 当初の計画よりも多くの人数を集められたことにより、懸念されていたヴェルグラの隣国であるバニアージュ、ボノムからの魔族の増援に警戒に当たる軍を配置することもできた。


「今回の作戦、聖女セシリア様を守りきれば我々の勝利だ! 魔族を倒す必要はなく、要塞都市から魔族を出さなければいい。だが、やるからには要塞都市を落としてやるぐらいの気持ちは持て!」


 各隊で行われる出陣式で、どの隊長も言う言葉。「聖女セシリア様を守れば勝ち」このいたって分かりやすくシンプルな目標と、ここまで聖女セシリアの活躍で、サトゥルノ大陸の北側の半分が正常に戻った実績から兵たちの士気は高い。


 それに加え、先日のグレジルの町で起きた『聖女の奇跡』と呼ばれるヴィレーニアの花びらが町中を舞う奇跡を目の当たりしたことで、聖女セシリアの力を実感し、勝利を誰もが信じている状況である。


 その奇跡にあやかろうと多くの兵が思い思いの場所にヴィレーニアの花を飾る。また軍全体としても士気を高める意味で、各拠点にヴィレーニアの花を飾り、紫の綺麗な花が決戦目前の息苦しい空気に、癒しをもたらしてくれる。


「私たちは予定通り聖女セシリア様が、じきじきに向かうと宣言した上で、王都ヴェルグラへ進軍いたします。魔族も私たちの生命線が、聖女セシリア様であることは理解しているはずですから、本丸もヴェルグラ周辺に出現すると予想できます」


「魔族の本丸、つまりは三天皇、もしくは魔王本人が私を狙ってやってくるというわけですね」


「その可能性が高いと踏んでおります。この戦い言ってしまえば、聖女セシリア様を押えることができれば勝ちであります。自ら進軍すると宣言すれば、相手も無視はできないはずです。一つ欠点があるとすれば、攻撃が集中することで、万が一聖女セシリア様を失うようなことになれば私たちは、全滅です。なんとも情けない話ではありますが」


 申し訳なさそうに言うランドルトに、セシリアは微笑みながら首を横に振る。


「いいえ、私に魔族の狙いが集中するのであれば、戦場での流れを支配しやすくなりますし、なによりも皆さんが狙われないことは喜ばしいことだと思います」


「なんとお優しいお言葉。戦場にて聖女セシリア様を守るため、皆が一丸になって動くのも納得です。そうそう、一丸と言えば聖女セシリア様のお使いになる『姫プレイ』なる兵法ですが……」


 突然ランドルトの口から『姫プレイ』の単語が出てきて、セシリアは目を大きく開き驚く。さらにランドルトが机の上の書物から、なにやら探し、ある書物を引っ張り出すとセシリアに表紙を見せる。


 まだ表紙の綺麗な新品らしき書物には『世界の兵法全集 新』と書いてある。


「聖女セシリア様のご提案なさった兵法『姫プレイ』は、軍事指南書に新たに書き加えられ、今サトゥルノ大陸中に広がっている最中です。これまでも大将を守りながら戦闘を行う戦法はありましたが、『姫プレイ』は大将を守る精神はもちろん、大将も守ってくれる兵に慈愛を与える。さらに、圧倒的一撃の信頼感があってこそ成り立つ兵法ゆえ、聖女セシリア様以外は使えません。ですが、後世に伝えるべき戦法だと、私は思います」


 そんな恥ずかしい兵法を後世に伝えないでほしいと言いたい気持ちを我慢して、セシリアは『世界の兵法全集 新』なる本を見ながら唇をきゅっと結ぶ。


「おぉ、そうです! 『姫プレイ』と言えば大切なことがありました。戦いの場において、聖女セシリア様のことを『姫』と呼ぶのですよね。我が国ネーヴェは戦場で、聖女セシリア様のことを『姫』と呼ぶように通達しておりますから安心してください。バッチリです」


 大切なことを思い出したと言うランドルトに「なにがバッチリだよ」とか言いたい気持ちも呑み込んだセシリアは、目の前で新たな兵法書を見るランドルトに「お気遣いありがとうございます」とお礼を述べるのである。


「いいえ、これくらいお礼を言われるほどのことではありません。当然のことをしたまでです」


 お礼に対して謙遜しながらも、いい仕事をしたと満足気な顔で言うランドルトに対してセシリアは(聖女って辛い……)そんなことを思うのである。


 ***


「姫、ユヌにおいて魔族との戦闘に入ったとの報告が入りました。順次各都市で戦闘に入ると思われます。」


 伝令の兵がセシリアが待機する野営にて、報告を終えると、セシリアはお礼を述べる。

 顔がニヤケるのを必死に我慢して、嬉しそうに去っていく伝令兵を見送ったセシリアにランドルトが話しかける。


「ここから相手がどう出るかですね。私たちは予定通り王都ヴェルグラに向けて進むといたしましょう」


 ランドルトの言葉を受け、セシリアをはじめ皆が立ち上がったとき別の伝令兵が飛び込んでくる。


「お伝えいたします。敵の大将と思われる全身鎧の騎士が、同じく全身鎧の馬に乗って出現いたしました!」


「なんと! 予想よりも遥かに早いがこのまま私たちがヴェルグラへ向った場合、どれくらいで接触する?」


 慌てるランドルトの質問に伝令兵は、ひざまずいたまま言葉を続ける。


「鎧の騎士は真っ直ぐ南東、トローの方へ向かって走っているとのことです」


「トローヘ真っ直ぐにだと!? 王都ヴェルグラから遠ざかっているじゃないか」


「姫の位置が分からず、あちらも探しているという可能性はないでしょうか?」


「王都ヴェルグラへ姫が直接向かうと、宣戦布告している……それを疑い別の場所へ向った……その可能性もあり得るのか」


 聖剣シャルルと会話を終えたセシリアが、自分の横で呟くランドルトに声をかける。


「私ではなく。皆さんを狙っている。そうは考えれませんか?」


「皆を? 兵を狙い攻撃したところで、姫を討たぬ限りこの戦いに勝利……」


 そこまで言ったランドルトが、ハッとした顔で地図のもとへ走りヴェルグラと四つの要塞都市を物差しで測る。


「お尋ねしますが、姫が単騎で飛んだとして、ここより一番近いドオへはどれぐらいで到着できますでしょうか?」


「そうですね、あまり長距離は飛べないので、休みを入れると一時間程度といったところでしょうか」


 セシリアの答えを聞いたランドルトは、腕を組み考え込む。


「これは、魔族側は私たちを狙い。姫をおびき寄せるのが狙いなのかもしれません。王都も含め五つに分かれた軍を狙い、救助に姫、単騎で向かわせる。つまり護衛もつけずに向かわざるを得ない状況にするということ」


 ランドルトの説明を聞きながらセシリアが、光になったグランツを取り込むと背中から翼を生やす。


「ランドルトさん、速いと言っても私が飛べる距離には限りがあります。各方面に馬を配置して、羽休めの時間の間も移動できるようにしてもらえませんか? リュイはひとまず私とトローへ向かってくれる? ペティたちはここで待機して、ワイキュルをいつでも走れるようにお願い。ジョセフさんとニクラスさんはヴェルグラへ進行し、移動の経由地確保をお願いします」


 セシリアの指示に皆がテキパキと動き始める。そんな様子を見たランドルトが感心したように頷くと、自身も軍の配置を決めるため、地図を見て急ぎ思考を巡らせる。


 ***


 要塞都市トロー。各要塞都市は大きな防衛壁に囲まれ、尚且つ砲台を設置し高所から攻撃するという、攻防一体な体制をもって敵を圧倒する。

 侵入しようにも高い防衛壁に加え、二つしかない入り口は鉄壁を誇る分厚い鉄の門で塞がれ入る隙間もない。


「この鉄壁の要塞を落とすのは骨が折れる。だが、あいつらを外に出さないというのであれば、逆に簡単なことだよな」


 トローを攻めていた兵たちは、スケルトンが放つ矢や、大砲に気をつけながら距離をとって攻撃を繰り出す。

 防衛壁の外に現れた数体のゴーレムやスケルトンから逃げつつ、魔族たちの気を引く兵たちは、慎重にトローの周りを囲み魔族の流出を阻止する戦いを行う。

 鉄壁の防衛壁を落とす必要はない。逆に要塞の内側に、こもってもらうことこそが、作戦成功の近道となる。


「ん?」


 数人の兵がさっきまで自分たちを追いかけていたスケルトンたちが、ぴたっと走るのを止めるのを見て自分たちも止まる。棒立ちになったスケルトンたちに違和感を感じたとき、馬のいななきが響く。


 ただそれは普通の馬とは違い、金属が擦れるような甲高さを含んだいななき。地面を叩く音は鉄の蹄、そしてその鉄でできた鎧馬、グラニーに乗るオルダーが剣を抜くと、遠く離れた場所から剣を振り下ろす。


 振り下ろした際に発生した小さな斬撃が、人間の兵たちが集まる場所へと飛んでいき、丁度真ん中あたりに到達したときオルダーが手に持つ剣に力を込める。


 その瞬間、飛んでいった斬撃が空間を切り裂き、空中に生まれた空間『虚空』がそこにあった空気を追い出し、そこを中心に周囲へ向かって暴風が吹き荒れる。


 突然起きた暴風に巻き込まれ飛んでいき、木や石、地面に叩きつけられる者たちや、飛ばされないと必死に耐える者もいる。


 そして突如、暴風がやみ。さっきまで吹き荒れていたのが嘘のように静寂が訪れる。

 突然の静寂に人間たちが力を抜いたとき、今度は虚空が起こった地点に空気が戻りはじめ人間たちは吸い寄せられていく。


 吸い寄せられ兵たち同士がぶつかり、もみくちゃにされ、気絶した者たちが次々に地面に倒れていく。


 一瞬で数十名もの兵を無力化したオルダーは、離れていた場所で見ていたスケルトンたちに、兵たちをまとめて縛るように指示し次の場所へ目指し走り始める。


「……聖女よ。お前の強さの本質は多くの人間を統率できる力。ならばその力を削ってくれよう。そして人間ども、今は生かしておいてやる。だからその目でお前たちの希望である聖女セシリアが討たれ、散りゆく様を目に焼き付けるといい!! 我らが魔王様に歯向かう愚かさを心に刻め!!」


 オルダーが声を上げると、鎧馬のグラニーがいななき、彼らが過ぎ去ったあとには、無力化された兵たちの山が積み上げられていく。

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