説明
『私にとっての1番に辛い事なんて決まってるよ...』
奏の中学校を卒業前の出来事
父親は出張に。その出張先の地域に行きたいと母親はついていき、奏は両親が出張中は津倉家で預かっていた。
奏の部屋へ連れてかれ勉強をしていると1本の電話が鳴り響いた。奏が電話に出ると言い階段を駆け下りていった。
暫く時間が経つもなかなか戻ってこず待ちあぐねてしまい土筆も下へ降りた。すると彼女が子機を手にへたり込む姿があった。
急いで駆け寄ると眼の奥には光がないように見え必死に声を掛けると意識がこちらに向く。
すると眼には雫がたまっていき顔はくしゃくしゃになりただひたすらに慟哭し始めた。
その間土筆は力なくよろけそうになった奏を抱きしめ落ち着いて話が出来るまで声を掛ける事はしなかった。
奏から話を聞くと奏の父方の実家からの電話で電車の脱線事故により彼女の両親が死亡者リストに載っていた事を伝えられたらしい。そんな結末を聞かされた奏は生気を失ったかのようにへたり込んだようだ。
その後は土筆から折り返し電話を掛け事故に関することや今後の対応などを聞く。
奏の家については売り払う形にされた。固定資産税などの資金関係と奏を1人暮らしさせるのは心配という事が理由らしい。
そして奏は高校に学生寮があり高校生の間はそこに居てもらう事になった。ルームメイト達と共にいて少しは寂しさが紛れればいいとの判断らしい。
授業料などの学校で掛かる資金については祖父母が出してくださることになった。
そんな出来事があり現在に至る。
『お父さんとお母さんが死んじゃったこと...』
『その通りです。ReStartには奏ちゃんのご両親の事が記されているよ。』
『なら元気出せ。ALTERを勝ち進めれば今の記憶を持ったまま事故より前に戻れるんだ。出張に行くことを阻止したり乗車する便を変えることだって出来るはずだ。』
『お父さんとお母さんにまた会えるの?』
『ああ、そしてまたお隣さん同士の交流をする未来もあると思う。だから一緒に勝ち進んで過去の修正を成し遂げよう。』
奏の手を両手で包むように取りながら言うと奏は眼を潤ませてながらも満遍の笑顔になる。
『ありがとう。つっ君。』
過去を思い出して暗くなっていた彼女の表情が晴れて良かったと思う。
『そうときたらまずはスキルに慣れるこ...』『一旦スペースから出てリアルに戻ろう。』
赤ずきんの言葉を遮り俺は脱出を提案する。
『何で!このテンションだと普通は修行や練習をする流れじゃない!貴方空気読めないの!?』
『目先のものばかりに注目せず今に至る経緯を振り返ってから優先度の事を考え意見を述べるべきだ。』
『後俺は空気は読むものじゃなく察っするものだと思うがな。俺の考えだが読むとは文書や数字などをそのまま読んだり、将棋やチェスのボードゲームなどの戦略を基礎や流れで推理するなど視認できるんだものに対しての使える言葉だと思う。』
『だから空気とか曖昧で目に見えないものを読むというのは俺には理解し難い。何だよ空気読むって?空気の元である窒素や酸素やアルゴンが目視できるのか?』
ぐぬぬといった表情の赤ずきんの目は少し潤んでいた。すると横からランボが口を開く。
『話が脱線しておりますし弱いものいじめもよろしくないですよ。』
『私が弱いの対象に!?』
『それに早く行動に移しましょう。きっと待たせている方も待ちくたびれておるかと。』
ランボは察したらしく俺に次の行動を促す。そしてスペースの操作を教わりながら元いた公園に戻る。
『さて、近所の公園に戻ったな。』
『つっ君、何で出てきたの?練習は?』
『優先度の事を考えると練習は後でもいいんだ。とりあえずかしわの行方を把握しておきたいんだ。』
『あっ!かしわ!かしわだよ!どうしよう...どこいったかな...』
『おーい奏、どうした?家に戻るぞ!』
周辺をキョロキョロしている奏に対し少し距離を置いた位置から土筆の声が掛かる。
『えっ!?つっ君!?かしわはいいの!?』
とっとことっとこハムスターのように奏は駆けながら言う。
『ああ、あいつな、あいつなら...』
津倉家庭
『やっぱりか。』
サンルームの中のハンギングチェアで気持ちよく寝ているかしわの姿があった。
『かしわは困った時はとりあえず家に帰るように躾けてあるんだ。あの場で姿が確認できなかったからきっと戻っていると予想した。確実にいるとは限らないからな。』
『そういえばサンルームにはかしわ用の出入口があったっけ。良かった〜。』
『さあ、とりあえず飯にしてその後に練習に取り掛かるぞ!かしわ!お前もご飯にするよ。おいで。』
俺の一声にすぐさま目が開くとタッタカ近寄り前足をタッチしてくる。それに対して頭を撫でると皆で家に入った。
『さて朝食も食べてエネルギー補給したから食休みにスキルの確認をしておこう。』
『とうとう始まるんだね!まず何やればいいかな!』
『まずトップ画面にLibrary dataに赤ずきんってタイトルがあると思う。それを開いて赤ずきんがどんな能力が使えるのか見よう。』
奏をソファーに座らせその横に自分も腰掛けE-bookを横から見れる位置につくと指示を出しながらスキルのページを開かせる。
『何々〜【狼退治のお裁縫術】と記されているな...』
『お裁縫?私得意だよ♪』
『......E-bookって玉石混淆みたいに当たりハズレがあるだろ...』
いや、まだ内容を知るまでは奏の能力にも希望があるだろう。どれどれどんな強い力が宿されて...
LEVEL1 極まれた糸通し
武器である糸を操りどんな場所にでも貫通させ好きな位置で結び目を付け抜けなくさせる。
オワタ。明らかに使える気がしない。
『どうにか俺1人の力で勝ち進んでいくしかないようだな。』
『それって戦力外通告!?』
『奏を守りながら。』
『その発言はお荷物発言になってない!?』
『ん?となると初めから武器を持っているのか?』
『ご明察です。私は最初から武器を持っています。でもまだ装備はしていないからスキルの項目から一つ戻って装備を開いて武器を装備させてください。』
『持っているけど装備しないダメとかとあるRPGゲームを思い出すな。』
指示通り開くと左半分はねんどろいど風な赤ずきんが映り、右半分は服装、武器、装飾、オプションと記されていた。
武器を選択で【赤ずきん用の裁縫道具】を選ぶとEQUIPのEが表示され赤ずきんの腰あたりに小型の裁縫道具らしき箱が現れる。
『装備ですがレベルアップ時や敵を倒した際のボーナスとして獲得できるポイントを使い装備との交換やガチャを回すことで装備を入手ができます。』
『他にも他者からの拝借も可能ですが自分の武器でない物はスペースから出ると持ち主に戻ります。装備を変える事で私達バディーの装いが変化します。そして装備欄の装いが戦闘時にE-bookの持ち主にも反映します。なので武器であったり服装であったりとお二人も身につけることになるので変な格好は止めた方がいいですよ。』
へえーじゃあ俺も装備買えるじゃん。後で見てみよう。
『スキルは見たし次は外に出て実践だ。準備はいいか?』
『あっ、ちょっと待ってて。ちょっと挨拶してから出掛ける。』
『ああ、行ってきな。』
すると和室の部屋に消える奏。彼女の両親の仏壇をこの家に置いている。いつでも彼女が拝めるようにと津倉家が計らってくれた。
別室に移動した奏を待つ間俺はE-bookの装備の項目を開く。
『ポイントで交換やガチャがあるのか。』
するとランボが口を出す。
『交換は...まあそのままの意味で欲しいアイテムとポイントのトレードですね。ガチャですがアイテムや武器を排出してくれますがランダムゆえに何が出てくるかわかりません。なのでポイントの消費は些か少なめです。』
『なら購入の方が入手は確実だな。』
購入をタップして武器一式を閲覧する。
『欲しい武器はあるが高いな。小西木との戦いで30ポイント貯まったが後2〜3回は戦闘をしないとだめだな。となるとガチャを見てみるか。』
ガチャをタップすると購入できるアイテムの他に専用アイテムや専用武器の存在が確認できる。
『結構種類もあるしランダムじゃ期待は出来ないな止めてお...』『つっ君!お父さん達に報告してきたよ!』
『うおっと!』
急な大声と肩を掴むのダブルコンボで土筆は変に面食らってE-bookを落としてしまった。
『つっ君ビクってなってた。可愛い〜』
『ん〜自宅だから怠惰な気分になって油断してた。こ〜ら、俺が心臓悪かったらぽっくり天に昇ってるからな。』
奏を捕まえて軽めのヘッドロックをかますと奏はキャッキャと笑っていたがふと気付く。
『あれ?つっ君ガチャ回したの?』
『?。何であんな運だめしを俺が...』
E-bookを見るとガチャガチャのような絵でレバーが回転している画面だった。
『なぁ奏。』
『何?どしたの?』
奏に向けられた表情は笑顔である。
『あれれ〜奏ちゃんが驚ろかしてくれたから間違って押しちゃってやる気がなかったガチャが始まっちゃった〜。』
笑顔であるものの些か眉間には皺が寄り、怒りマークが浮き出ていて、体が小さくなった名探偵坊やの猫被りモードの口調で言葉を発していた。
『つっ君。もうそろそろ出かける事をオススメするよ。』
奏の顔は真剣そのものであり熱意が伝わってくる。しかしその熱意は虚偽であることはすぐわかる。この場から早急に退避せねばという思考が伺えたので腕の締め付けを強くする。
『奏ちゃ〜ん。まず俺に言う事があるよね〜。』
『んげーーーーーー、ごめんなさ〜〜〜〜〜い』
ジタバタしながら眼を潤ませていた。謝罪を聞けたので解放する。
『はぁ、まあ起きてしまってはしょうがないか。とりあえず外に移動しよう。あまり遊んでいると練習ができなくなってしまうからな。ほら、行動開始!』
手をパンと鳴らす。
『Yes, sir.』
奏は敬礼付で返事をするとパタパタと駆けていった。
『別に俺上官とかじゃないんだか...まぁいいか。バカっぽくて愛嬌があるしな。そうだ、とりあえずガチャ回すだけでもしておこう。』
BGMと共にガチャが回りだすと3つ排出される。きっと回せるだけポイントを消費したのだと察し肩を落としていたが排出された物を見て思わず鼻で笑い直ぐさま奏の後を追った。
スキル用途などの説明については移動中に簡易に伝えた2人は再び人気の少ない公園に行き着くとスペースを展開させ2人のバディーも姿を現す。
『よし!スキルの訓練を始めるぞ。まずバディーとの同化だ。ランボ!』
『参ります。』
ランボは土筆の前に膝を付くと体が発光し始め光の集合体となり大きく破裂。そのまま一気に俺の体に入っていった。見ていた奏から拍手が鳴る
『忠誠を誓った人が主に全ての力を託したような演出でカッコ良かったよ〜。』
『サンキュー♪』
奏の頭をついつい撫でてしまう。
奏から好評価な感想を言われるとつい頭を撫でたくなる。それは俺だけでなく友人達もそうしてしまう。
『じゃあ次は奏達のターンだ。』
『うん!じゃあ、行くよ。』
奏と赤ずきんはお互いに向き合って両手を貝殻繋ぎにする。
『お願い、紅い頭巾を覆う乙女。メイジー。』
すると赤ずきんことメイジーは体が透き通っていきながら奏の中に吸い込まれるように入っていった。
『おお!本当に入ってきたよ。おお?メイジーの声も聞こえる!凄い凄い!』
いつの間にか名前決めてるし台詞も考えてらっしゃる。変なところで抜け目ないな。
滅多に体験出来ないことが起こり奏のテンションも上がっていた。
『うんうん!えっ.......じゃあ.......まさか.....』
メイジーに何か言われたのか突如シリアス感を醸し出し奏は腰にある裁縫箱に触れる。両手がキラキラと光りだすとそのまま手の平を俺に向ける。
『くらえ!』
すると手から勢いよく糸が飛び出し油断していた俺を貫いた。
『くっ!』
糸の軌道がどうにか追えていたが対峙していたのが奏だったからつい油断してしまった!不覚だ!
まぁ、それはそうと
『...あの〜奏さん何してんのかな?』
『えっ?つっ君見てわからない?』
奏の小指から1本の糸が伸び俺の小指の腹から爪まで貫通していた。そしてその糸は真紅の色であった。
『The red string of fate♪』
『運命の...赤い糸...ね。真剣な眼差しでコッチを見ていたから何をするかと思ったら...』
『メイジーの提案に唆されちゃった。テヘ♪』
自分で頭をコツンと叩きウインクと共に舌も出す。
子供におもちゃを与えるとすぐにイタズラとかに使うよね。今なら小さいお子さんを持つ親の苦労が理解できる気がする。
『にしてもこの糸結構丈夫みたいだな。引き千切ろうとしても腕の力じゃあ無理そうだ。』
鍛錬を重ねてきた肉体を持つ腕力でも力で切ることはできなかった。
『はい!運命の糸を切ろうとする以前に触れる事さえも良くないと思います。だからこのまま繋がってようよ♪』
『それだと訓練にならないだろ。』
しょうがない引いて駄目なら切ってみるか。
『ちょっと待ってください。』
喇叭を呼びだそうとした瞬間ランボの声が心に直接届く。
『お供を呼ぶ前に今朝伝えた事を覚えておりますか?』
『ん?そういえば俺は経験値が溜まっているとか言ってたな。』
『経験値?レベルとかあるってこと?』
『俺はランボに聞くからお前は赤ずきんに説明してもらえ。』
『経験値は戦闘を行ったりやスキルの練習をして練磨させたりする事で溜まっていきます。そしてLibrary dataからバディーの書籍を開く事により溜めてきた経験値の数値分、スキルのレベルが上昇されます。』
『なので経験値を溜めてもそれだけでは意味ないので戦闘や鍛錬を行う度にE-bookを確認してレベルを上げることをオススメします。では実際にレベル上げを行いましょう。』
奏にも見えるようにE-bookを操作する。桃太郎の書籍を開くとレベルアップを知らせる効果音と文字が出て強化された力も表記される。
スキルレベルアップ!
スキルThe Trioのグレードアップ
・Level3 イヌ科のサイズ25㎝→35㎝
・Level1 鳥類の召喚が可能になりました。
『おめでとうございます。これで戦略の幅が広がりますね。』
『おう、じゃあ早速。』
魔法陣を出し手で触れるとイヌ科の動物が姿を現わす。
『あーーー!豆柴だ!可愛い♡』
思わず豆柴を抱きしめ頬ずりする。。
《土筆〜何この子?気安く触ってきて。噛み付いていいの?》
お前可愛い表情してんのに中身の気性荒くね?
『おい奏、そろそろ離してやれ。』
『え〜可愛いからもっと触れ合っていたいよ〜』
『ん〜じゃあ奏。お前は面識のない人にいきなり抱きつかれて頭を撫でてきたらどういう感情抱くよ。』
『知らない人は...ん〜やだ!怖いもん。』
『だったら喇叭のやつを解放してくれないか。こいつお前に対して警戒しているぞ。噛み付いていいか尋ねてきたからな。』
『あっ...そうなんだ...怖がらせてゴメンね喇叭ちゃん。』
喇叭を下ろすと八つ当たりの如く赤い糸を切り裂いた。
『ええぇぇーー!何もそこまでしなくても...つっ君も何か言ってあげてよ。』
『元々切れるかどうか試すつもりだったから頼む手間が省けて良かったぞ。』
『おいたをしたのに褒めちゃったよ!?』
『おかげで張力には強く刃物などの切る力には弱い事が分かった。これを元に長所を伸ばしつつ弱点を補える訓練を行うぞ。だから現段階でどこまで能力を扱えるかをテストしよう。』
『流石つっ君鍛える事になると手順というか段取りというかテンポがいいね♪』
『まぁ訓練に関しては任せろ。じゃあ先ずは一度に出せる糸の量を把握しよう。』
俺は動物とふれあいをしたり奏の訓練を指揮する。
訓練開始ざっと1時間程経過
『ふう、ちょっと疲れてきちゃった。』
『初めてにしては頑張っているし休憩に入ろうとは思うがその前にスペースから出よう。E-bookを持つ者達にはスペースは丸見えだから敵が気づいて近づいて来たら危険だ。』
2人は脱出の信号を出し現実世界に戻ると公園のベンチに座る。
『糸の扱いには多少は慣れてきただろ。後はそれを活かし又は応用を効かせたりする為に次は俺と対人シミュレーション戦闘を行うぞ。』
『つっ君と戦うのか〜少し気が引けるよ。』
『大丈夫だ。俺にはコレがある。』
E-bookを開きとあるアイテムを見せてくる。
【ありがたい仙人の豆】
受けたダメージを大幅に回復し空腹感を無くしてくれる。(データである存在なので空腹感という概念は元々ない)
『果実の名前した猫の神様から貰えそうなアイテムだね。』
『ガチャを回した時に出たアイテムだ。回復アイテムがあれば心配いらないだろ?』
『私はつっ君と戦闘する事自体が億劫なんだけど。』
『そう言ってくれるのはありがたいけど奏もいきなりの実戦なんて怖いだろ。だからやる気を出してくれ。』
そう言って頭を撫でるとコクリと頷き受諾する。
『そうだ、その前にちょっと家に戻ろう。スポーツドリンクとか取ってくる。ついてくるか?』
『ん〜ちょっとイメージトレーニングしたいからここに残ってるよ。』
『そうか。まぁ歩いて行くからゆっくり考えてくれ。』
俺はその場を後にした。
『さてと!つっ君が戻ってくる間に対人戦闘のイメージを考えないとね。相手が向かってくる時とか逆に逃げてる時とかいろんなシチュエーションでの対応を考えないとね。』
『でも奏ちゃん土筆君より剣道強いんだし彼が相手じゃ役不足になるかもしれませんね♪』
『つっ君は竹刀を持たせたらアレだけど身体能力は凄いんだよ。りんごとか簡単にやっちゃうんだから!』
『割ちゃうですか〜それは凄いですね。』
『確かに割るんだけど果汁を絞り尽くしちゃうの。絞り終わったやつなんて芋ケンピみたいに硬く凝縮されちゃうの。』
『...怖いですね。相当な握力じゃないですか。でも仲良しであれば頼もしい限りですね。』
『でしょ!』
赤ずきんと奏はイメージトレーニングの事を忘れ楽しげに会話をしていると近づいてくる者がいた。
『逆撫さん...』
奏は振り向くとそこにはふくよか体型の女性がいた。
『ん〜〜ん?あっ!もしかして富明里三ちゃん!?』
『そうよ。よく分かったわね。昔は痩せてて今とは見た目が大きく変わったから正直気づくとは思わなかったわ。』
『小学校頃のお友達だもん。そりゃ覚えてるよ。里三ちゃん今日はお休み?』
『私は...学校行ってないわ...不登校なの。』
『えっ?』
『学校っていじめとかあるじゃない?その対象に私がなっているのよ。』
『いじめ...それって高校になってからなの?』
『いえ、元々小学校の頃からあったわ。貴方と仲良くする前まで。』
『えっ?私と?』
『貴方のような可愛いくて人気のあった子が私と仲良くしてくれたからいじめグループも手を出しにくくなったのよ。』
『そうなんだ。私がいじめの抑制なっていたのなら良かった。』
『だから奏さんといればこれからもいじめられないと思い私は貴方を一緒の中学校へ行こうと誘ったわ。』
奏は誘われた記憶はあったが土筆と里三は進学する中学校が違っていた為に奏は2択を迫られたが優先順位は土筆の方が上であった奏は大好きな男の子の行く人生について行く道を選んだ。
『でも貴方は私の申し出を断ったわよね。』
里三は後ろを向き俯く。
『ご、ごめんなさい。そんな事情があったなんて知らなくて...』
『私は悔しかったわ。友人だと思っていた貴方に裏切られたのだからね。貴女がいない中学校ではイジメが再稼動、それに家の事情もあってストレスを抱えた私は暴飲暴食をして太ってしまったわ。だから再びイジメられたのも太ったのも要因の一つになった貴方を私は許さないわ。』
再び奏を見る。
『受け取りなさい。』
放り投げたられた物を両手で受け取ると思わず目が見開く。
『E-book!?』
受け取った物に驚きタジタジしていると黒い正方形が出てきた。
『あっ!スペースが!やだーー!』
E-bookを投げ捨てるも遅かった。正方形は一気に大きくなり奏を取り込んだ。
気がつくと周囲は浜辺が広がっていて反対方面は木々が茂る密林が広がっていた。
『えっ!?どこなのここ。』
『多分無人島とかじゃないかしら?』
声のする方向を向くと富明里三が立っていてニヤついていたするとどこからか放送が流れる。
『デュエル用のスペースが展開されました。ステージは離島です。1分後にステージが生成が完了し戦闘が開始しますので準備を整えてください。』
『さぁ、奏さん戦闘を開始しましょう。踊鬼来なさい!』
すると地面からぬるりと3mはある体格でグラサンをしヘッドホンを首に巻く鬼が出てくる。
『いいのかい?旧友なんだろ?』
『構わないわ早く覆いなさい。』
『yeah...』
鬼は腕を大きく広げ里三を覆うように包み込み彼女が見えなくなる。すると鬼の体が徐々に透き通っていき里三が姿を現れる。
『さぁ、貴方もバディーと一つになりなさい。』
奏と赤ずきんはお互いに向き合って両手を貝殻繋ぎにする。
『お願い、紅い頭巾を覆う乙女。メイジー。』
奏もメイジーと一つになり臨戦態勢をとる。
『可愛い女の子同士が手を取り合うなんて絵になるわね。でもそれも今日が最後よ。』
『里三ちゃんもう少しお話しない?お互いの話を聞けば蟠りもとけると思うの。だから私がお誘いを断った理由も聞いてほしい。』
『私にとってこれは復讐みたいなものよ。戦う意思がないのなら大人しくやられなさい!』
里三は右手で自分の左肩を掴むとそのまま指先に向かうよう動かしていく。するとどうだろう。里三の太かった左側の二の腕は細くなっていた。
そのあとも似たことを体全体に行った。両腕は繊細で華奢になり両足はすらりとして美しい脚線美になり胴体は全体的になだらかでありながら一部大きく主張する胸元が妖艶さを表していた。
そして最後に気合をいれるかの如くパンッ!と顔を覆うように叩いた。手を退けるとふっくらして大きく見えた顔は輪郭が整った小顔になり気づけばとても魅力的な女性に成り変わっていた。
『あ、貴方...本当に里三ちゃんなの?』
『目の前で見ていたでしょう?私が能力を使って変化していったところを。私の持つ能力を知りたいならE-bookを開けばいいわ。戦闘フィールドに入ったらバトル用の画面に切り変わって色々情報を見れるわよ。』
そう言われ即座にE-bookを開き操作をし始める。
ブゥゥゥーー!
『戦闘開始してください。』
ブザー音が鳴り響くと未だに操作の途中だった奏は驚き少し狼狽えたがすぐに顔を上げ立ちはだかる相手の方を向く。
『油断大敵よ♡』
するといつの間にか距離を詰めて殴りかかろうとしていた里三が目の前にいた。
E-bookまとめ
桃太郎更新
summon a dog Level3 へ更新
犬(喇叭)Level3 : 35㎝以下のイヌ科
summon a bird を獲得
名前 津倉土筆 E- book: 桃太郎
スキル The Trio
犬(喇叭)Level3 : 35㎝以下のイヌ科
鳥(??)Level1 : ???
赤ずきん
スキル 狼退治お裁縫術 Level:1
詳細
極まれた糸通し
武器である糸を操りどんな場所にでも貫通させ好きな位置で結び目を付け抜けなくさせる。
逆撫奏 E-book:赤ずきん
スキル 狼退治のお裁縫術 Level:1
使用道具
糸(糸)
バディーの書籍を開くことによって溜まっている経験値の数値分、スキルのレベルを上昇させることができます。
武器は元々童話のキャラクターが持っている場合とポイントを使っての交換やガチャをすることにより入手できる。自ら設定で装備をしないと扱うことはできない。
装備した服装、武器、装飾品はスペース入ったプレイヤーに反映される。