死神のダウジング
探偵は、証拠をあつめて答えを探す。
占い師は、答えを知って、証拠を探す。
僕は占い師。
だから、もう僕は、答えを知っていた。
土曜日、僕と乃愛は高木先生の通う大学に向かっていた。
「手繋いでいい?」
「いいけど、どうしたんだよ」
「だってほら、もう凪流とデートするのも最後かもしれないし」
「大丈夫だよ。乃愛。乃愛は死なないし、もう誰も死んだりしないから」
「でも、凪流。ならどうしてそんなにつらそうなの」
「それは……ちょっと疲れがたまってるだけだよ。大丈夫だから」
乃愛はきっと僕のために手をつないでくれたのだろう。
気持ちがすっと落ち着くようだった。
「勝手に入って大丈夫なの?」
乃愛は大学の敷地に入ると心配そうに聞いてきた。
「一応、峰矢さんにきいたんだけど、大きな大学だから、食堂とかは一般の人も使えるらしいし、建屋に入らなければ大丈夫らしいよ。オープンキャンパスとかもいろんな学部でやってるらしいから建屋もまあ、堂々としてれば大丈夫だって、本当にはいっちゃダメなところはカードキーがないと入れないらしいから」
僕は事前に峰矢さんに確認しておいた。
峰矢さんが通う医学部は別のキャンパスらしい。
僕らは教育学部があるキャンパスに来ていた。
「高木先生のことどんどん聞き込みしていけばいいのね?」
「そんなこと僕がするわけないよね」
僕はタロットカードを出した。
「それはそうね」
乃愛が頷く。
僕は、ワンオラクルする。
女教皇のカードだった。
「確か意味は、真実を見抜く確かさだったわね」
乃愛もずっと僕に付き合ってくれたおかげで、随分意味を覚えたらしい。
「よし、麦わら帽子にワンピースを着た女の人に声かけてみよう」
「いやなんでそのカードからそうなるの」
乃愛が不思議そうな顔をする。
「人探ししてて、女教皇だから、まあ、女の人で、高貴そうな人かなって、大学生だからお嬢様みたいな人かなぁと、頭に浮かんだラッキーアイテムは麦わら帽子だった」
「もうタロットカードの意味関係ないわね」
「タロットカードを引いてるのは、僕なんだから、僕がどう思うかだけだよ」
死神のカードもそうだ。
普通だったら、死なんて意味を読み取らない。
僕がそう感じる。
ただそれだけ。
「究極、意味なんか知らなくても、タロット占いはできるよ。複雑なスプレッドもあるけど、ワンオラクルなら一枚めくるだけだし」
「タロットカードなんてみんな持ってないわよ」
「僕は母さんにもらったいいやつ使っているけど、適当に絵描いて、めくればいいよ」
「そんなんでいいの?」
「いいんだよ。カードをめくって、いいカードが出たら、今日はちょっといい日かもしれないってうきうきした気分になればいいし、悪いカードなら、ちょっと悪いことがおきないように気を付けてみようかなって思えるだけでいいんだよ」
本来の占いは、毎日にちょっとだけ彩をあたえるような感じでいい。
悲しい気持ちになるような占いは、本来ダメなんだ。
わかってるんだ。自分でも。
「とにかく、麦わら帽子の白いワンピースの女の人よね。そんな人いるかしら……っているわね」
ちょうど向こうから、僕が占った通りの人が歩いてくる。
「すみません。ちょっといいですか」
乃愛が声をかける。
「どうしました?」
テニスラケットを楽しそうに持った女の人は立ち止まってくれた。
「高木先生って知りませんか。あ、高木先生っていうのは、私たちの学校に来ている教育実習の先生なんですけど」
「えっ。高木君のこと」
「知ってるんですか?」
「知ってるもなにも高木君の彼女だよ」
大学生のお姉さんはにこにこ答えてくれた。
「偶然ですね」
占いがうまくいったようだ。
「ここの大学入学に興味があって、学校じゃあまり聞けないから、話聞きたいと思ったんですよ」
僕は、それっぽい理由を話した。
実際は、僕は就職組、乃愛も専門学校希望なので、全然興味ない。
「そっかあ、そうなんだ。なら連絡取ってあげるよ」
「本当ですか?」
「ふふふ、本当はね。教育実習中は、教育実習に集中したいから電話しないでって言ってたんだけど」
「ちなみに最後に連絡とったのいつですか?」
「昨日も寝る前にとったよ。メールでだけど。電話はおこっちゃうかなぁ。でも生徒が尋ねて来たのなら今日は仕方ないよね。電話かけてみようっと」
高木先生の彼女は嬉しそうに言った。
高木先生の彼女は島崎未由というらしい。
島崎さんは、さっそく携帯電話を取り出して、電話をかけてくれる。
「うーん。でないなぁ。教育実習で疲れているのかな」
「毎日レポート書かないといけないんですよね」
「うん。そうみたいね。大変だよねぇ。あ、そうだ。折角だから高木君の家行ってみようか。高木君の生徒が行きたいなら仕方ないよね」
どうやら、島崎さんが随分と高木先生の家に行きたいらしい。
占いしなくてもわかる。
そう顔に書いてある。
「場所わかるんですか?」
「もちろん。彼女だもん。ほら見て」
鍵を見せてくれる。
「合い鍵も持ってるよ」
「そうなんですね。お願いします。ちなみに高木先生の家遠いですか?」
「ううん。そんなことないよ。近くにアパート借りて通ってるよ」
「そう……ですか」
「どうかしたの、凪流?」
「ううん。なんでもないよ」
僕らは島崎さんに案内されて、高木先生の家に向かう。
「高木君、いいなぁ。もう夢かなえちゃって」
「夢って先生になることですか」
「先生になるってよりも、生徒に慕われるのが夢だった見たい。高木君、県外生なんだけど、高校はやんちゃしてて、定時制の学校に通ってたらしいの。その時の先生がよかったみたいで先生になりたくなって、大学入ったって言ってた」
そういえば、普通は教育実習、自分の学校に通うはずなのに、高木先生は卒業生じゃないとかいう話を聞いた。
定時制の学校だったら、普通の教育実習の受け入れをできなかったのかもしれない。
「学校で高木君どんな感じだった?」
「高木先生、イケメンよね」
乃愛が言う。枕詞に『髪を切ったら』をつけるの忘れている。
「うんうん。高木君かっこいいよね」
島崎さんは嬉しそうにうなずいた。
彼女だし、当然そうだろう。
僕はそう思わなかったが、感じ方は人それぞれだろう。
島崎さんと話しながら歩いていると、高木先生のアパートはすぐ着いた。
ちょっと年季が入っていそうだったけど、普通のアパートだった。
島崎さんは、一番手前の部屋のチャイムを押す。
ピンポーンと音はなるものの、特に物音とかはしない。
「あれ。出かけてるのかな。それなら電話出てくれそうだけど。寝てるのかなぁ」
島崎さんはさっき見せてくれた合鍵を取り出して、扉を開ける。
「高木くーん。いる?」
声をかけながら、家の中に入っていくので、僕もあとに続いた。
「ちょっと凪流、勝手に」
乃愛が静止しようとするが、僕は気にしなかった。
乃愛も仕方なしに僕に続く。
家の中はきれいだった。
時が止まっているかのようだった。
シンクに水滴一つついてない。
まるでしばらく主が戻ってきていないようで……。
1Kのアパートはかくれんぼできるほどの広さもない。
ベットの布団はたたまれたままだ。
僕はなにかないかと周りを見渡すと、
棚の上に飾ってあった写真を見つけた。
「嘘でしょ」
乃愛が、驚きの声をあげている。
僕は、占いの結果が当たってしまい悲しくなった。
僕は島崎さんに質問する。
「この写真に写っているひとが高木先生ですか?」
「もちろん。そうよ。あなた達も知ってるよね」
写真には、島崎さんと一緒に僕らの知らない人物が写っていた。




