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第四十八話 幼馴染と買い物

 部活が終わった後、俺とあきらは二人で自宅付近のスーパーにいた。

 買い物かごを持つ俺の横で、野菜を吟味している幼馴染。


 今は無数に並ぶきゅうりを眺めている。

 何か違いがあるのだろうか。

 俺にはさっぱりだ。

 右曲がり左曲がり、太い奴細い奴、長い奴短い奴。

 個体差はあるが味なんてどれも変わらないと思う。


 ようやく選び抜かれた立派なきゅうりが、俺の持つ買い物かごをまた少し重くした。


「ごめんね付き合わせちゃって」

「俺の家の食材だろ? むしろ礼を言いたいくらいだよ」

「いやいや。私も食べてるから」


 二人の食費はうちが負担しているが、外で食べるのに比べると格段に安く済むため、特に気にしていない。

 そもそもあきらの労力を考えると、給料を渡す必要があるくらいだ。

 加えてあきらの両親にもよくしてもらっているし、至れり尽くせりである。


「来週末の合宿、よかったの?」

「まぁみんな乗り気だったし。あそこで水を差すほど野暮じゃない」


 話し合いの末、来週末はうちで泊まることになった。

 両親がいないのと、単純に広いのが理由だ。


 と、あきらは少し眉を寄せて聞いてくる。


「女の子いっぱい泊められるからって、変なこと考えてない?」

「騒がないで欲しいな、汚さないで欲しいな、と思ってる」

「いつも通りだね」


 朝野先輩を除く四人の女子高生を家に泊める。

 冷静に考えるととんでもないことだが、特に浮足立ちはしない。

 だってこいつらだぞ?

 それこそ部活の延長線上に過ぎない。


「庭のゴールを用意しておくか。家でも練習させよう」

「……鬼だね」

「あと布団の洗濯して、全体的に家の掃除もしておかないとな」

「柊喜も乗り気じゃん」

「……確かに」


 言っていて、自分でも思った。

 なんでこんなに動く気力が湧くんだろう。

 あぁ、これが浮足立ってるって事なのか。


 実際仲間と合宿なんて中学ぶりだもんな。

 修学旅行感もある。


「ってか、みんなに私が泊まってるって言ってよかったの?」

「それは……あんまり深く考えてなかった」

「一応男女だし、変に誤解されちゃっても知らないよ?」


 苦笑しながら言われ、俺も曖昧な顔を返した。


「付き合ってるとか言われてしまったもんな」

「姫希、今日ずっと私の事見てた」

「あいつは俺に対する警戒心が強いから」

「……それだけじゃない気がするけど」

「ん?」

「いや、なんでもないっ。……あ、今日は餃子を作りたかったんだ! 皮はどこかなー?」

「挽肉コーナーじゃないか?」

「うん。そうだねっ」


 謎テンションのあきらが右往左往する。

 おかしな奴だ。


 歩きながら俺はふと思い、尋ねた。


「お前は嫌じゃないのか? 俺と付き合ってると思われるの」

「え? 別に」


 あまりにもあっさりとした返答に面食らった。


「幼馴染なのに?」

「幼馴染だからだよ。どう思われようが私達はそういう関係には絶対にならない。その事実を理解してるからなーんにも」

「そういうもんか?」

「そういうもんっ。あ、皮見っけ」


 呑気に餃子の皮をかごに入れてくるあきらを見ていると、なんだか笑みが零れてきた。

 そうだよな。


「それに柊喜の事は好きだからさ」

「……照れもせずによく言うぜ」

「あれ? 柊喜顔赤いけどどうしたの?」

「うるさい」


 こいつは高校生になってもずっと素直だ。

 話しているとこっちが恥ずかしくなってくる。

 だけど、嬉しいのは事実なのが厄介なところである。


「来週末もお前が料理作ってくれるのか?」

「どうだろ。唯葉ちゃん以外は料理できるし、三人で作るかも」

「……待てよ? 姫希がいるのか。食費は払ってもらわねえと」

「女の子四人がお風呂入るし、水道代もかかるね」

「……全員の頭をバリカンで刈り取っていいか?」

「私達が目指すのはインターハイであって甲子園じゃないのを忘れないでね、コーチさん」


 なかなか面白い返しをするじゃないか。

 ただまぁ、ノリで許可したが意外と泊りって金かかるなぁ。


 ……彼女に貢ぎまくるよりはマシだが。


「でも、もしかしたらすずも来るんじゃない?」

「五人目か」


 再び出てきた名前に俺は考える。

 交友関係が狭いため、顔と名前が一致しない。


「とりあえず部活に来てもらわないとな」

「それはそうだねっ」


 黒森鈴。

 彼女は一体どんな人なんだろう。

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