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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
北の大地に光を

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第209話 劫火に包まれて

 先に動いたのはリュイの方。素早く踏み込んでから短剣を振るが、メッルウはいとも簡単にそれを炎の短剣で受けて弾いてみせる。


 弾かれて逆手に持っていた短剣を回転させ持ち変えると、一回転しながら斬りかかるがそれもまた受け止められて弾かれる。

 それでもなお回転し、もう一方の短剣を投げつつ斬りかかるが、どちらもメッルウにあっさりと弾かれてしまう。


 一本になった短剣を持って、大きく後ろに下がったリュイを見て口角を上げニンマリと笑ったメッルウが、翼を広げ手に持っていた短剣を伸ばし通常の剣の長さに変えたものを振りかざし向かって来る。


 リュイが持っていた短剣でなにもない空間を切ると、くるくるとなにかを巻き取るようなしぐさをして向かって来るメッルウの右側へと投げる。


 その行動の意味に気がついたメッルウが翼を大きく広げ急ブレーキをかけるが、素早く弓に持ち変えたリュイが横に回り込みながら矢を放つ。


 矢はメッルウに当たることなく横切り背後へと抜けるが、構わずさらに回り込みながら斜め上に放つ矢がメッルウの肩の上を抜ける。


「お、お願いします!」


 リュイの呼びかけに戻ってきたニクラスとジョセフがそれぞれの武器でなにもない空間を切っていく。正確には二人は無数に張られたペティの魔力の糸を切っている。

 ジョセフたちに切られ、空中に浮遊するペティたちが張った糸をリュイが矢に絡めながらメッルウ目掛け次々と矢を放っていく。


 メッルウを中心に円を描き走るリュイをさらに囲むように現れたファラたちが、リュイに矢を渡しながらそれとは別に走るペティと新たな糸を張って行く。


 メッルウを中心にして形成されていく蜘蛛の巣に、段々と行き場を失い歯ぎしりをするメッルウが、少し離れた場所で力を溜めているセシリアの姿に気がつく。


「ちぃっ!? やっぱりコレか。忌々しい人間どもがぁ!! こんなベトベトの糸ごときであたしをどうにかできると思うな!!」


 糸に絡まれながら怒鳴るメッルウがセシリアをにらむ。


「ベトベトと言えば、前に会ったときを思い出しますね」


「はんっ! 思い出したくもないね。あのときはしばらくビーナの蜜で髪の毛がキシキシになったんだからね。思い出したらイライラしてきじゃないか」


 魔力を溜めて輝きを増す聖剣シャルルを構えたセシリアと、糸に絡まれながらも言い返すメッルウが目を合わせた瞬間セシリアが聖剣シャルルを振りかざす。


「あたしを誰だと思っている。劫火の名は伊達じゃないんでねぇ!!」


 放たれた魔力の斬撃に向かって怒鳴るメッルウの体が炎に包まれると、中心に赤い光が一気に集まりそして弾ける。


 爆風と呼ぶにふさわしい熱風は周囲にいた人たちを巻き込んで吹き飛ばしていく。そして炎が木々を燃やしながら渦を巻き天に昇る。


 吹き飛ばされたリュイが、頭を押えながら体を起こし燃え上がる炎を見てすぐにあわてて周囲を見渡す。


「セ、セシリア様は!?」


 近くにいたペティやニクラスも周囲を見渡し、燃え上がる炎の柱の勢いと放つ熱、一瞬で燃やされ消し炭になった木と黒く焼けた土。その悲惨な光景を目の当たりにして思わず喉を鳴らし唾を飲み込む。



 ***



 真っ赤に燃える炎の柱のなかは空洞があり、その中心にセシリアとメッルウが立っていた。


 メッルウの体には炎が鎧の形を形成し燃え盛っている。炎の鎧に炎の武器、まさに攻防一体となったメッルウの姿をセシリアは警戒しながら観察する。


「これでサシで勝負できるってわけだ」


「本気……と言うことですか」


 炎に囲まれた熱さのせいもあって、額に汗をかくセシリアが緊張した面持ちで聖剣シャルルを握る。


「聖女セシリア、お前は確かに強い。魔力もあたしらよりも上だし、放つ一撃は強力で致命傷になるのは間違いない。それになによりも、聖女セシリアを『姫』と呼び命懸けで守る統率力が恐ろしい。

 だが、オルダーも言っていたがお前自身の戦闘の技量はあたしらよりもやや劣る。つまりお前の一撃に気をつけ周囲の取り巻きを切り離したとき、あたしらに勝機が見えるということだ」


 手に持つ剣の炎の勢いを増しながら両手に持つメッルウはニンマリと笑う。


「ご丁寧な説明ありがとうございます。でも、メッルウさんの性格的に閉じ込めてすぐに私に向かって来るのかと思いましたが、やけに口が回るのはなんなのでしょうか?」


「なにが言いたい」


 尖った歯をむき出し、さらに鋭くした目でにらむメッルウにセシリアが微笑む。


「恐れてませんか? 私の本質に」


「お前の本質だ? 意味が分からんな」


 周囲の取り巻きを切り離し、自身の得意とする炎のなかに閉じ込めたと言うのに不敵な笑みを浮かべるセシリアに、メッルウ自身は熱くないはずなのに、なぜか汗が伝うのを感じてしまう。

 それを振り払うかの如く、メッルウが翼を広げると炎の光による赤い軌跡を引きながらセシリアに突撃し斬りかかる。


 おなじく翼を広げたセシリアが聖剣シャルルでメッルウの炎の剣を受けて流すと、反撃に転じる。


 互いが飛びながら打ち合う剣と剣のぶつかり合いは、地上だけでなく空中にも及び、ぶつかる度に生まれる紫と赤の光は、周囲を囲う炎の光に負けない一瞬の輝きを生み出しながら散っていく。


 メッルウの振るった炎の剣を弾くと、斧に姿を変え戻って来る。質量を上げ勢い増した斧を受け止めたセシリアは、聖剣シャルルごと強引に振り抜かれ空中でよろけてしまう。


 バランスを崩したセシリア目掛け、メッルウの背後に生み出された炎の球が次々に飛んで襲い掛かる。


 セシリアに着弾し炎と煙を上げながら爆発する場所目掛け、メッルウが炎の槍を投げる。

 煙がもうもうと立ち込めるなか紫の光が走ると、一瞬で煙を散らし現れたセシリアが飛んできた槍を聖剣シャルルで弾く。


「その光の壁は連続では使えまい!」


 爆発と槍の連続攻撃のなかで一気に間合いを詰めたメッルウが剣を振りかざし、セシリア目掛け振り下ろす。


 だがメッルウは空中で止まる。いや、正しくは振り下ろそうとするが手が前に進まないのである。


「なんだこれは!?」


 セシリアを追い込みあと一歩でトドメと言うところで、動けなくなったメッルウが焦りを含んだ声を上げる。


「私の本質……聖女だから光を操っているんだとか思っていませんか?」


「な、なにが……言いたい」


 微笑むセシリアに言いようの無い恐れを感じたメッルウが聞き返したとき、自身の両手に黒い影が巻き付く。


「ま、まさかお前……」


「魔王と同じ闇……正確には光も闇も両方使えます」


 ニヤリと笑みを浮かべるセシリアがメッルウを指さす。


「そして私は決して一人にはならないんですよ。そう絶対に!」


 セシリアの言葉に反応するかのごとく影がメッルウに巻き付いていく。

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