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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
北の大地に光を

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第200話 聖女奇襲!?

 空は分厚い雲で覆われ、月明かりもない暗い夜。ファーゴ城にある井戸を塞ぐ鉄の蓋がゆっくりとズレると、少し間を置いて手が出て来くる。手が鉄の蓋を掴み慎重に開けるとリュイが顔を出す。


 辺りを見渡し安全を確認したリュイが外に出て、周囲を確認したのち井戸のなかを覗くと手招きをして合図を送る。


 セシリア、ペティの順で姿を現し最後にジョセフが姿を現す。


 無言で手招きして先導するリュイについて、セシリアたちは難なく城のなかへと侵入することに成功する。



 ***



 二人のリザードマンが槍を肩に抱えて城の廊下歩く。


 一人が大きなあくびをすると、もう一人もつられて大きなアクビをする。人間と違い大きな口を持つリザードマンのあくびはとても大きく人の頭を丸のみできそうなほどである。

 大きな口でする迫力満点なあくびは手で押さえ隠せるものではないのに、手を口元にかざすのは人間とリザードマンの意外な共通点かもしれない。


「ん?」


「どうしたぁ?」


 先にアクビをした方が下を向いて、自分の足を確認するのをもう一人がアクビ混じりに尋ねる。


「いや、なんか足の裏がベトベトする」


「虫でも踏んだんだろう」


「げっ、それは最悪だぜ。それにしてもこの虫、凄くベトベトするんだけどなんて虫なんだ?」


 足の裏で糸を引くのを見て嫌そうに言った瞬間、リザードマンの頭が大きく揺れると白目になってゆっくりと倒れてしまう。


「はっ?」


 なにが起きたか意味も分からないままもう一人も同僚の足に視線を向けた状態で、白目を向くとゆっくり床に倒れてしまう。


 二人が倒れた後ろに、片手でごめんねと謝るセシリアの姿が現れる。


 続いて現れたリュイとジョセフがリザードマンの二人をロープで縛り、四人で引きずって近くの部屋に入れて閉じ込める。


 そのドアの前でリュイが見取り図を広げ、無言で指を指して現在地を示す。そこから指でなぞりこれから進むルートをセシリアたちと確認する。


 みんな頷いたのを確認したのち、リュイの先導で城の上を目指し進んでいくセシリアたちの前に、吹き抜けの大広間が現れる。


 下や上の階にリザードマンやゴブリン、スケルトンなどの見張りが歩いているのが見える。


 このまま進めば、見つかってしまうのは確実な状況である。


 リュイはついて来てとジェスチャーし、セシリアたちを誘導すると吹き抜けの外側の廊下に沿って進み、ある部屋の前に立ちドアに耳をつけ、なかに誰もいないのを確認しするとドアノブをそっと回す。


 だが、ドアは開かず予定と違ったのか、目を少し大きく開いて驚くリュイが鍵穴を覗いて悔しそうに首を横に振る。


 そんなリュイの肩をセシリアが叩いてドアノブを握るので、リュイが横に移動しセシリアにドアの正面を譲る。


 目をつぶって集中する振りをするセシリアの影が伸び、そっと下の隙間から入ると裏から鍵を外してしまう。


『開いたのじゃ』


 声は聞こえないのに小声でささやくアトラの声を合図に、セシリアはゆっくりとドアノブを回しドアを開ける。


 目の前で起きた奇跡に目を丸くして驚くリュイに、ペティが無言で両手を上げてスゲーッと口をパクパクさせて伝えてくる。その後ろではセシリア様なら当然だと澄ました顔のジョセフが大きく頷く。


 セシリアが照れながら開けたドアを抜けた部屋は、入るとすぐに壁沿いに急勾配な階段が斜めに走っているのが目に入ってくる。


「ここから上の階に行けます。各階に階段のある部屋が隠されているのでそこを利用して玉座の間に向かいます」


 小声で説明するリュイにみなが頷き階段を上っていく。


 各階にある階段が隠された部屋を使いながら最上階へとたどり着いたセシリアたちは大きな扉が見える場所まで近づく。


 廊下の角から覗き玉座の間の扉を守る二人のオークを視界に収めつつ、セシリアたちは準備を進める。


 セシリアが窓際に立ち鞘に納めたままの聖剣シャルルの先を窓に付けると、紫の光を先端に宿す。



 ***



「えーっと、トン、ぴかぁー、トン、トン……開始の方ね。さすが姫、上手くいったんだ」


 城の外、南側にいてワイキュルのヌクロンに乗ったファラが城の最上階でまたたく光を見あげ、口を開け首でリズムを取って信号を読むと笑顔で後ろを振り返る。


「ってことでみなさーん! うちの姫から合図がきたので準備してくださいね!!」


 ファラの呼びかけに後ろに並んで座っていた、ファーゴの住人や冒険者、兵たちが立ち上がり松明に火をつけていく。


「みんな準備できたかなぁ? じゃあ、思いっきり騒いじゃいましょう!!」


 拳を上げて(あお)るファラに、みなが松明を掲げて大きな声を上げる。


 ファラと時を同じくして、東西にそれぞれ待機していたカメリアとノルンの率いる集団も松明を掲げ、雄叫びを上げるとファーゴ城の周囲を囲み騒ぎ始める。


 突然城の周囲を囲む無数の炎の出現に、周囲を警備していた魔族の兵たちが慌てて集まり始める。


「なにをしているお前たち! って火を投げるとか正気か? 自分たちの国の城を燃やす気か?」


「そのまさかさ! おまえらに支配された城など燃えてなくなった方がマシだ!」


 松明を数人が投げおちょくった口調で(あお)ってくるのに対して、キレ気味でゴブリンたちが武器を構えると、カメリアが乗ったヴクレが走ってきて、強烈な蹴りを入れゴブリンをひっくり返して地面に転がす。


「はいはい、みなさーん。熱くなり過ぎなーい。逃げますよー逃げてー」


 カメリアの呼びかけに松明を持った人々が蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


 逃げる人たちを追い掛けるゴブリンやリザードマンたちに冒険者や兵が一斉に襲い掛かる。だが数回攻防を繰り返すと、彼らも身を引き後退していく。


 ファラとカメリアによって徐々に城から離されていく魔族たちだが、それには気づかずにちょっかいを掛けては逃げる人間たちを、むきになって追いかけてしまう。



 ***



 城壁をエクールで走りながら鉄の棒で叩いていたノルンを追い掛けるのは、巨体のゴーレム二体。


「私、ハズレっぽい」


 ちょっぴり涙目で、エクールを走らせながらゴーレムを引きつけるノルンはぼやく。一応冒険者たちが矢を放ったり、石を投げたりするがビクともしないゴーレムを前にノルンと同じく逃げまとうことになるが、こちらも作戦通り魔族たちを引きつけることに成功する。


 そして城の北側に控えるニクラスと数人の冒険者と兵はファーゴにおける精鋭たち。


 セシリアからの信号は見えない位置にいるがファラたちが騒ぎ、城だけでなく町全体が騒がしくなったのを感じて、警備が薄くなった北側から侵入する。


「よいか、敵陣にて暴れるわしらは命の危険が伴う。無理だと感じたら引くのだぞ。セシリア様は人が傷つくのを嫌う。命を賭けてなんてことを口にしたら悲しむお方だからの。逃げることを恥と思うでない、セシリア様は無事でよかったと喜んでくれる。なによりも生きて帰ることが優先じゃ」


 ニクラスの言葉を精鋭たちは真剣な表情で聞く。


「わしらが手柄を立てるのではない。セシリア様の成果こそわしらの手柄なのだから、そこを間違えるでないぞ。では、人間の意地とやらを魔族どもに見せて一泡吹かせてやろうかの」


 ニクラスが両手に斧を持つと、精鋭たちも自分の武器を手に持つ。


「それじゃあ、いくぞぉぉ!!」


 ニクラスが雄叫びを上げ一階の窓を派手にぶち破り侵入すると、外の喧騒を確認しようと城内を走っていたリザードマンに斧を振り下ろし吹き飛ばす。


「さぁーくるがいい魔族どもよ! 元とはいえ五大冒険者の名を持っておったニクラス・ ヴレトブラッドをなめるでないぞ!!」


 次々と窓や扉を破って現れる精鋭部隊に城内も騒がしくなり、ニクラスたちが派手に暴れる一階に城にいる魔族たちが集まり始める。

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