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第117話 太陽の光を求める者たち

 チョマーに案内され着いた場所は地下に広がる洞窟でもわりと広く、数人の男が迎えてくれ奥へ行くとさらに数人の男女が姿を見せる。


「改めて紹介させていただきます、我々はユーリス王のご子息の一人であられるルーティア王子の側近どもです」


「その王子の側近がなぜこんな場所にいるのです?」


「それはルーティア王子が王位継承順位一位であること関係があります。本来であれば現王妃との間に生まれたルーティア王子がいずれは王となるのですが、新しく迎えた側室との間にできた子フィ王子を継がせるためにルーティア王子がユーリス王の命を狙ったと罪をでっち上げラビリント牢獄へ幽閉されてしまったのです。

 その際周囲の者たちも謀反の罪を問われ捕られてしまいまして、我々はなんとか逃げ延びて今に至ると言うわけです」


 チョマーの説明を聞く周囲の人たちもそのときのことを思い出したのか、悲痛な表情を見せる。


「ルーティア王子が王位継承順位一位なら別に王の命を狙わなくても、いずれ王になるのですから嘘だと公言したら信じてもらえないのですか?」


 セシリアの質問にチョマ―はゆっくりと首を横に振る。


「強硬な政治を行うユーリス王に対し、政治は国民のためにするべきだと日頃から主張するルーティア王子ですから国民も分かってはいるとは思います。

 ただ、ユーリス王に逆らえば捕らえられるかもしれないと言う恐怖から声を大にしては言えないのです」


 悔しそうに言うチョマーはセシリアの前にひざまずき両手を組んで仰ぎ見る。


()()ね聖女セシリア様の噂は聞いております。多くの人だけでなく国や教会までをも救ったと言う話は正直半信半疑なところもありましたが、お会いして確信しました。どうか聖女セシリア様、ユーリス王を討ち、この国が真の光で照らされるよう我らに力を貸していただけないでしょうか」


 チョマーに続き周りの者たちもひざまずきセシリアに懇願してくる。


「あなた方がルーティア王子の無実を勝ち取るためにユーリス王を亡き者にし、ルーティア王を誕生させようとしていることであると解釈して構いませんか?」


 セシリアの問いにチョマーが無言で頷く。


「だとすれば私はクーデターに協力する気はありません。あくまでも魔王を討つのが私の使命ですから」


 チョマーたちは肩を落とし落胆した様子でセシリアの言葉を黙って聞く。


「ただ、ラビリント牢獄には用事がありますし、ルーティア王子を開放しユーリス王と二人が対話する機会を作れればいいかなとは思います」


「お言葉ですが、そのようことが可能なのでしょうか?」


「どうでしょう? ですが私とユーリス王が話をする機会を得るために動いています。そこでの話次第とはなりますがユーリス王子との話をする場を設けるようにはしますので、今後を私に委ねてもらえませんか?」


 チョマーは口をつぐんで黙ってセシリアを見つめる。その目はゆらぎ、様々な思考を巡らせ心が揺れているのを映し出す。


「私がこの国に来て困っているときに助けて頂きできた縁です。クーデターを起こせば双方に犠牲が出るのは避けられないでしょう。チョマーさんたちが傷つくことは私は望んでいません」


「分かり……ました」


 絞り出すようにチョマーが声を出すと周囲の人たちから驚きの声が上がる。それを制するように右手を広げると、ひざまずいた姿勢を正し改めてセシリアを見つめる。


「ユーリス王を討ちたいとは考えてはいましたが、正直なところ同士も思うように集まらず言われなき罪で裁かれるくらいなら相打ち覚悟も視野に入れておりました。ここで聖女セシリア様に出会えたのも何かの縁です。私たちの運命を託させていただきます」


 チョマーが頭を下げると周囲の人たちも続き頭を下げる。



 ***



 チョマーに王都の外へ出る道を案内される道中、ラベリがセシリアに小声で話し掛けてくる。


「セシリア様、なぜユーリス王を討たないんです? 話を聞く限り悪いヤツじゃないですか?」


「う~ん、まあフェルナンドさんたちを牢獄送りにして、私たちを閉じ込める時点でいい人ではないんだろうけど、片方だけの話を聞いて判断をするべきではないと思うんだよね。まして、命が掛かっているならなおさらね」


「ユーリス王と話してみて人となりを見極めるってこと?」


 セシリアとラベリの会話にアメリーが割って入って来る。


「見極めるとか大層なものじゃないけど、ユーリス王の言い分もあるだろうし一応聞かないとね。そもそも私たちは部外者なんだし、アイガイオン王国の名前も背負ってるわけだから気軽に悪い王様を討つぞ~! とするわけにはいかないでしょ」


 そう言ってセシリアは聖剣シャルルを見つめ呟く。


「ってシャルルのアドバイスだけど、私もそう思うな」


 聖剣シャルルに微笑み掛けるセシリアの横では、手を組み尊敬の眼差しをラベリが惜しみなく送る。


「さすがです。私なんか歯向かう奴らは聖剣でバシーってやっちゃえばいいのにって思ってましたもの」


「そうそう、なんならお城ごと真っ二つにしてしまえばいいかなって。んでぇ、もう国ごと制圧してセシリア王国にしちゃうの」


「それはある意味平和的解決かもしれませんね!」


「でしょ、でしょ!」


「あ、うん、そんなこと出来ないしする気もないよ。二人とも割と過激だね……」


 盛り上がる二人にセシリアはやや引き気味に感想を述べる。


「そう言えばさきほどユーリス王との対話のため動いているといいましたけど、前に出した手紙が関係あるのですか?」


「うん、トリクル女王様にちょっとお願いをね。多分うまくやってくれるはずだよ」


 そう言って笑顔を見せるセシリアにラベリとアメリーが同時に手を叩き目を輝かせる。


「一国の女王にお願いして動かせるセシリア様ってすごいです!」


「そもそも、会話することも普通は難しいのに個人で手紙を送れるのが凄いのよ」


 きゃきゃとセシリアを褒め称える二人に苦笑いしつつたじろぎながら、セシリアは首を横に振る。


「そんなことないよ。この世界にどれだけ聖女って呼ばれる人がいるかは知らないけど、私ほど他人に頼ってばかりの聖女はいないと思うけど」


「凄いのにそれを自慢しないのが素敵です!」


「そうやってまた謙遜しちゃうんだから~」


 なにを言っても褒められるのでセシリアは苦笑いをしつつ、早く外へ出たいなと思うのである。

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