ヒロインは、舞台に上がれない
目に留めて頂き、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ごきげんよう、ルチアです。
本日、晴れてジェードお兄様が、私が通っております、魔法学園の特別講師として、派遣されて来ます。
そうです、やっと、ゲーム開始の舞台へたどり着いたのです。
ヒロイン様の存在は確認済みです。
デフォルト名の「パール」様でした。
名前の通り、真珠のような滑らかな肌で、ピンクゴールドのふわふわな髪のとても可愛らしい方です。
この魔法学園で、ヒロインがお兄様のルートに入ってくれば、お兄様に甘い毎日が訪れるのです。
下ごしらえはバッチリです。
お兄様にはじめてお会いした時から、私は頑張りました。
と言っても、甘えたおして、遊びに引っ張りだしただけですが…。
幼女の特権を利用して、何処へ行くにもお兄様について回り、寂しいと言っては、お兄様のベッドへ潜り込んだり…。
流石に、お兄様が思春期を迎える頃には、ベッドへの突進は断られましたね。
ちぇっ。
あ、因みに私は今、16歳です。ヒロイン様と同じ年です。
お兄様とは、4歳違いなんですよ。
お兄様と出会ってから、季節が一巡した頃でしょうか?
穏やかな風が湖面を撫でるのを、お兄様と二人で見つめていたとき。
ふと、お兄様の顔を見上げたら、涙がひとしずく、零れ落ちました。
私は、そのまま、湖面へと視線を戻し、呟きました。
「…綺麗ですわね。」
「あぁ、綺麗だね。世界は、こんなに穏やかで綺麗なんだね…。」
そう、お兄様が応えてくれたので私は、お兄様の手をギュッと握りしめました。
あぁ、もうお兄様は大丈夫だ…。
あとは、ヒロイン様の愛で仕上げて下さいませ。
妹は退場でしょうか?
そう、思いましたが、まだ舞台まで、時間もあったので、続けて甘えさせていただきました…。
毎日、お兄様について回ってたので、私もすっかりブラコンになってしまったのです。
だって、可愛いんですよ?
最初はまとわりつく私を、鬱陶しそうにしてたのに、徐々に、私の姿が見えないと、不安そうな顔をするんですよ。
今なんて、傍によって抱きつくと、嬉しそうに抱き締め返してくれるんですよ。
何そのご褒美。
…ヒロイン様。
私、ルチアは、ライバルキャラにはなりませんが、小姑になりそうです…。
私のブラコンが治るまで、少々お待ちくださいませ…。
※※※※※※※※
はじめて、私は「ジュエリー・ボックス」のヒロイン「パール」です。
なんと!気付いたら、前世で大好きだった乙女ゲームのヒロインに生まれ変わってました!やったね☆
思い出したのは、魔法学園の入学式の時。
校門を潜って、校舎を仰ぎ見たとき。
一気に前世の記憶が流れてきて、あのときは倒れてしまったのよね。
情報を整理するのに、一週間ほどかかり、その間、学校を欠席してしまったけど、まぁいいわ。
だって、私の愛する一押しキャラのジェード様は、まだ登場していないのだから。
確かヒロインが学園に入学してから、3か月遅れで、特別講師として入ってくるのよね。
本当は、隣国の王子さまのジェード。
両親の王と王妃さまを、暗殺され、国を追われた悲劇の王子さま。
大丈夫、私の愛で癒してあげる。
…そう思っていた時期もありました…。
ゲーム開始の時期が過ぎているのに、ジェード様と、未だに出会えてません…。
いや、顔は合わせてますよ、講師と生徒ですから。
ただ、個人的に会えてないんです!!
確かジェード様とのファーストコンタクトは、お昼休みの中庭の筈なのに、毎日通っても、来ない…。
来るのは、イチャイチャしたいカップルだけ…。
カップルたちに、「何あの子?一人でベンチ独占して邪魔なんだけど?」と、陰口叩かれても、頑張って通っているのに来ない…。
ならばと、放課後に質問しに行っても、
「僕は単なる講師なので、専門の先生に聞いた方が良いよ」
と、おじいちゃん先生を押し付けられ、そのまま逃げられた…。
え?何これ?
ゲーム開始から1か月経っても、まだ舞台にすら上がれないんですけどーーー!
お読みいただきありがとうございました。
続き書くとしたら、お兄様目線かなぁ?
それとも、ルチアxお兄様のイチャラブ?
どっちも書くの楽しそうです。