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派遣の忍者『月光』  作者: ヒロっぴ
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時を越えた影






≪天下泰平≫







『おい、堪介(かんすけ)。本当に俺達には、この修業の成果を試す時が来るのか?』




『分からねぇ。

…だが、そのうち又(いくさ)は起こる。その時は、我ら甲賀一族、影の力が必要となってくる。』







彼らは今、総勢29名の仲間と共に、ここ奥秩父の雪原を走り抜けている。



徳川政権になってから世は安泰。



彼ら(しのび)による影の力は必要とされなくなっていった。




『本当に戦は起こるんだろうか。

俺はどうも起こらないように思えてならねぇ。』




『馬鹿を言うな。それでは、次の戦に備えてこうして修業をしている俺達はどうなる。』


『それは…』


『次なる戦の第一線に出るべく、我ら精鋭29名がこうして日夜腕を研いているのではないか。』




彼ら平均17歳にも満たない若手の(しのび)は、こうして次の戦力になるべく半年程前から諸国の山々を渡って修業の旅に出ている。


勿論、表に出る事は許されない。


しかし、甲賀の里を離れて修業の旅に出されるなど、彼らの力をすぐには必要としていない証でもあった。

それに気付かない堪介ではなかったが、それでもやはり忍として育ったからには、活躍の場へ出たかった。



堪介は同い年の平太と共に、新戦力の長として、修業の旅へ出されたのだが、


実際には彼らはもう一人前の忍者として通用する。



それを時期戦力などと言って修業の旅に出される等、暇をもらったも同然であった。




『なぁ堪介。いくら修業の旅とはいえ、俺達は忍具を何一つ持たされてはいないのだぞ。』



『それは…』




堪介は思わず足を止めてしまった。



彼らを筆頭として一時間余り雪原を走り続けていた一団は、それをきっかけに止まってしまう。



『それは、我らの忍術はすでに完成されているので、今は体力を付けろという、お頭のお言葉ではないか。』



『だがな堪介。俺達は体力でも誰に劣っているというのだ。


確かに、甲賀十忍にはかなわないかもしれないが、三年前の俺達ではないのだぞ。


忍具を持たされないという事は、非常召集はありえないという事なのだぞ。』




この一団の代表である二人が押し問答をしているので、下の者が心配になって歩みよってきた。





『どうなされたのですか?』


『もういいっ!』




堪介は答えを見つけられないまま、又走りだしてしまった。



後から追って走り出した平太(へいた)以下28名は、堪介に遅れまいと、必死に右へ左へ疾走する。



それでも、ペースを上げた堪介に着いていけるのは、上忍の十人だけであった。


堪介は、追い付いてきて隣に並んだ平太に、



『必ず我らの力を試せる時が来る。

それがたとえ戦でなくとも…』




そう言って雪原の端から次ぎなる雪原へ飛ぼうとした時、


彼らは訳も分からず、雪と共に奈落へと落ちていった…











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