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2 補習と友達1号

面白くなっておくれぇ(´·ω·`)(願望)


「――という訳で、この公式を使って解くことになる。んで――」


心地よい先生の授業という名のBGMを聞きながら何度か僕は視線を隣に向けていた。真剣な表情で先生の説明を聞く白髪の少女の横顔が凄く綺麗に思えたのだ。


「いて」

「こら、天使に見蕩れてないできちんと授業を受けろ」

「ふぇ?」


キョトンとしてから恥ずかしそうに視線を逸らす彼女。僕はたんこぶが出来るレベルの拳骨を受けながら不服な顔で言った。


「だって、見慣れた父さんの愛人より、可愛くて若いクラスメイトにときめくのは自然の――おごっ!」


顎を掴んで片手で持ち上げながら先生はニッコリと怖い笑みを浮かべて聞いてきた。


「おかしいな。顔は母親に似たのに言うことが父親似なのはこの口かな?」

「ず、ずびません……」

「全く……」


地面に下ろされて涙目で顎をさすっていると、天使さんが心配そうに聞いてきた。


「あの……大丈夫ですか?」

「え?ああ、うん。このくらいはね」

「天使。あんまりそいつに優しくすることないぞ。勝手に惚れられても面倒だろ」

「私なんか、誰も好きになってくれませんよ……」


やけに寂しそうにそう呟くので、僕はなんとなく首を傾げて言った。


「そう?天使さん可愛いし、モテると思うけどね」

「そんなこと……だって、私髪が真っ白で、目の色も変で、おまけに体も弱くて、ブサイクで……」

「んー、そう?綺麗な髪だと思うけどね」


正面から、天使さんを見ると、真っ白で綺麗な髪と青い瞳がなんとも鮮やかでとても可愛いと思った。そうして俺が正面からじっと見ると天使さんは徐々に顔を赤くしていって、俯いていく。そんなことをしていたら、べしっと先生に頭をハリセンで叩かれた。


「おい、セクハラやめろ」

「セクハラって、触ってませんよ。ていうか、そのハリセンどうしたんですか?普通に痛いんですが」

「お前が体罰体罰喧しいから、仕方なく用意したんだよ。本当は釘バット持ってきてたが……学年主任に没収された」


ナイス学年主任。いつもうざく思っててごめんと謝って感謝しつつ俺は天使さんに頭を下げて言った。


「ごめん、なんか綺麗でつい見ちゃって」

「……あの、村雨くん」

「ん?なに?」

「村雨くんは、その……気持ち悪くないの?」

「なにが?」

「私のこと……」


質問の意味が理解出来ずにクエスチョンマークを出していると、天使さんはぎゅっと、スカートを強く握って言った。


「私、こんな容姿だし、体も弱くて、学校行っても皆気味悪がって誰も友達になってくれなくて……」

「そっか。じゃあ、僕が友達1号ね」

「ふぇ?」


キョトンとする彼女に僕は同じくキョトンとして言った。


「え?だって、クラスメイトだし可愛いし友達にならない理由なくない?」

「えっと……いいんですか?」

「もちろん。僕、あんまり頭良くないけど、約束は守るからね」


そう微笑むと、彼女はポロリと涙を零した。え、あ、あれ……もしかして、僕、女の子泣かし――ふごっ!せ、先生!お願いだから無言でボディーブローしないでぇ……今朝食べたゼリーがこの場にご降臨なさりそうになるから……


「な、言った通りだろ。この馬鹿なら普通に受け入れるって」

「先生……」

「襲われそうになったらちゃんと言えば守るからな」

「おそわれる?」


ゴニョニョと先生が耳打ちをすると、途端に顔を赤くして慌て出す天使さん。なんか和むな……今まで周りには居なかったタイプだ。


「んで?今は補習の真っ最中なんだが……なあ、麗」

「なんですか、そんなに気持ち悪い笑み浮かべ――ふぉぉお!」


ギリギリっと、アイアンクローで俺の頭蓋を砕きにきながら、片手で僕をぶん回す先生。いつも通りの理不尽な体罰に耐えていると、先程まで涙を流していた天使さんが少しだけ笑ったような気がした。


まあ、それはそれとして、なんか年々先生の技術と力が向上してるような気が……思えばこの理不尽な暴力に晒されて早10年くらいか?5歳の頃に父さんが死んで、その直後から保護者っぽく振る舞うようになったんだよねぇ。あと、父さんの愛人と知ったのが、葬式の時だったかな。一瞬流しかけた涙が消えたのは今でも覚えてるね。


そんな感じで、俺と先生のいつものやり取り(クラスメイトいわく、コント)で大半の時間を使って補習所じゃなかったはずだけど……天使さんは少しだけ楽しそうだったので良かった。


うん、それはいいんだよ。でもさ……年々俺の体頑丈になってるのはこの仕打ちのせいじゃないと思いたいよね。




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