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辛酸な過去を変えるため皆は電子書籍を更新する  作者: 彦音梟
2章名は体を表す
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接近

この世に生み出されたものには名前やそれを示す名前が与えられる。同種類の中からそれのみに与えられる名称はとても価値があり貴重と思えるであろう。


例えば子供が生まれたら名前をつけて心底可愛がり宝物のように育むであろう。可愛い女の子に『いい名前だね♪今度からこう呼ぶね』とあだ名を言われた非モテ男子は自分の名前を誇り感動するであろう。名前によって不運な出来事に遭遇してもある意味貴重な体験と思案すれば前向きになれると思う。


となると名を持たない者はどうであろうか。感情を持ち、言葉を発する生き物で名称が無い者はそれを欲し、さらには特別な呼称を欲すると思われる。


何故このよう事を言い出すのかというと今朝E-bookから俺の設定していないアラームが鳴り朝を迎えるのが原因である。


『おーーーい!土筆様ーーー!起きてくださーーーい!朝ですよーーー!』


起きてみるとまだ眠気が残っているので時間が気になり時計に目を向ける。


『おい桃太郎、こんな時間になんか用かよ。俺の普段の起床時間の2時間も前じゃないか。俺の記憶覗いたのなら普段の起床時間を知っている筈ではないか?』


時計はAM4:00をさしていた。


『おはようございます土筆様。勿論存じておりますよ。今回はお供である犬が土筆様に用件があるようなので呼ばせていただきました。なのでスペースを開いていただけますか?』


『今日は土曜日だし時間はあるから構わないが昨日の今日だし些か眠くて緩慢かんまんに行動させてほしいかった。』


ベッドに腰掛けた状態の渋々といった態度でE-bookのトップ画面にあるスペースのマークをタップすると画面にはフィールドの選択と規模の指定について表示される。土筆はフィールドは模擬練習を選び、規模はマイクの絵をタッチし自分の部屋を言う。


すると画面から黒い正方形が飛び出し大きく広がり土筆の部屋を取り込む。バトル用のフィールドとは違い練習用は土筆の部屋のままであるが、薄暗くたまに電流が飛び交うのが見えたりして違和感のある空間になった。しかし特に気にせずにちゃちゃと桃太郎との同化を済ませる。魔法陣をベッドに呼び両手で触れると魔法陣は強い光と白煙を放ちチワワが現れた。


『操作なども慣れてきているようですね。』


『まぁ...俺も現代っ子だし...このようなタブレットの操作くらいな。』


《土筆!呼んでくれてありがとう♪今日は僕の名前を決めて欲しくて早起きしてもらったんだ。》


『あぁ〜そういえば前回そんな事言っていたような気がするな。』


『あ、でしたら私も愛称になるものが欲しいです。』


『あぁ...それってまた今度呼ぶ時に答えるでいいか?』


《昨日の戦闘の際に伝えてたと思うし今頂戴よ〜》


『そうですよ。それにまだお考えになられてないようであれば今の土筆様のイメージで愛称を付けてくださいませんか?』


俺は頷き、目を閉じて眠い気持ちを抑え自分の持つ2匹の情報を呼び起こす。するとそんな時間が立たずに目は開かれシャーペンと紙を手に取り記載する。


『これ。イメージ。俺寝る。』


スラスラと書き終えて再び寝床につく。置かれた紙を覗く2匹は口が大きく開く。



桃太郎→ランボ。犬→喇叭ラッパ



『土筆様!土筆様!経緯をよろしいですか!』

《土筆!ちょっと、どうなればこの言葉出てくるの!?》


『なんだようるさいな。プロセスについて聞きたいと言うのか?ただの連想に次ぐ連想だぞ。』


欠伸一つしながら再び起きだしベッドに腰掛ける。


『桃太郎はとりあえず桃から連想していると奏が好きな桜桃サクランボが思い浮かんだからサクランボと分けンボじゃ凄く言いにくい言葉になってしまったから一文字前のラも含めてみたら多少は言いやすくなった。』


犬の方についてはやかましいから連想してすぐに喇叭が出てきた。俺のクラスでうるさいくらいのお喋りの男子がいてそこの犬と似ているなと思った。そいつが吹奏楽部でトランペットを使ってたのを思い出したのが理由だ。それに喇叭の喇はお喋りという意味が入っているから丁度いいと思う。』


2匹はぐぬぬとでもいいそうな悔しそうな顔をする。


『ひとつお聞きしたいのですが再び思案してくださるというのは可能でしょうか?』


『お断りだ。』


《なんでそんな意地悪するの!》


『意地悪ではない。それに今すぐ命名するように要求したのはお前達じゃないか。要望に答えたというのに意見を言われる筋合いはない。サービス業とかは基本的な要望に応えてアフターサービスもしてくれるとこが多いが俺はそのようなサービスは承っていない。よって改名はしない。』


俺は右、左とウインクをしチワワとのテレパシーを終了させるが横でワンワン吠えていた奴がいたのでE-book脇に置きそいつを膝の上に乗せ体を撫で撫でしまくる。すると気持ちよくなったのか吠えていたそれは大人しくなった。


『さぁ要件は終わりだな。後1時間ちょっと寝れるから俺は寝るよ。』


脇に置いておいたE-bookを手に取る。


『土筆様!』


スペースの解除をしようとした途端呼び止められる。


『昨日のALTER戦で経験値が溜まっておりますので今宵にでも再びスペースを起動してください。』


『…あのさ、普通そっちの話題の方が優先度高くない?』


『いえ、我々の呼称問題の方が最重要案件ですよ。』


『…そうか、わかった。夜だな。』


スペース解除をタップすると桃太郎とチワワ改めてランボとラッパは姿が消え、スペースもどんどん縮まりE-bookの中に入っていった。そして俺はベッドに入り寝息を立てるのであった。


数時間後津倉家には来客がやってくる。


ガチャ


『かしわ!お待たせ!』


『ワン!ワン!』


毎週土曜と日曜の早朝に幼馴染の逆撫奏は津倉家に行きポメラニアンのかしわ君のお散歩をしてくれている。その為合鍵も渡されておりいつでも訪れても良いと許可も得ている。ちなみに土筆は既にジャージに着替えランニングの為外出中であるのだがかしわをトレーニング中散歩に連れて行くことはない。ポッチャリ体型なので早く走れないというデメリットを抱えているからである。


普段のお散歩コースを進む道中、奏はかしわに話かける。


『かしわ〜私毎週つっ君のお家行ってかしわのお世話したりつっ君のお家の仕事手伝ったりして通い妻みたいだよね。』


『ワン!ワン!』


かしわの返事を勝手に肯定と捉えニコニコする奏。


『やっぱりそう思えるよね♪しかも学校では私とつっ君はカップルだとか夫婦とか言われてるんだよ。つっ君はいつも笑って誤魔化しているけど否定はしてないからこれはもう脈無しってことはないよね?』


『ワン!ワン!ワン!』


これも肯定とみなしまんべんな笑顔を浮かべる奏。


『ついでに私津倉家の合い鍵まで預かっているしこれはもうお付き合いするしかないよね。かしわ?』


『ク〜ンク〜ン』


『なんでそこだけ悲しむの!?』


奏には犬の気持ちの表現の仕方を数パターンだけ把握している。悲しそうな表情でク〜ンと鳴く時は悲しかったり空腹時の場合である。


『あ!きっとお腹空いてるからだよね、きっとそうだよね!かしわ〜帰ったらご飯にしようね〜。』


『ワン!』


再び歩き始め公園前に差し掛かるとかしわが歩みを止める。


『?。かしわ〜?どしたの?』


急に静止したかしわに声をかけるが反応を見せないかった。


グイ!『あっ!まっ待ってー!どこ行くのー!』


急にかしわはリードを咥え思いっきり引っ張り奏の手からリードが離れさせる。かしわは公園内にダッシュしていった。


『もうーかしわどうしたんだろ。遊びたいのかな?それにしてもポッチャリしててもダッシュは早いや。もう姿見えなくなっちゃった。』


奏も駆け足でかしわを追いかける。


『あっ!いた。もう、いなくなったら心配するしつっ君にも嫌われちゃうところだったよ。』


小さい公園のだったのであっさり見つかり安堵する。そっと近づきガシッと捕まえる。


『かーしーわー!リード咥えて引っ張るとかあからさまに私から逃げるの為...ん?何コレ?』


かしわの目先にタブレット端末が落ちていることに気づく。


『あ〜タブレット端末の落し物だ。何でこんな隅っこに落ちてるんだろ?え〜ととりあえず電源付けてみようかな。落とし主わかるかもしれないし。』


電源に手をかける。


『撫子!』


『!?』


その瞬間に幼い頃の奏のあだ名で呼ぶ声がし奏は声にする方を向く。


『つっ君?』


久しぶりに昔の呼称で呼ばれ驚きと嬉しさの両方を感じていた。


『あぁ、悪い。確かこの呼ばれ方嫌いだったよな。』


『大丈夫だよ。つっ君のお陰で好きになってるよ。だからこれからもさっきみたいに呼んで欲しいな。』


『まだ少し照れくさいから追々な。今みたいに二人きりの時とかにたまにな。それはそうと奏その手に持ってるタブレット。』


『これ?ここに落ちてたの。』


それはつい最近見知った物であり奏には特に触れて欲しくない物であった。


『こういうの高価だし落とした人も困ってるだろうし早く持ち主の特定しないとね。』


『待て。奏は機械オンチなところがあるから操作中に壊してしまうかもしれない。』


『確かに機械は苦手だけど...つっ君は...』


『危なっかしい節があるから落としてしまうかもしれない。あと子供みたいに感情の起伏が激しいから操作上ちょっと気にくわないことが起こると投げてしまうかもしれない。以上の可能性の回避の為俺がそいつを預かろう。ほらかしわも次の行動に移りたいみたいだぞ。』


奏の持つリードはぴんと張りかしわは早く移動したがっていた。


『だから優先的な行動としてはかしわの散歩を終わらそうな。』


E-bookの破壊には桃太郎と同化しないといけないが今の俺はトレーニング中だからE-bookを持っていない。となるとこいつを持ち帰れるようにするためにはまず奏から取り上げよう。


『そのタブレットは俺が警察に届け出してやる。』


しかし奏は少し涙を浮かべ頬を膨らましていた。


『私そんなおっちょこちょいじゃないもん!お子ちゃまじゃないもん。』


あ、やべ。奏の行動の切替が目的だったのに奏を巻き込ませまいと焦って奏の大脳辺縁系だいのうへんりょくけいの情動に余計な刺激を与えすぎちゃった。


『かしわはいい子だから待っててくれるもん!私もやればできる子だもん!だから今は持ち主の特定するんだもん!』


そして奏は再び電源に手をかける


『おい、よせ!』


奏からE-bookを無理やり奪うことにし奏に向かい駆け出したその瞬間


ガッ!

『うごっ!』『キャッ!』

ドサッ!


焦りすぎて躓き奇声を発しながら奏に抱きつく。どうにか下になる態勢になりそのまま一緒に転倒した。


『痛ぅ〜、ゴメンな、奏。』


『も〜どうしたの急に、あっ…』


抱きついた状態で転倒したので2人の顔はとても近くなり奏は顔を朱に染め意識してしまう。


『だ、大丈夫か?』


『う、うん、だいじょうぶ…だよ。ありがとね。』


普段から距離間が近いと周りから言われるくらい仲良しなので直ぐに離れるという行動にはいたらない。特にいつも通りの対応をしているはずだった。しかし奏の方は頬を紅潮させ腕を首の方に回してきた。


『つっ君...わざわざ下になってくれたんだよね…お礼…しなきゃね…』


すると奏は顔を近づけ俺の唇にゆっくりと近けてきた。それ見てふと奏の行動に俺は過去を思い出す。


『逆撫奏って苗字と名前になでって入って身長小さいからあだ名は【なでこ】な。』


小学校低学年の頃男子からあだ名を付けられていた。一度あだ名が決まると周りもそう呼び始め周囲に広まっていた。


家がお隣さんだった頃の初期はそれなりにそばにいれたから気づくことができた。普段は天真爛漫な姿を振る舞う彼女だが登下校時たまに哀愁を読み取れる表情をしている時の姿が認識でき気がかりになった。自分の所為でそんな顔をさせているのか不安になりある日逆撫家にお邪魔させてもらうことにした。


『奏ちゃんは僕といる時たまに悲しそうな顔をするけどそれって僕と登下校するのが嫌になっちゃたの?』


首を横に振る奏。


『ち、違うの!土筆君は関係ないの!...あのね私に付いたあだ名が嫌なの。それを思い出すと悲しくなっちゃうの。』


『なでこって呼ばれ方が嫌なの?』


『私は可愛く感じない。中にはデコちゃんって呼ぶ人もいる。私はどちらかというとナデちゃんなのに。』


むすっとした表情になるもすぐに悲しそうな顔になり次第に涙も浮かべ鼻水も垂れる。


そんな姿を放っておけず鼻をかませ涙も拭いてあげながらどう機嫌をとるか考える。


『じゃあこうしよう!』


自分のランドセルからノートと鉛筆を取り出す。


撫子(こう)書いてなでこにしよう!』


『何それ?』


涙声で聞き返してくるのに対して奏を抱き寄せて頭を撫でてあげた。


撫子(なでしこ)って言うお花があるんだけど撫でたくなるほどかわいらしいことから名付けられたんだって。だから皆から奏ちゃん可愛いねって言われているように思えばいいんじゃないかな?』


奏は呆然としていると急にあわわと口から漏れモジモジし始めた。

『あ...あのさぁ、土筆君は私のこと可愛いって思ってるの?』


『僕が奏ちゃんに撫子の花の漢字を付けたんだよ。それだけで僕がどう思っているかわかるんじゃない?』


少しの間があり、はっ!という表情をしたかと思うと頬を赤く染め蹲すたりして忙しい子だと思っ

た。


『どう?さっきので少しは元気になれないかな?』


『うん、大丈夫。これからは元気になれる言葉になるよ。』


『なら良かった。じゃあそろそろ僕は帰るね。』


抱きしめるのを止めスッと立ち上がりそのまま玄関に向かう。


『じゃあね、撫子♪』


『私も土筆君を特別な呼び方したいな...あっ!私つっ君って呼ぶことにする!』


『愛称を付けてくれたんだね。ありがとう。』


そう言うと奏の頭を撫でてあげる。奏は満遍な笑顔を浮かていた。



その日以来奏は俺に懐き共にする時間が尚更増えていった。学校が終わった後でも休日の日でも暇さえあれば俺の部屋に上がるようになったり、なりよりスキンシップの頻度が多くなる。

初期は肩に手を置く程度であったが徐々に発展し高校生になる頃には人前で抱擁ハグする程になっていた。

周囲の者達に俺の保有を想起させる暗示をかけ俺に近ずく異性を無くそうとする行為は彼女自身無意識でありこの束縛は無自覚なのだ。独占したい程の奏の強い好意は俺に伝わっていた。


だから今こうして唇を近づけてくる行動もいつかは来るとは予想はしていた。



本当撫子だとも思う。



色々思い出していると気づけば距離は数ミリになっていた。意を決して目を閉じることにした。


『あ、あのー!あのー!お取り込み中ごめんなさい!』


『『!?』』


知らない声に驚きその方向へと向く。


そこにいたのは金髪で赤いワンピースと赤のフード付きのケープを羽織ったガーリーファッションの少女が立っていた。


土筆は上半身を起こすと一呼吸おく。奏は土筆に縋るような体勢になり不満そうな顔をしていた。


『君は?』


『そ、その前にその、えと、道徳的に良くない体勢をどうにかして欲しいんだけど。』


『?。特に気になる点は見当たらないんだが...』


『座っている男性に女の子がマウンティング状態でさらに抱きついているんだよ!?不純でない訳ないじゃん!』


『えっ、あぁ...確かにそうだな...』


正直さっきの状況を未遂で終われた安心感から忘れていた。


『つっ君。全然不純じゃないよ!』


『えっ?』


『漫画で親が小さい子供にこんな感じで甘えてるシーンがあるし家族みたい関係の私達なら問題なし!』


『家族【みたい】というのなら不純です!いいから離れなさい!』


言われた通り離れるとやっと話が進む。


『私はグリム童話の一つ赤ずきんと呼ばれる本に登場する女の子です。奏ちゃんの持つE-bookのヘルプデスクとバディーを務めさせていただきます。』


『だよな...上体を起こした辺りから違和感を感じていたよ。周囲を見ると公園ではあるが遊具が違う種類の物へ変化していたからな。公園フィールドってところか。』


『合っているけど...というか貴方は何故この空間にいるの?ここは選ばれた人しか踏み込めない聖域なんですけど...』


『はっ?俺もALTERの参加者でありE-bookの持ち主だぞ。気づかなかったのか?』


『......えーー!じゃあ貴方敵じゃないですか!』


反応するのが遅いし表情は驚嘆を表しリアクションもワザとらしくない感じがする。コイツ絶対馬鹿だろ。


『奏ちゃん早くそいつから離れて!やられちゃうよ!』


『えっ!?つっ君私に何かするの!?』


下を向き何か考え、はっ!と何か答えが出たかと思えば、顔を朱に染め、それを手で顔を覆い隠し、首を左右に振り、きゃ〜っと喚いていた。そして手の隙間から上目遣いをして土筆を見る。


『痛くしないでね。』


『何を考えたのか知らないけど多分違うしその言葉聞くと春日部出身のとある5歳児を思い出すからやめなさい。』


しょうもないやりとりを見て赤ずきんが口を開く。


『貴方がつっ君、津倉土筆君ですか。』


『ああ、そうか奏の記録見たならば俺の事も少しは把握済みか。ならば話は早い俺は奏の敵じゃない。安心しろ。』


『そうね。小学生の頃からいつも一緒で喧嘩もほとんどしたことないようだし。その言葉信用してあげる。』


赤ずきんと話していると奏が土筆の袖を引っ張ってくる。


『ねぇ、つっ君、今やっと落ち着いて気づいたんだけどここ近所の公園じゃなくなってるよなんか遊具とか変わってるもん。後赤ずきんちゃんいるしこれはアレだよね。奏inワンダーランドかな?』


『残念だがここにはウサギさんはいないよ。』


『おとぎ話の住人ではないですが民話の住人ならここにもおりますよ。』


『.....なんでお前がここにいるんだよ』


振り返ると土筆の背後には着物、袴に陣羽織を着こなす長身イケメンが笑顔で立っていた。一瞬誰だか分からなかったが陣羽織に桃のアップリケが付いていたので正体桃太郎だと分かった。


『E-bookが無ければ戦闘における勝敗が決まりません。ですからパッシブに働きかける機能として他者のスペースに入る際E-bookを必ず所持してもらうよう転送されます。』


『そうか、まぁ今の現状を奏には説明をしたいところだったから丁度いい。』


『奏、今から説明することは仮想だが現実に影響があることだ。簡易的に説明していくから覚えてくれ。』


『うん、お願いしま〜す。』


『まず奏が手に持っているタブレットだがE-bookと言ってこれを持つものはALTERと言うゲームに参加できる。このゲームは童話や民話などから創出された異能の力を利用しての対戦をする。書物の種類なんて馬鹿みたいに多いから様々な能力者がいるはずだ。』


『対戦だから勝ち負けもあるぞ。勝敗は対戦相手の戦闘不能かE-bookを破壊で勝利、その反対が敗北だ。負けたらALTERは終わりだからな。』


『はい!戦うのから逃げることはできますか?』


『ALTERのリタイヤは敗北らしいが...なぁランボ、戦闘の回避はできるか?』


『一応フィールドには毎回ランダムで脱出口が設けられておりますのでそこからスペースから出られます。後はフィールドにいるプレイヤー全員がE-bookを操作して脱出の信号を出すことですね。』


『毎度決着をつける必要はないようなら助かるな。その操作も後程聞くとする。』


『あとは対戦相手は皆必死で勝ちに来る筈だ。商品として過去のやり直しができるらしい。辛い目にあったことや苦しみを生じた過去などの辛酸な体験を回避できるチャンスを獲得できるんだ。』


『辛酸な...過去...』


奏は俯き表情を暗くする。


『あぁ...多分奏はあの事だろうな。』


幼馴染だからこそ土筆は奏の辛い時期知っていた。


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