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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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たばこ

作者: 則巻苦喜

俺は殺し屋だ。


殺し屋と言えば?

ナイフ捌きがうまい?

銃を使う?

ニンジャのように隠れる?


どれも正解だが不正解でもある。

人の殺し方なんてのはそいつの流儀による。


俺の考える殺し屋は、みなタバコを吸う。ほかのやつの事?知ったこっちゃないね。あったこともないし。


俺が映画で見た殺し屋はタバコを吸っていた。70年代の暗い雰囲気の映画で、殺しの後にタバコを深く吸い込んで、哀悼の意なのか、落ち着くためなのか、みなそうやってタバコをふかしていた。その”間”がすごくかっこよく思え、俺も必ず殺しの後にはタバコを吸う。これが俺の殺し屋へのイメージであり、おれ自身だ。日本では、死体の前でタバコを吸うのをセンコウって言うんだろ。昔、ゴクドウから教わったぜ。


だが、殺し屋はもう廃業寸前だ。

国際警察に追われてるのかって?

あんなやつらのことはどうだっていい。

殺す相手がいなくなっちまったんだよ。

世界中でなぞの疫病がはやって、世界の人口が十分の一になっちまって、それ以来殺しの依頼がめっきり減った。そうさ、人同士の争いなんて、人がいっぱいいて、その数だけ暇なやつがいっぱいいただけの話よ。


そして、疫病の蔓延とともに、殺し屋でも恐れる巨大組織が旗を揚げちまった。

世界健康推進委員会だ。

なんとこいつら、トンでもねえ悪党どもで、疫病患者と分かるやいなや即座に焼き払う。確かに生きてたって感染源になるだけだし、どうせ助からない、それにしたって最後に愛する人に挨拶くらいさせてくれたっていいだろうに。こいつらはそれだけじゃねえ、組織が巨大化するにつれて、優秀な遺伝子同士でしか結婚できない条約とか、マグロ漁への規制とか、原発廃止とか、そりゃあもう好き放題しやがったんだ。殺し屋も真っ青の極悪非道組織だと思わないか?


そして、極めつけはたばこだ


タバコの生産を禁止しやがった。何でも上層部のお偉いさんが嫌煙家なんだそうだ。公私混同、職権乱用もはなはだしい。

だが、最後の温情として、現在流通している分と、生産途中の分については見逃してもらえたんだ。そして、世界中でタバコバブルが始まった。人口は減ったがストックなんてたかが知れてる。だからみんな金を積んで奪い合うようになった。そして、俺らのような廃業寸前の他人を傷つけるやつら、ギャング・ゴクドウ・殺し屋・軍隊にいたるまで組織だってタバコの争奪戦を始めた。俺は自分の分だけでも、と思い盗みに入った。そうして今目の前にタバコの葉っぱの山がある。なんて最高の気分なんだ。


「おい、手を挙げろ」

後ろから声がする。感傷に浸りすぎた。もう1月も吸ってなかったもんで、興奮しすぎたんだ。銃口が後頭部に押し当てられる感触がする。

「お前、タバコは吸うのか?」俺は問いかける。気を散らすためだ。

「無駄口を利くな、早くしろ」

やつにこの手は通用しないようだ。ここまできて死んでたまるか!


「足がもつれた!」

おれは言うなりタバコの葉に飛び込んだ。やつもすかさずに俺を確保しようとする。俺はタバコの葉を蹴り上げる。刻みタバコはいい目くらましだ。


「撃つな!粉塵爆発を起こすぞ!」

そういうと一瞬の隙ができた。銃を取り上げ、隠し持っていたナイフを胸に突き立てる。首を切ってもよかったが、あしものとのタバコの葉をだめにしたくなくて、胸を選んだ。


死体を前に、このときのためにとっておいた手持ちの最後の一本を取り出す。

目の前のタバコをもって帰れば、今夜からは吸い放題だ。

やはり、殺しの後はこの一服がないとな。

ライターを取り出して、、、、、


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