ぼくと妖怪

繋げ猫

　妖怪の中にはたまに人間にも見えるものも居る。例えば今、僕の目の前を歩いている猫なのだが。一見普通の猫に見えるが妖怪である。

　猫は僕の前を歩いていた男の人に

「なおーん。」

と甘えて足にすり寄って行った。男の人に何か赤い糸が付いて、猫はその糸の端っこを咥えたまま何処かへと走った。

　僕はその猫を追いかけてみた。次に猫は別の道を歩いていた女の人に

「なおーん。」

と甘えて足にスリスリしている。すると、さっき男の人に付けた糸の端っこが女の人に付いた。女の人がそのまま歩いていると、バッグからハンカチを落とした。

「すみません。あの、ハンカチをおとしましたよ。」

と男の人がハンカチを拾って女の人に渡した。さっきの男の人だった。男の人と女の人はしばらく笑いながら話した。

　あの猫は『繋げ猫』と言う妖怪で、人と人を繋げる妖怪だ。