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18 ジュリアス殿下

「救国の英雄、生ける知識の人にお会いできて光栄です」


 私は苦笑いを堪えて目の前で跪き、私の手を取るアグリア殿下の弟君、ジュリアス殿下を見ていた。


 アグリア殿下は片手で頭を押さえてその様を見ている。同じ赤髪だが、ジュリアス殿下は直毛を長く伸ばして一つに括り前に垂らしている。


 瞳も金色に近く、私を見る目は……こういってはなんだが、崇拝に近い。


 その彼が立ち上がるとアグリア殿下に食ってかかる。見た目とは裏腹に血気盛んなタイプなようだ。


「兄上! 何故婚姻しないのですか、兄上がそんな態度だからあちらも……」


「ジュリアス」


 陛下がさすがに苦笑してジュリアス殿下を止める。


 今回、フェイトナム帝国との会談のためにいち早く戻ってきた彼は、何より先に私に跪いて挨拶をし、家族とろくに会話もしていない。


 アグリア殿下は絶対に帰ってくると言っていたが、使節団が来るまであと1週間はある。


 騎士団長をめざしているのに大丈夫だろうか、と思ったが、彼はどうやら小麦アレルギーになった一人らしい。だから、私の危機(?)には絶対駆け付ける、という意味だったようだ。


 これでバルク卿(彼は元騎士団員で内政方面の才能もあった事から今は文官をしているらしい)と、現役の騎士団員のジュリアス殿下、メイドのメリッサ、グェンナ、ミリーの5人は最低でも護衛としてついてくれる。寝ている間もだ。


 アグリア殿下の剣の師匠はバルク卿らしい。アグリア殿下の腕前をバルク卿が太鼓判を押してくれたので、一番そばにいる人に守ってもらえるというのも心強い。


 私は、私を盾に祖国を脅した。それが手元に戻ってこないのなら、何が何でも私を殺したいだろう。いつ、その脅迫の内容が行使されるか分からないのだから。


 私は脅迫者であり、祖国に命を握られている人質だ。私は私のことを守れない。私が殺されれば、再度戦になり、その時私は死んでいるから無力だ。……ちょっとだけ、内緒で手は打ってあるけれど。


 その人質としての私をどう解放するか、それについて今日は話し合いをする。


 会談の進め方とも言える。あくまで向こうは『謝罪』をしに来るのであって、私を殺しに来るとは言っていない。誰がどう考えたって私を殺しに来るのだけれど。


 間者と思わしき人たちは軟禁生活を送っている。冤罪の可能性もあるので、完全に監禁するわけにも行かず、協力をお願いする形だ。


 皆、畏まりました、と王宮に与えられた部屋で静かに生活を送っている。王宮の最上階……5階の部屋で、兵士2人が1人の部屋の前で門番をしている。


 間者と思われる人たちは、親族が居らず、身元の保証が出来ない使用人だ。下働きは平民から雇い入れるのが祖国でも当たり前だったから変には思わない。


 私たちの身の回りの世話をする侍女や執事については、もちろん皆身元の保証が付いている。


 下働きは人手が足りなくて困っていたが、港町の商工会議所に相談をしたら大きな商会の身元のしっかりした下働きの人たちをこの期間だけ雇わせてくれた。


 コネは作っておくに越したことは無いな、と思う。


 そんなことを考えてる間にジュリアス殿下と陛下たち家族の近況報告と状況の共有が終わったようだ。


「私の命の恩人のクレア様をむざむざ危ない目に合わせたりはしません! さぁ、どうハメてやりましょうか!」


 ジュリアス殿下は間違いなく直情型で、ちょっと過激すぎる気がするが、ハメてやる、という考えは面白いなと思った。

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