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傘隠し
僕にはみんなには見えていない『妖怪』と言う者が見えていて。
みんなには見えないけれど、僕がこっそり教えるね。
僕は他の人には見えない者が見える。それは『妖怪』と呼ばれる人達だった。お母さんや友達に話しても見えないからわかってくれなくて。でもあっちこっちに居るんだけど。君達にも見えないだろうから教えてあげるね。
雨の降った日に僕が小学校の傘立ての所で自分の傘を探していると。
黒い帽子に黒いスーツに黒い靴を履いた髭を生やしたおじさんが立っていた。おじさんは帰ろうとする子供に近付いて、その子供の頭に自分の傘をコンって当てた。
傘を当てられた子供におじさんは見えていなくて、わーっとおじさんをすり抜けて行った。そしておじさんに傘でコンってされた子供は傘立てに近付かずにそのまんま走って帰って行った。
僕はおじさんに見付からない様に自分の傘を取って急いで帰った。