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姫プレイ聖女~冒険者に憧れた少年は聖女となり姫プレイするのです~  作者: 功野 涼し
封剣カシェと使い手の思い

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第193話 封剣カシェ

 有事に備えて、他のワイキュルたちに乗ったジョセフたちを待機させ、セシリアが乗ったクリールをペティが慎重に進める。


 進んで近づいて行くと段々とハッキリしてくるシルエットは、間違いなく剣であることを確信させカシェであるかもしれないことに期待すると同時に、なぜここに刺さっているのかと言う疑問からくる不安に駆られ、セシリアの胸の鼓動は早くなってしまう。


 クリールに乗ったままセシリアが近付き上からのぞくと、池の真ん中に刺さっている剣は、持ち手と僅かな刀身を地表に出しあとは地面に沈んでいる。


 地面からポコポコと時々空気の泡と砂を巻き上げながら湧く水の中心に刺さっている剣の持ち手は、コケが生え僅かにもとの青い部分が覗いている。

 刀身は聖剣シャルルのような輝きはなく、コケが生えているだけでなく所々サビまで浮いている。


『セシリア、我を隣に置いてカシェと思われる剣を抜いてみてもらえるか?』


 聖剣シャルルの声に従い、セシリアはクリールの背中から降りる。その着地をアトラがサポートし、水でセシリアの足が濡れないように影で周囲の水を押しのける。


 ゆっくりとカシェらしき剣の周りを歩きながら観察したあと、聖剣シャルルを重ねるように置き、膝を曲げ前かがみになったセシリアが恐る恐る手を伸ばし持ち手に触れる。


 なにも起きないことが分かると持ち手を両手で握って、地面から引き抜こうとする。


「だめ、ピクリとも動かない」


『ふむ……カシェで間違いはないが、もう魂はないようだ』


「それってつまり……」


『人で言うところの死だな。我々ラプトワルも条件があれば死が訪れるということか……。それにしてもなにゆえここに刺さって、なにをしたのかと言うことなのだが……』


 それだけ言うと黙ってしまう聖剣シャルルに声を掛けづらく、セシリアも口を閉じて聖剣シャルルが話し出すのをじっと待つ。


『ただの剣になってなおも微かに漂う魔力の残滓(ざんし)は、とてつもない魔力を使用した跡。声も届かない今となっては周囲から情報を得る他あるまい』


 いつものように、どこかふざけた明るい物言いと違い、少し重い聖剣シャルルの声にセシリアは黙って頷くとペティたちに声を掛ける。


「周囲になにかないか探してほしいんだけど、文字とか絵とか手がかりになりそうなものならなんでもいいんだ。お願いできる?」


 セシリアたちはカシェを中心に散って、周囲を捜索し始める。


「姫、ここ」


 程なくしてノルンが手を上げてセシリアを呼ぶ声が聞こえて、みんなが集まる。


 そしてノルンの指さす先には、木にめり込んだ石があった。


『石の近くに芽吹いた木が石を巻き込んで成長したと言ったところか。この木の樹齢は分からないが、長い年月が経っているのは間違いないな』


 木の幹の一部になった石にはコケが生えて見ずらいが、僅かに無数の傷がありそれらは文字のようにも見える。

 セシリアがコケを払おうとすると、ニクラスが代わりにやると言って丁寧にコケを落とし水に浸した布で拭き上げる。


「ノルン、よくこんな小さいの見つけたな。それにしてもこの文字っぽいヤツ……どっかで見た気がするぜ」


 ペティが腕を組んで首を捻ると、隣にいたカメリアが手をパンと叩く。


「総長あれじゃない? 絵がいっぱい描いてあった本にたまに書いてある文字!」


「おぉ~それだ! たしかに言われてみたら見覚えあるぜ。セシリアはこれが読めるのか?」


 石に触れるセシリアが聖剣シャルルを立てながら頷くと、石の前にしゃがむ。


「ここにて全てを封じる。私とカシェで。それが最後にできること。せめてもの罪滅ぼし……一……花……さ……ここから文字が消えてて読めない」


 聖剣シャルルの声に続いてセシリアが、石に彫られている遊戯語(ゆうぎご)を読み上げていく。


『罪滅ぼしとは……カシェとミホは、一体なにを見たのだ』


「ミホって、エルフのアンメール女王のところに来てしばらく滞在したあと、レシフ島にカシェと共に行くって言った人だよね?」


『ああ、カシェの契約者である遊戯人(ゆうぎびと)白砂美帆(しろすなみほ)だ。ペティほど口は悪くないが、雰囲気は似ている娘だ』


「なるほど、だからアンメール女王がミホさんのことをよく覚えているわけだね。納得」


『ふっ、違いないな』


 セシリアの言葉に聖剣シャルルの声が少しだけ軽くなる。それを感じ取ってかセシリアはゆっくりと立ちあがる。


「ミホさんとカシェがなにをしたかは分からないけど、全て封じるとあるわけだからフォルータへの大きな手掛かりと思っていいんじゃないかな」


 セシリアは地面に立てていた聖剣シャルルを抱えると、いつものように両手で抱きしめる。


「私一人じゃ抜けないけど、魔王なら抜けるかもしれない。それがカシェを抜く方法かは分からないけど、フォルータの手がかりを探している魔王をここに連れてくることは間違いじゃないはず。

 だったらやるべきことは、魔王を説得してここに連れてくるってことでいいんじゃないかな」


 セシリアの言葉に聖剣シャルルが刀身を優しく鳴らす。


「ここで今できることは終わりました。私が次にすべきことは魔王をここに連れてくることです。そのために、次に魔王と出会ったとき決着をつけます」


 丁寧な喋りをするセシリアの宣言に、魔王の存在を知るジョセフとニクラスは険しい表情を見せ、まだ魔族を知らないリュイやペティたちも雰囲気を感じ取ったのか緊張した面持ちになる。


「クラーケン討伐のときもそうですが、私はみんなの助けがなければ戦えません。頼りない聖女や姫で申し訳ないですけど、助けてもらえると嬉しいです」


 セシリアの発言に、隣にいたリュイが無言でセシリアの手を握って頷くと二人の手の上からペティが手を重ねる。


「セシリアにはまだまだ色んなところを案内してもらわねえといけねえし、魔王ってヤツを黙らせるのが先ってなら手伝うのは当たり前だろ」


 少し恥ずかしそうに言うペティの顔を見てセシリアが笑みを見せると、ペティも笑う。


「そうそう、姫は私らのチームのトップなんだから」


「手伝うのはとうぜんよねー」


「私も、やる」


 ペティに続いてファラたち三人も思いを口にしながら手を重ねる。


「みんなありがとう」


 嬉しそうに笑うセシリアにみんなが笑って答える。そんな姿を離れて見るジョセフの隣にニクラスが並ぶ。


「わしらがしっかりせんとな。頼ってばかりじゃ、いけんじゃろうて」


「ええ、セシリア様の負担を少しでも軽くしなければなりませんね」


 みなに囲まれ、セシリアは魔王との決着に向け決意を新たにするのだった。

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