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第147話 セシリア様ファンクラブ第一条……みんなで仲良く協力すること!

 セシリアの身長は一六◯センチ程度。ラファーが肩の高さいわゆる体高で二メートル。ピエトラがトサカまで含め三メートル。

 そして全長だと十五メートルはあるが、体を地面に付け起こしている高さが約七メートルのウーファー。最後に八メートル程度のフレイムドラゴンのフォスだが、尻尾と翼のせいで実際の身長よりも大きく見える。


 これらの巨大な魔物と竜族が戦う様は、とても人が近付ける状況ではない。


 だがそこに堂々と向かって歩いて行くのはこの戦場で一番小さなセシリアである。


 セシリアの指示で小隊を作り各地に散った兵や冒険者たちが見守るのはもちろん、メッルウたち魔族もセシリアの動向に注目し。ラフアーたち、そしてフォスもぶつかり合いながらセシリアの存在を気に掛ける。


 いち早く動いたラフアーがセシリアの横に駆け寄ると頭を下げ、セシリアは頭を撫で角に触れる。


「私のファンクラブ五号のピエトラさん、そして六号のウーファーさん。この戦い、そのたもろもろの私のファンの方々とともに協力して戦ってもらえませんか」


 ラフアーのスキル『対話』を使用してセシリアがピエトラとウーファーに声を掛ける。

 セシリアの声を聞いたピエトラとウーファーがセシリアの後方に見える人間と魔族をチラッと見る。


『セシリアはいつも人を沢山率いてるけど、ファンクラブのメンバーなんだ。へー沢山いるねぇ。凄い、うん、凄い』


『魔ーぞくーもーファンクラブー、入ったーんだー』


 それぞれの声が頭に響いたセシリアは頷き、そして微笑む。


「会員ナンバーが付いている二人には、まだナンバーもない後輩たちの手助けをして欲しいのです。彼らは二人に比べ非力ではありますが、とても器用でこの戦いを有利に進めてくれること間違いありません」


 セシリアの声にピエトラが蹴りを一つフォスに喰らわせるとセシリアのもとに駆け寄ってくる。ピエトラは羽をバサバサさせ、尻尾の蛇をパタパタ振ってその落ち着きのない動きで頭のとさかをユサユサと動かす。


『いいよ、いいよ。僕は先輩だからね。先輩は後輩に見本を見せて手伝ってやるんだよ。知ってる、うん、知ってる』


「ありがとうございます。ピエトラさんには岩の生成、そして人が作った道具の起動をメインでお願いします。細かくは戦いながら説明していきますのでまずは人がいる場所に岩を作ってください。ドラゴンと戦いながらになりますがお願いします」


『うん、任せて、任せて!』


 ピエトラが何やら作業する小隊の一つに向かって走って行く。それを見送ったセシリアが、ラフアーにまたがりフォスとぶつかり合うウーファーのもとへ近づく。

 素早くとぐろを巻き、それを解いた勢いでフォスを尻尾で払い後方へ下げたタイミングで近づくと、ウーファーは口から長い舌をチロチロさせつつ目をセシリアに向けてくる。


『セシリアー、いいよー。わしーも手伝うー。川べーで人げーんがー色々なのー作っていくのー見るの好きーだからー。しかもーわしーは、先ぱーいだからー』


「ありがとうございますウーファーさん。ドラゴンと戦いつつ地面に矢が刺さった場所に穴を掘って欲しいんです。それと、ウーファーさんも人間の作る道具の説明をしますから使ってもらうかもしれません。細かいことはまた説明します、ウーファーさんにはドラゴンとメインで戦ってもらうことになりますがお願いします」


『いいよー。わしーファンクラブー六ごー、同じーファンクラブーのヤツらーを、手伝うのー当たりまえー』


「頼りにしてます!」


 笑顔で答えるセシリアを見て、目をやんわりと細くしたウーファーが、体を地面につけ猛スピードで這ってフォスへと向かうと頭突きを喰らわせる。


 それを背にして走り去るラファーに乗ったセシリアがため息をつく。


「自分で『私のファンクラブ』や『私のファン』とか言うの恥ずかしいんだけど」


『なにを言うかファンクラブ一号の我はちょっぴり照れながら言うセシリアの姿にキュンとしたぞ』


 聖剣シャルルがカタカタっと刀身を鳴らす。


『ファンクラブ二号の私も沢山の後輩の見本となるべく精進します』


 セシリアの背中の翼が僅かに開いて感慨深そうに語る。


『ファンクラブ三号のわらわはセシリアのために尽くすのじゃ。そして添い遂げるのじゃ』


 ラファーの上に乗ったセシリアの影が勝手に手を振ってアピールしてくる。


『男の娘の魅力を教えられ、四号となった俺もセシリアお嬢さんのためならどこへでも駆けつけ、全身全霊で力を捧げよう』


 自分のファンクラブだとか言うのが恥ずかしいと言ったのに、なぜかファンクラブ一号から四号の思いの丈を述べられ、益々恥ずかしくなったセシリアは頬を赤らめながら顔を逸らし呟く。


「ありがと」


 セシリアが恥ずかしそうにポツリとお礼を言う。


『おいみんな見たか? 今のセシリアの言い方可愛くなかったか?』


『ええ、なんだか違う魅力を感じました!』


『可愛いのじゃ! 可愛いのじゃ!』


『はぁーはぁー、男の娘やばい……』


「ああぁ~!! もう~うるさい、うるさーい!!」


 ファンクラブ一号から四号の反応に、顔をぶんぶん横に振って恥ずかしがるセシリアに四人はさらにワイワイと喜びの声を上げる。


「なんなのだお前は……凄く楽しそうだな」


 セシリアの隣に飛んできたメッルウが怪訝(けげん)そうな表情でセシリアを見る。頭のなかは騒がしいが、周りから見れば一人で恥ずかしがって怒っている変な人に見えることに気づいたセシリアが顔を真っ赤にしてメッルウを見つめ返す。


「わ、私のために頑張ってくれる人たちの思いが嬉しくて……そのちょっとテンションが上がってはしゃいだと言いますか……」


「あ、ああ……そうなのか」


 怪訝(けげん)な表情から一転、今度は気の毒そうに見てくるメッルウに恥ずかしさが増したセシリアは顔逸らしつつ尋ねる。


「メ、メッルウさん、なにか用事があるのではないですか?」


「あ、ま、まあ……そのなんだ」


 セシリアに尋ねられメッルウも顔を逸らし恥ずかしそうに頬を指で掻きながら口ごもる。


 お互い恥ずかしそうに下を向きつつ、時々チラチラと上目遣いで目を合わせる二人の姿に萌える聖剣シャルルたち四人は目を細め動向を見守る。


「えっと……」


「そのなんだ……」


 セシリアとメッルウが同時に呟き、そして同時に顔を上げる。


「メッルウさん、一緒に協力してもらえませんか?」

「て、手伝ってやってもいい。だ、だけど今回だけだぞ! 勘違いするな」


 そして同時に声を上げる。


 目を丸くして見つめ合う二人の間にしばらく沈黙が流れる。そしてセシリアが目を輝かせぱあっと明るい表情を見せつつ手をパンと叩く。


「ありがとうございます!」


 満面の笑みを向けられ尖った耳まで真っ赤にしたメッルウが、首をぶんぶんと横に振るとセシリアを指差す。


「だ、だから今回だけだ。それにな、ドラゴンを静まらせたあと、あたしはもう一度ドラゴンと交渉する! つまりはこれはあたしに有利に事を進めるための作戦でもあるのだ! だ、だからお前を利用してるだけだ! 後で後悔するといい!」


「ええ、この戦いが終わったら交渉しても構いませんよ。ドラゴンがメッルウさんに協力するのも本人の意志なのですから私は邪魔しません。ではそれまで、一緒に頑張りましょう!」


「がっ……あ、ああ。わ、分かった」


 セシリアの純粋な笑顔を向けられたメッルウが自分の胸を押えながら頷く。


(な、なんなのだこいつは……目が合った瞬間あたしの心臓が跳ねてしまったぞ。とてつもない圧を掛けて来たと言うのか……油断ならんな聖女セシリア)


 なんだか顔が熱く、いつもより鼓動が速くなりドキドキする胸をバシバシと叩いたメッルウは、セシリアから作戦の説明を受ける。

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