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辛酸な過去を変えるため皆は電子書籍を更新する  作者: 彦音梟
3章亀毛兎角の罠
11/25

秘密


『今ドアの隙間から見えた人って誰?』


『彼は亀梨桜兎君だよ。女の子に人気がある男子だね。』


『あぁ…奏達から名前は聞いたことあったが見たのは初めてだ。』


すると香はこちらへと戻ってきた。


『亀梨さんが場所を移して話したいと言うので行ってきます。みんなは食事を続けてください。』


『1人で大丈夫?』


『時間はとらせないと言われたのですぐ戻ります。』


香と亀梨が移動を始めた。すると土筆と綾音が立ち上がる。


『ちょっと手洗い行ってくる。』


『彼に付き添うわ。』


そう言うと2人は廊下へ出て行った。


『行ってらっしゃ〜い』


奏は気にせず食事を続けていた。


『ねぇ、逆撫さん。今の会話に違和感を感じたのは僕だけかな?』


『そう?私もお手洗い行く時友達と行ったりするよ?』


『あ〜♪それもそうだね。僕の勘違いだったよ。食事を続けよっか。』


彼らが後から違和感に気づけるのは数十分はかかるのであった。


この学校の校舎は3つの棟で分けられている。生徒達が過ごす教室のある教室棟、教職員達の部屋である教務室や授業で使う特別教室などがある特別教室棟、部活動の部室として扱われる部室棟の3つである。


4人は教室棟から隣の特別教室棟へと移動し、亀梨、香が特別教室の並ぶ廊下で立ち止まると綾音は壁を背に引っ付けながら覗く姿勢をとる。


なんだあの覗き方?ドラマとかの見過ぎじゃね?


そう思いながら俺も綾音と少し距離を空ける位置で2人の動向を覗く。


『見つかるでしょ。もっとこっち来なさい。』


腕を引っ張られ綾音に覆い被さる体勢で覗くことになった。


『織部さん、昨日の件なんですが貴方は手紙に記した場所へ行きましたか?』


『は、はい!私は昨日の指定した時刻に屋上へ行きました!あの部室棟の!』


香は少し亀梨相手に緊張し声が高くなったり、張るようになっていた。


『そう言うことですか。ちなみに僕も指定時刻に屋上へ行きましたよ。教室棟の。』


『えっ!?何で教室棟の方に行かれたんですか?』


『それは手紙には"屋上"とまでしか記されていませんでしたので僕ら生徒にとっては身近である教室棟で待ちました。』


『そ、そうですか。学校の噂である恋の試練は部室棟を選択すれば成功率が高まるとも言われているので屋上への呼び出し=部室棟の屋上って解釈になってました。』


すると亀梨は腕を組み考え事を始める。彼の行動に香は首を傾げていると組んでいた腕が解かれる。


『あの...恋の試練って何ですか?』


『えっ?知らないのですか?一応誰しもが知る噂のはずなんですが。』


『多分僕がそういう類に疎いからだと思います。男子同士だとあまりそういう事話しませんから。』


『そういう事なら仕方ないですね。え〜とですね...』



土筆サイド


『なぁ、越矢子。恋の試練って何だ?』


『あら?香から事情を聞いたのではないの?』


『瞼の腫れについて聞いて振られたからだと記憶している。その恋の試練?については聞けてないんだ。』


『あらあら、この学校のことを知らないなんて津倉君は時代遅れの人なのね。それとも噂話をするお友達がいないのかしら?』


綾音の嘲笑を帯びた表情に土筆は一つ溜息。


『とりあえず俺の目の前にいる女は友達ではないと認識しておくぞ。それより早く教えてくれ。』


『...仕方ないから教えてあげましょう。』



長門サイド

『ねぇ、逆撫さん。亀梨君は織部さんとは仲良しだったの?』


『そう言えば神ちゃんは知らないんだっけ。この間香ちゃんが亀梨君相手にお付き合いしたいから恋の試練を仕掛けたんだよ。』


長門は首を傾げて少し考え始めた。


『う〜ん...恋の試練...だめだ僕は知らないよ。今時の流行か何かなの?』


『神ちゃん恋の試練も知らないの?遅れてるな〜じゃあ私が教えてあげるね。』



男性陣は皆聞いた事がないと発言したがそれはしょうがない事なのだ。恋の試練にはいくつか掟があるがその一つに"恋の試練について相手は認知してない状態である事"とある。


しかしコレだけの理由ならば彼らが知ってても可笑しくはない。しかしとある前提条件が入ると知らなくて当然になるのだ。


その前提とは"恋の試練とは女子なら誰しも知る情報"だ。入学時数人の女子生徒達には恋の試練の伝説が伝えられるのだ。これにより相手、つまりは男子に知られるのはよろしくはないはずである。


それに土筆、長門、亀梨達のような女生徒に人気のある者達には当然情報が流れることはなく漏洩もすることもない。



香サイド


ガラガラ


近くの扉が開き白衣を纏う化学担当の女教師が亀梨と香の前に現れた。


『あっ、織部さん丁度良かった。貴方に言伝があるのよ。ちょっと耳いいかしら?』


ニヤニヤしながら近づいてくると香に耳打ちをする。


『恋の試練は男性には禁句よ。じゃないと効果が無くなるわ。覚えておいてね。』


『えっ!?』


『じゃあ伝えたからね。頑張りなさい。』


香はなぜ恋の試練の話をしてる事が知られているのか分からず少し呆然としていた。


『織部さんどうしたの?何を言われました?』


『えっ?あ...ううん!なんでもないです。』


『そうですか。じゃあ改めまして恋の試練とはいったいなんですか?』


『えっと...あれです......占い...です。そう!占い。今週は学校の屋上がラッキープレイスなんですよ。えへへ。』


即興の言い訳と笑顔で誤魔化すと亀梨は納得したような表情を見せる。



土筆サイド


『その前に一つ。先ほど私の事を友達でないと言っていたけどそれを撤回しなさい。』


『えっ?いやだよ。撤回なんてするかよ。何故なら仲良くはないからだ。』


『いいのかしら。津倉土筆は友達と呼べないような仲良くない女生徒に無理やり迫る男と言う噂を吹聴させるわよ。今もこうやってゼロ距離にまで迫っていることだし言い逃れはできないわよ。』


『そんな噂を信じる奴なんていないだろ。俺には奏という女がいると噂があるらしいからな。あと今のこの距離だって見つかるだとかでお前が俺を引き寄せたんだろ。勝手に脚色するなよ。』


『噂と言うのは根拠となる出来事があって初めて成り立つものだと考えられないかしら?ほら火のないところに煙は立たぬと言うでしょ。』


スッと土筆の目の前に携帯電話を掲示するとそこには今現在の2人の密着写真が写っていた。


『これを黒板に張り出せば一気に...もごっ!』

土筆は綾音の口を手で封じつつ素早い動きで携帯電話を取り上げた。


『んー!んー!』


『全くいつの間に撮影したんだよ。無音のカメラとか卑怯だぞ。』


綾音は抵抗しようとするも壁と土筆で挟まれた体は身動きが取れないでいた。


『よし削除できた。あと手も離してやるよ。』


『も〜!手荒なことをする人には教えてあげないし後で後悔する事になるわよ。』


『いや、元々お前の脅迫の所為だし、後で奏から聞くからいいよ。』


『いいから2人の動向に集中しなさい。』


綾音は土筆との話を切り上げる。彼女は恋の試練について把握していたため元々教える気は無かった。今までのやり取りは話を終わらせる為の彼女の策だったのだ。



長門サイド


ポンポン


長門は後ろから肩を叩かれる。振り向くとロングヘアーの女生徒がお弁当を手に持っていた。


『僕に用事だよね。何かな?』


『あのね男の子の好みの味とか知りたいから少し私のお弁当を食べて欲しいの。ダメかな?』


『味見させてくれるの?ありがとう。あっ、でも...』


長門は奏の方をチラッと見てくる。


『あっ!私の方は気にしなくていいよ。じっくり吟味して感想言ってあげて。』


『そう?ごめんね逆撫さん。』


そう言い長門は女生徒の方へ向き直すと今度は奏の肩がトントン叩かれる。振り返るとセミロングの女生徒がおり座っている奏と同じ高さに屈んできてヒソヒソ声で話しかけてきた。


『なでちゃんダメだよ〜恋の試練を男子に言うのは御法度だよ。重罪だよ。死刑だよ。』


『えっ...じゃあ今私大変な罪を犯したから罰せられるの?』


奏は顔を真っ青にして涙が溢れそうになっていた。


『まぁ言う前だったからセーフだよ。だから安心して。ほら涙を拭いて。私の一口ハンバーグもあげるから元気出して。』


『あむ、ん〜♪美味しい♪』


『よ〜し元気出たみたいだね。なでちゃん例のアレ忘れちゃダメだよ。じゃね〜。』


奏の頭を撫でるとセミロングの女生徒は自分の席に戻る。しばらくすると長門の方も話を終え奏の方を向きなおる。


『お待たせ逆撫さん。何の話をしてたっけ?』


『えっ!?え〜と...忘れちゃったな。えへへ。』


『ふふふ。お互いうっかりさんだね。』


奏はとりあえずで笑顔で誤魔化すと長門も笑顔を見せクスクスと笑い合いどうにか難を逃れる。


数人の女子生徒達は入学式に、女性教員達は赴任した日に恋の試練の伝説を説明されている。人から人への伝達もあるのでルールを全て知らない者もいるが男子への情報の漏洩はないのだ。何故なら学校関係者(女性のみ)が全力で阻止するからである。


伝説での作法で恋が実ったとしてもそれを男性に伝えるのも禁止されているため口外の阻止は徹底的である。


香サイド


『あの〜亀梨さん。手紙で貴方を呼び出した理由と言うは私とデートをしてほしいからです。』


『デートですか...もちろん嬉しいお誘いですが、てっきり告白とかされるのかと思っていたので少し自惚れていましたよ。ははは。』


『お、お付き合いと言うのはお互いをもっと理解してからの方がいいと思います。なのでまずは遊びに出掛けましょう。』


『そういう事でしたら是非。次の休日にでもどうでしょうか?』


『はい、大丈夫です。』


恋の試練により早い方が都合がいいので同意する。デートの場所はすぐには決められないので後で決めるべく連絡先の交換を行った。


お互いにまだ昼食をとっていないので2人は解散をしようとすると、土筆と綾音はその気配を察知し急いで教室に向かった。


教室に向かうと奏がジト目でこちらを睨みつける。


『つっ君...よくよく考えてみたんだけどなんで男の子のつっ君と女の子の綾音ちゃんが一緒にお手洗いに行ったのか不思議でしょうがないんだけど。』


顔を紅潮していた綾音が説明に入る。


『あ、あったことだけ伝えるわ。目的地に着くや否や津倉君は私の背後に壁があることをいい事に両手を壁について体を密着させてきたの。』


『私は壁に押し付けられていてその場から逃げるという選択肢を塞がれていたから声を出そうとしたら彼は強引に私の柔らかい唇を彼の柔らかいものが塞いできたの。私はこんな体験するのは初めてだったから動揺してそのままされるがままだったわ。』


綾音は手で口元を覆い辱めを受けて恥ずかしいそうなリアクションをしていたがその背後にいる土筆には表情が見えていた。綾音の口元は舌を出していた。


この女自分の体験談を状況をうやむやな状態で説明してやがる。やっぱムカつく。


『おい!奏今のは...』


バチーーーン。

( ‘ ^‘c彡☆))Д´)


弁解の余地すらないとは...酷い。


叩かれた後でこちらの行動を事細かく説明すると奏は理解してくれた。


『じゃあつっ君の無罪判決が出たところで今後の話をするよ!』


『はい、無罪なのに実刑が下されたことに対して意義を申し立てる。』


『却下。では話し合うのはデートプランについて話合いましょう。』


『はい、冤罪行為を働いた越矢子さんに刑罰を科すべきだと思います。』


『ぶ、物騒な事はダメだと思うので却下にしましょう。あっ!なるべく私のことを知ってもらえるようなデートにしたいです。』


『だとするとお話が多くできたほうがいいんじゃないかな?その方が亀梨君に織部さんの事を多く知ってもらえると思うよ。』


『となると王道である遊園地だとか水族館では見たり乗ったりでリアクションくらいでしかアピールできないし香の希望にはそぐわないわね。』


『はい、刑罰って言い方が悪かった。こう...俺のように頬に一発でいいから平手打ちを...。』


『土筆ダメだよ。女の子に手をあげるなんて男のやる事じゃないから却下だよ。あっ、そうだカフェとか落ち着ける場所でランチをするって言うのはどうかな。できたら混まない時間帯とか穴場のような場所で静かな空間で過ごすのがいいよね。』


『確かに閑散とした空間の方が落ち着けて会話も弾むだろうし良い雰囲気に持ち込めるわね。ちょっと知り合いにお店巡りが趣味な子がいるからその子に穴場を聞くから今日の放課後にでも探しに行きましょう。』


『じゃあカフェ探しは放課後することにしてカフェ以外でアピールをすることとかできないかな?私はつっ君とならカフェでずっと過ごせるけど香ちゃんは難しいと思うんだよね。』


『確かに私自身口下手な部分があるからずっとカフェってなると相手を退屈にさせてしまうかもしれません。』


『それにデート中ずっと座らせるっていうのも気がひけるわ。だとするとアミューズメントの括りに該当しないデートとなると...買い物かしら。』


『はい、この際罰金的な処分でいいので何か奢って下さい。』


『つっ君!女の子からお金を取ろうだなんて紳士のやることじゃないから却下だよ。それと綾音ちゃんの意見に賛成だよ。カフェ近くでショッピングできたら凄くいい!』


『お互いに衣類とか小物を選びあったりすれば好みとかも知れていいと思うよ。』


『となるとカフェと近場でショッピングを踏まえた場所ね。追加項目としてそれも伝えておくわね。』


『もうなんでもいいからくれ〜。』


土筆は全員から却下されトーンが下がっていた。


『あ〜あ、つっ君が不貞腐れモード入っちゃった。期限直してもらわないと後々めんどくさくなるよ。』


『打ち合わせに参加するどころか邪魔しかしてない人のご機嫌をとる必要なんてないわよ。放っておきなさい。』


『ん〜でも少し土筆が可哀想かも。なんか無慈悲な事で傷ついてたりするからね。』


『わ、私のせいじゃないよ〜』


ふしゅ〜と漏れる空気の口笛を吹きながらそっぽを向く奏。すると綾音は土筆の横につく。


『確かにちょっとおふざけが過ぎたわ。近いうちにまたこうやってお弁当作ってきてあげるから拗ねるをやめなさい。』


すると土筆は言葉につられ綾音の方を見る。


『前に食べたお前手製のチーズ入りつくねを入れてくれ...』


『あら、津倉君リクエストするならそれ相応の態度を示すべきでは?』


『...頭は下がってるだろ...』


『もともと下がってる貴方の頭は懇願ではなく憂いでしょ。はぁ〜まぁいいわ。リクエストを受けるわよ。』


『え、マジ?』


土筆はスッと立ち上がると顔を微笑ませ綾音の頭に手を置き撫でてきた。


『!?』


綾音はビックリした表情を見せるもそのままジッとしていた。


『越矢子自身は気に食わないがお前の作る物はほとんど美味しいし、とくにあの時のつくねは気に入ってるんだよ。楽しみにしてるぞ。』


『つっ君!女の子に気安く触っちゃだめって言ったでしょ!』


『あっ...いや......いい事してくれる奴は褒めてあげたくなるように体が勝手に動いちまうみたいだ。悪いな越矢子。こんな体になったのも奏の所為だから文句はあっちに言ってくれ。』


奏に指摘され手を離すと綾音の顔は少しムスッとした表情に変わっていた。


『...別にいいわ。褒められているのだから悪い気はしなかったわ。...少し席を外すわね。』


綾音はそう告げ廊下へと出て行った。


『綾音ちゃん怒った表情をしてましたね。』


『俺は指摘された時手を払いのけ、ダメージを受けた俺の頬に平手打ちをしてから冷たい言葉をマシンガンの如く浴びせてくるのを想像したぞ』


『私は怒りとは違うような表情に感じたけどな...』



綾音サイド


『う〜んまだドキドキしてるみたいね。あのような行為はなるべく控えてほしいわね...大抵のことならなんにでも対応できるけれど不意打ちとかイレギュラーの対象になると驚いて心拍数が上がって行動に移せなくなるのよね。今度そういう事が起きないよう注意しないといけないわね。』


『越矢子さん。どうしたの?』


1人でぼやいていると反対方向から同じ部活の部員から声をかけられる。


『こんにちわ。とある方の条件反射の標的にされて被害を被り気分が下がっていたのよ。』


『えっ?そうなの?確かに何か呟いてたのは分かったけど顔は微笑んでたからいい事があったのかと思ったよ。』


『笑み?私が笑っていたというの?』


『うん。なんか自分の頭に手を置いて歩いてたからポージング的に違和感を感じていたけど越矢子さんの笑みが伺えたからいいことあったのかと声をかけたの。』


『い...いえ、大丈夫よ。ちょっと急ぐから失礼するわ。』


トイレの個室へ入り一旦自分を落ち着かせる。自分が頭を撫でられて喜んでいたという事実が疑問でしかたなかったのだ。再び自分の頭に手を乗せて撫でてみるが何が良いのか全く分からない。そんな行為を数回繰り返したが解あみだせず昼休みが過ぎていった。


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