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辛酸な過去を変えるため皆は電子書籍を更新する  作者: 彦音梟
1章天狗の鼻をへし折る
2/25

崩壊


手元のE-bookの内容に目を通す。


『いやいや、今日初めて見て触れた物なんだから俺の情報が載っているなんて有り得ない。一介の学生のデータがこんな物に入っているわけ...!?』


身長や体重などに関してこの間の身体測定での俺の結果とリンクしてる!性格や長所短所も就活練習のエントリシートに似た事を書いていた気がする。


『まっ、まさか他にも俺の情報が!』


次々とページをめくるとそこには職業や趣味、食品の好嫌い、癖、特技、欠点など情報としては大した事ない項目が並んでおり犯罪に利用されそうなものは無かったのでまだ安堵するも回答は正しく記されていたのでモヤモヤは晴れない。


そしてさらにページをめくると


『......ん?......はっ?......アアァァーー!』


思わず叫び出し寝ている眉が思わず上を向く。


『おい!桃太郎!このページの項目に猥褻で卑猥というか艶笑(えんしょう)チックなカテゴリーが混じってんだけど!』


『勿論です。持ち主の情報をこと細かく記しておくことで持ち主がE-bookを貴重品のように大切に

してもらえるようにした対策です。』


『この羞恥ページで弱点とあるが序盤の方でも欠点とあって何故欠点、弱点と似たような意味の言葉が別ページで使われていると思ったら"欠点=よくないところ"、"弱点=感度の良い部分"って感じで表記されてぞ!』


『羞恥ページの序盤での【......ん?】はそこのリアクションですね』


『そのあとフェチズムやら異性の好みの下着の色やら他にも項目があったぞ!』


『【......はっ?】って部分ですかね?』


『最終的には男性器の長さ(通常時と興奮時)と俺御本人も正確に把握はしていない事柄も記載されていたからな!』


『最後の絶叫ですね』


『なんだよコレ某死のノートの類!?あと俺の名前を記したら死ねる自信あるぞ!てか既に俺を精神的に追い詰めてお前が死神に見えてきたんだけど!?もう俺を追い詰める為の殺人ノートじゃないか!』


『土筆様、先程までの落ち着いたキャラが崩壊してますよ』


『元々はツッコミ気質なんだよ!コレに記載されているってことは俺の羞恥的な情報が把握されてるって事だろ!いつどこでこの情報仕入れたんだよ!』


『やはり知りたいですよね。勿論お教えいたしますが...一度落ち着いた方がよろしいと思います』


桃太郎から少々困ったような雰囲気を察知し、(まぶた)を伏せゆっくり息を吸い息をはく。再び瞼が開くと眉も下がる。


『取り乱した事に関しては謝罪をするがプライバシー筒抜けの状況に対して焦らない奴は俺が挙げるとしたら話し合いで弁解や正当化するのが得意なキレ者や情報社会の危機察知に関して疎い純粋な心を持つ者やバカぐらいだ』


俺は冷静さを取り戻すと桃太郎の表情が笑顔に戻る。


『まぁ一般的には動揺を示す反応の方が多いはずですよね。それはそうと落ち着いたようですし質問にお答えします。E-bookを起動した際に電気信号の伝達を感じませんでしたか?』


『電気なら体中に流れた感覚があったが...ん?あの時の静電気がそうだってことか?』


『そうです!人間は非常に小さな電気を流すことで情報のやり取りや運動の指令を出したりしているのは小中学校の時に神経に関する勉強していると思うので知っているとは思います』


『E-bookの流した電気信号が人の脳へ行き土筆様の記憶の情報を得て、次に人の流す電気に混ざりながら身体中を移動し全身を巡り今現在の身体しんたいの情報を調べ尽くしたらE-bookに戻って情報をまとめた』


『なので土筆様の情報はE-book本体が記載したという事になります』


『コイツが...犯人...』


少し考えると行動を起こす。

E-bookを両手で持ってから上に掲げ。


『オラッ!』


一気に急降下させ膝に当てへし折りにいった!


『つ、土筆様!?』


しかし破損箇所はみられなかった。


『壊れてない...』


『無茶なことはしない方が...』


ならば!


右手に持ち替え再びそれを高々と持ち上げ面子の要領で地面に叩きつけ、拳を握り全力でE-bookを殴り、抱えるほどの岩石を持ち上げE-bookへ落下させた。そして最後に岩石の上からも全力で殴りつけると岩石が崩壊した。


『人様の個人情報勝手に入手するとは詐欺と同様犯罪行為だ。俺による処罰を執行させてもらった。』


岩石の破壊によって砂埃が立ち込めている。


『あそこまで連続攻撃もそうですが岩石を破壊するその力ってなんですか』


『力なんて鍛錬していけば自然と身につくものだ。にしても最初の一撃で壊れなかったのは少し驚いたがここまですれば間違いなく壊れるだろ』


俺の攻撃感動してた桃太郎だがE-bookのことを思い出し砂埃のたっている方を向く。


『しかし...E-bookが...』


『コイツ本体が情報収集や記録をしているならコイツを破壊してやれば全てが解決すると判断した。』


これで情報漏えいは免れて安心できる筈だよな...あれ?


一息つこうとした瞬間疑問が浮かぶのであった。


E-bookを破壊した筈なのにコイツはなんでまだ実体化してるんだ?それにこの山岳地帯もあれのシステムの一つだというのに消滅していないだと?


『あぁ、E-bookが砂とかで汚れてしまいましたよ。土筆様、きちんと綺麗にしてくださいよ』


砂埃が晴れるとしっかり形が残っているE-bookがそこにあった。拾い上げ表面や操作上の異変などのチェックをする。


『破壊どころか傷すらない......操作していても正常に扱えている......ぬかに釘って感じで全く手応えを感じないぞ』


損傷がないからこそ桃太郎もまだ存在していたんだな。自分の鍛錬の結果が意味ないように感じて軽くへこむな。


『コレ物理衝撃に強いタングステンカーバイドと摩擦などの引っかき傷などに強いダイヤモンドのハイブリッド素材でできてるだろ』


『電子的な世界なんですからなんでも有りだと思いますよ。それより壊せないと分かっていただけたのなら戦いに参加しましょう。リタイアしても恥は残り続けるだけですよ』


数秒間時間が止まる感覚に陥る土筆。


『......どういうことだ?』


『自らリタイアしたらデータは消えるどころか土筆様の名前や顔写真が新しく追加されます。破壊されない限りは無くなりません』


抹消できないうえに余計な真似もしてくるのかよ。


『......そういうのはもっと早めに言っとくものじゃないか?』


『まだ説明の途中でしたが土筆様が...』


『......それに関しては済まないと思っている。じゃあ最初から説明をして貰えるよう頼みたいんだが?』


『こちらはそのつもりでしたから構いませんよ。しかし土筆様はまだやる気になされていないようにも見えるのですが』


『そんな事ないぞ。説明をしてもらわないと今後の戦闘において役立ったり戦略を立てることもできないからな』


桃太郎の目がジト目に変わる。


『例えば対戦相手の捜索方法を知り早急に対戦相手にE-bookを破壊してもらうこと。その際に敗北者に対して課せられるペナルティーの有無など早く知りたいとかないですか?』


『........どうだろうな』


コイツ察しが良すぎではないだろうか。少し怖いんだけど。エスパーとか言ってきそう。



『まぁこちらは土筆様が真剣に戦いと向き合うように説明をさせていただくだけです』


『........頼む』


『では再びステータスの中を見てRSというページを開いてください』


土筆は早速RSなるものを探していると今までとは違うページを見つける。それは背景一面黒で着色され白で文字で書かれておりRSとあり内容を参照する。


『ここに記載されているのは俺の幼少の頃の思い出だ』


そして眉間にシワを作り不機嫌そうな顔をする。


『忘れることは一生ない大切な思い出だ。しかし思い出すと悲しく辛くなってしまう出来事だ。これが戦いに向き合うようになるとは到底思わな...』

『戦いに勝ち続ければRSに記載されている過去をやり直すことができると言ったらどうします?』


土筆は目を大きく見開き立ち尽くす。


わざわざ話を割り込ませ不意をついた桃太郎はニヤつきながら土筆の反応を待つのであった。


『やり直し...ということは...あいつに...また会える?』


すると幼少期の頃の中で強く印象に残っているいくつかの記憶がフラッシュバックのように次々と思い起こしていく。それは映像のチャプターのようにRSに関する記憶がシーンや場面ごとにジャンプして再生されていくようであった。


『土筆様!』


『えっ?...あっ、済まん呆けていた。昔の記憶がどんどん蘇ってくる感覚に陥っていたよ。確かRSに記載された思い出のやり直しができるって言ったな』


『えぇ、ReStartリスタートを短くしたものです。そのページにあるものはE-book所持者の辛い目にあったことや苦しみを生じた過去などの辛酸しんさんな体験が記されております』


『確かにあのページにあった時期は辛い過去だった』


『土筆様のようなプレイヤーにはリスタートにある思い出を今現在の記憶を保持した状態でのやり直しを報酬に戦いに参加し勝利していただきます』


『やり直すってことは俺の場合は5歳児で小学生の頃の人生の再開できるってことになるのか?』


『そうなりますね。そしてやり直しなのでタイムスリップをすることになりますね。もう今現在には戻れませんからその辺は覚悟してくださいね』


『覚悟ってどういうことだ?』


『現在に戻れないということは現在の人間関係もなくなるということですからまた同じ人達と仲良くしていけるという保証はありませんからね。歩んでいくルートを間違えれば今の友人に巡り会えないかもしれませんのでその点においては気を付けてください』


『そういうことなら問題ない。今までの交友関係を持った者達のファーストコンタクトくらいは今でも聡明に思い出せる。なかなか濃いキャラクター性ばかりが揃っているからな。それ以降は流れに乗って友情を深めていくさ』


『覚悟はあるみたいですね。じゃあ最後のステータス関連の説明ですがRSの次のページでリタイアできます』


『いや、もうリタイア発言はしない。利益のない争いなんぞ無足むそくでありやる価値もないが対価があるなら話は別だ。だからお前に説得されてやる。口車に乗ってやる。お前の手の平で踊ってやるってことで俺はさっきまでの意見は訂正し改めて戦いに参加表明する。だから順次説明を頼む』


『こちらは心配していませんでしたがやる気になっていただいて喜ばしい限りです。では次の説明に移行しましょう』


『トップ画面に戻りLibraryライブラリー dataデータを開き桃太郎を開いて下さい』


タイトル欄に桃太郎とあったのでタップして表示させると桃太郎の童話、アイテム、装備、スキルなどまるでソーシャルゲームをしている感覚になりそうな項目が並んでいた。


『アイテムや装備は未所持なので説明は後回しにしてスペースを開いてますしスキルについて説明しますので開きましょう』


そう言われスキルを開くと【The Trio】というのがあった。


『記述によると【桃太郎のお供犬、猿、鳥に属する動物の姿を想像すると姿を現し、言うことをきいてくれる】とあるのだが...えっ?コレだけか?桃太郎って刀とか持っているイメージが強いから刀の技とかを想像してたぞ』


動物の傀儡かいらいを行使して闘争にとか参加させるとか虐待に値するんじゃないか?あまり気が進まない能力だ。


『さぁ!スキルを使う為に準備をしましょう』


『ほぉ、スキル使用の着手に移る前に先行することがあるのか。それはいったい何だ?』


『スキルの使用については土筆様と私が一つになる必要があります』


時が止まる。言葉にするならこれが適切だと思う。そして少しの間が空き再び土筆は口を開く。


『...ん?すまないがもう一度言ってもらえないか?』


『あれ?聞こえませんでしたか?では重ねて言わせていただきます』


『スキルの使用については土筆様と私が一つになる必要があります』


一字一句変えないで発した言葉は勘違いでないことの確証を得る。


『お前と俺が一つに...』


スキルの使用については土筆様と私が一つになる必要があります♂


土筆の脳内で桃太郎の言い方がよろしくない編集のされ方で再生され、顔が真っ青になっていく。


『あの、何か勘違いをなさってませんか?"あー!!"や、"ウホッ!"や、"ホモ〜"みたいなことではありませんよ』


それを聞き土筆の顔色が戻る。


『そ、そうか、お前結構知ってるな。◯チャンネルとか◯コニ◯動画とか見たことあるだろ』


『そういうサイトの存在の認知もございますが、閲覧はしたことはございません』


『あの類は情報やネタの収集であったり、単純に面白みを求めたりなどして暇な時間を過ごせるから俺も使ったりしていたな』


"俺も"という使い方をしたがこれはそういうサイトを使っていると言う意味であってホモ関連を見てることに共感している訳じゃないからね。勘違いしないでよね。


ふと気づくと桃太郎は反応を示さず顔を伏せ黙り込んでいた。


『おい、どうした?ホモは図星だったか?』


伏せたままの桃太郎だったが急に首が動き顔がこちらを向く。その表情は真顔だった。


かと思うとゆっくりと......ゆっくりと口元が緩み...

微笑んだ。


『!』


土筆は桃太郎との距離を空け間合いとり構える。


その瞬間桃太郎に電気のエフェクトの様な線が体全体に浮かびあがりパァーンと音が鳴るとともに光の粒子になった。


『ちょ、おまっ!』


そしてその粒子達は数秒浮遊した後土筆の体の中へと入っていった。土筆は粒子が入っていった胸のあたりを撫で驚きを隠せないでいるとどこからかあいつの声が聞こえてきた。


『この様に一つになります。全く変な展開にはなっていないかと思われます。ちなみに私は土筆様の心に問いかけおりますので他の方にはこの会話は聞こえません』


まぁ結合と言うよりかは同化って感じの結果で良かった。しかしこれから胸からじゃなく尻から入ってくるかもしれないから懐疑的だ。まだ疑っておこう。


『この空間の中にいる間土筆様の体は一つのデータとして存在しており、私が電子レベルまで体を分解して土筆様に入る事でアップデートした土筆様が誕生する訳です。言い換えればアップデータとなる私が土筆様にインストールされることによって土筆様は私のスキルを使えるということです』


『となるとアンインストールもできるのか?』


『すぐに私との結合を切り離すための削除を考えるとかそんなに嫌ですか?まぁ別に気にしませんけど』


『結合言うなよ』


頬を膨らませ少々不貞腐れ気味な表情をする。笑顔と無表情以外に初めて見せるリアクションであった。


『アンインストーラーが組み込まれておりこの空間から出ると自動で行われます。そしてまたこの空間に来ると再びインストールしないとスキルは使えませんよ』


『普通は導入と削除のプログラムってセットにされてると思うのだがその辺は融通が利かないみたいだな』


『では早速使ってみましょうまずは...』


ブゥゥゥゥーーーー!warning!warning!


しかし説明を遮断するかのように広域に渡るアラームが響く。








E-bookまとめ

RSに記された事柄は持ち主の辛い過去などである。戦いに勝ち続けることにより報酬として記載された過去をやり直すことができる。


プレイヤーはパートナーと一つになることでパートナーの持つ特殊な能力を使える。



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