3 補習とお願い
月曜日といえば、学生にとって憂鬱の種の一つかもしれない。水曜日との壮絶なバトルがあるだろうけど……僕には別の憂鬱があったりする。それは……
「ゆうく〜ん。ゆうくん、ゆうくん〜。すりすりぃ〜」
「こら、優香。ここは学校なんだからもう少し……って、おお、おはよう、レイ」
ガラガラ。無言で扉を閉めて回れ右をする。うん、やっぱり帰ろうと思ってその一歩を踏み出す前にバン!っとドアが開いてがっしりと肩を掴まれた。
「まあまあ、帰るなって。というか、毎回このやり取り飽きないのか?」
「いや、だって月曜日って昨日のデートの続きでイチャイチャが酷いし……何より、僕だけ独り身だからつい」
「レイくんおはー」
「はぁ……おはよう」
仕方なく教室に入る。疎らに人がいる中で、一際目立つ2人は残念ながら僕の友達……というか、親友だったりする。背が高く短い髪をオールバックにしてるイケメンが幼なじみであり、親友の原田悠斗。そしてそのイケメンに楽しそうにしがみつくポニーテールの女の子がその彼女であり、僕からしたらこちらも親友で幼なじみの皆川優香。2人とも愛すべき友人だが、一言言いたい。
「リア充爆発しろ」
「レイくんも彼女作ればいいのにー」
「だな」
そんなに簡単に出来る訳がないのを知らないのは、やっぱり美形な2人ならではだろう。くそぅ……モテたい……!
「うわ、レイくんまた悔しそうに泣いてる」
「言ってやるな優香。いや、でも中学の頃に一度告白された時には断ってたよな?」
「そういえばそうだねぇ」
「思い出させないでぇ……」
あれはね、告白に入らないんだよ。初めてのラブレターにワクワクしながら校舎裏に行ったら、僕の顔が女装向きだって告白をされて、その場で無理矢理脱がされて、危うくゴスロリを着させられるところだったんだよ……(ガタガタ)
「あれ、いつものやり取り終わったの?」
「うん、今日も相変わらずレイは面白いな」
そんな過去のトラウマにガクブルしていると、月曜日の憂鬱その二がおいでなすった。金髪のイケメンと茶髪のセミロングの美少女。イケメンの方は友人の田中大輔。そして美少女の方はその彼女の松原凛。こちらもリア充爆発しろな感じのカップルだったりする。
「おはよう、大輔、凛。部活は終わったの?」
「まあね。土日も部活あるから、やっぱり凛と長く居られる学校はいいな」
「ウチもそう思う」
こちらはこちらで2人とも部活に入ってるのだが……その分をここで発散するから更に糖分で死にそうです。
「凛ちゃん、やっほー」
「おはよう、優香。相変わらず悠斗とラブラブみたいだね」
「えへへ、まあねぇ」
……非常に辛い。なんかもう、異物感が半端ないのよね。仲良くしてる4人のうち全部がカップルって、普通にイチャイチャしはじめたら僕めっちゃ邪魔者じゃん。うん、やっぱり帰ろう。いや、決して授業が面倒だからとか、先生に会いたくないとかではないけどね。そろりそろりと扉の前まで移動しようとするが……その前に両手を男2人に掴まれた。
「まあまあ、帰ることないって」
「だね。ていうか、帰ったら今日の昼飯強奪出来ないから帰るなって」
うぅ……もはやイジメだよぅ……癒しをおくれぇ……。ていうか、大輔。頼むから僕の弁当箱を軽くするのに協力しないでおくれ。そんなことを思っていると、ふと思い出したように悠斗が聞いてきた。
「そういえば、レイ。なんか補習に出たって聞いたけど大丈夫?」
「ん?ああ、大丈夫。いつも通り先生に体罰受けてただけだから。あ、そうそう、可愛い女の子と友達になれたよ」
その言葉にピタリと4人の動きが止まった。Why??
「可愛い女の子って……レイくん、どんな子?」
「ウチらより可愛い?」
「え?正直に言っていいの?」
コクリと頷く女子2人を俺は信じてそのまま事実を告げた。
「その子の方が圧倒的に可愛い――ぐぼっ!」
前から優香の一撃、後ろから凛の一撃と衝撃が逃げる場所がなくてダメージがもろに来た。思わずその場に倒れると笑顔の2人が怖いオーラを出しながら言った。
「全く、レイくんはデリカシーないんだから……ねぇ」
「本当に……ねぇ」
彼氏2人はその迫力に頷く事しか出来てなかった。そうして暫くして僕が回復してから立ち上がってから、僕は続きを話すことにした。
「クラスメイトにさ、天使もえって子いるでしょ。その子」
「天使さん……確か不登校気味の子だよね?」
「めっちゃ、可愛くて優しい女の子だった。ただ、色々自信なさげだったけどね。良かったら2人も仲良くしてあげてよ」
「2人って……俺らはダメなのか?」
そう言われて僕もあれ?ってなった。何でだろ……何故か男子二人を省いてしまった。
「いや……ダメじゃないと思う?」
「珍しく疑問系だけど」
「なんでだろ……なんか、自然とそんな感じになる」
不思議そうな男子二人に大して、女子二人は何かを納得しているようだった。まあ、そんな感じで僕は天使さんの友達を増やすべく行動を開始するのだった。