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辛酸な過去を変えるため皆は電子書籍を更新する  作者: 彦音梟
3章亀毛兎角の罠
10/25

気落


『...来ない。』


時は恋文を出した翌日の放課後。亀梨を呼び出した場所である学校の屋上で香は待機していた。しかし約束の時間から既に30分は経っていた。


『はぁ〜亀梨さん遅いです。元々用事があって来れなかったとか...それとも今日は風邪でも引いてるのかも...はたまた私の手紙に気づかなかったってことも...はっ!』


いろいろ理由を考えていると急にある事を思い顔色が青くなっていく。


『...もしかしたら...私の事嫌いだったとか......あぁ...きっとそうだ私が根暗だから亀梨さんには評価悪いんですねきっと...』


香は自分に都合が悪いことが起きると自分を卑下してしまう内向的な部分があった。それは昔から人との関わり合いが少なかった証拠でもあった。


『うぅ〜もういい。私は振られましたからもう帰りましょう。今日は枕を濡らすことになりそう...コットンアイパックの準備もしておこう。腫れ目にいいって綾音ちゃんが言ってましたし。』


香はとぼとぼ歩きながら学校を後にした。薬局でコットン買う際の香の顔は店員が引くぐらいの絶望感を漂わせていた。


翌日


『あっ!つっ君おはよー!』


『おっ、うっ!』


バタバタと近づきドスンとタックルのように抱きついてきた。


『奏おはよう。毎日校門の前で御苦労だな。』


『えへへ〜つっ君と一緒に登校したいんだもん。それにつっ君も必ずってくらいに同じ時間に学校着くから本当は私と一緒に登校し続けたいって思ってるんじゃないの?』


いや、一年の頃から時間変えてないだけなのだが...まぁいいか適当に。


『そうだな。朝から元気なお前と会うと目が覚めるからな。』


『ふふふ。元気な姿見ると目が覚めるとか嬉しいこと言ってくれるね。それじゃあ行こっか!』


目は覚める。......タックルでだが...


2人で教室に入ると既に香の後ろ姿がそこにあり挨拶をする。


『香ちゃんおはよう!昨日はどうだった?ちゃんと誘えた?』


『おい、奏。何のことか分からないが織部の顔をよく見ろ。泣き明かして瞼が腫れてるみたいだぞ。』


『えっ!?あっ!本当だ!香ちゃんの瞼が凄いことになってる!大丈夫?香ちゃん!?。』


香は土筆達の発言を聞き瞼を隠した。


『...そ、そんなに凄いことになってますか?』


『俺は一瞬織部じゃないかと思ったぞ。』


『うぅぅ、は、恥ずかしくなってきました...』


香の声は傷心しているのに加えて羞恥心を感じ始めどんどん弱々しくなっていた。


『あっ!そうだ。保健室行こうよ。あそこならなんか対処できるかもよ。』


『うぅぅ...こんな顔じゃ移動したくないよです...』


『じゃあこうしよう。織部、俺の背中に乗れ。負ぶさってやるから。』


『えっ...で、でも悪いですよ。』


『いつまでもそうしてると授業中に先生に注意されちゃうよ。早く乗った乗った!』


奏に押され土筆に乗るとすぐさま移動を開始した。


『おい、織部。俺の体で顔を隠すのはいいんだがあまり匂いとか嗅がないでくれよ。少し汗っぽいかもしれんから。』


『...汗?』


クンカクンカと鼻をひくつかせ匂いを嗅ぎ始める香。


『いや、だから止めろって言う話だったんだけど...』


『ん〜大丈夫ですよ。(クンクン)土筆君の匂い臭くないですよ。(クンクン)寧ろなんか頻繁に嗅ぎたくなる感じです。(クンクン)』


『あっ!香ちゃんずるい!私も後で匂い嗅がせて!』


『おい織部もう止めろ。お前のしている行為は変態と一緒だぞ。奏にも移ったらどうする。』


『えっ!?私もつっ君の匂い嗅ぎたくなると変態になるの!?ん〜変態の称号は嫌だけど...つっ君の匂い嗅げるなら...』


『そこはきっちり嫌がれよ。そして俺は嗅がれたくねえよ。』


『ふふ、ふふふふふ。相変わらずですね2人共。ふふふ。』


『やっと笑ってくれたな。さっきまで絶望の淵に立たされているような顔した奴が。』


『えっ?』


『そうだね。さっきまで消え入りそうな声だったしなにより元気がなかったもん。』


『あ...そうでした。態度が悪かったです。ごめんなさい。』


『まぁいい。保健室着いたから入るぞ。』


ノックをして入室すると養護教諭の存在は確認できなかった。なので自分らで対処する事にした。


『とりあえず腫れ目を治そう。温かいタオルと冷たいタオルを交互に当てれば腫れも引く。』


『凄いね!つっ君そんな事まで知ってるんだね。』


『いや、これは越矢子が言ってたのを覚えていただけだ。豆知識を多く知ってるからあの女には関心させられる。』


香をベッドで横にさせると保健室にあるタオルを濡らし電子レンジを使って温めていきホットタオルを作るとそれを彼女の瞼に当てると恍惚とした声が漏れる。


『あ...気持ちぃ...』


『つっ君、今香ちゃんがエッチ〜声出たような気がするんだけど何したの?』


奏のジト目攻撃が繰り出された。


『俺はホカホカしたタオルを乗っけただけだし声に関しては気のせいだよ。そろそろ担任が来て朝礼をする時間になるから奏はこっちの現状を伝えてきてくれ。もちろん朝礼はサボるからな。』


『う〜ん、まぁいいや。分かった!伝えたらまた戻ってくるからね!』


奏は颯爽と立ち上がり保健室のドアを開けると立ち止まりこちらを振り向いた。


『タオルで香ちゃんの目が見えてないからっていやらしいことしちゃ駄目だからねー!』


言い放つと駆け足で保健室を後にしていった。


だから言い逃げはフラグの元だから止めなさいって......まぁ、言ったことないけど。


『すまないな騒がしくて。そろそろ冷たいのと入れ替えるぞ。』


ホットタオルを乗せている間に冷凍庫にある保冷剤をタオルで包んだアイスタオルに入れ替える。


『...あっ...ん...これも気持ちぃ...』


声だけ聞くと確かに艶っぽく聞こえたが気にしないでおくことにした。


『織部は何で涙目になっていたか理由は話せるか?無理には聞くつもりはないが。』


『土筆君はここまでしてくれてますし、言いふらしたりしない人だとも知ってます。何より奏ちゃんが信頼してる人ですしお話します。』


香は亀梨桜兎に振られてしまったことを土筆に伝えた。話を聞いている際も何度かタオルを取り替えていった。


『そうか、失恋で泣いてたのか。大変だったな。しかし女は恋をすればするほど美しくなるらしい。今回はその経験値を得たと考えればいいだろ。』


『土筆君ありがとう。』


『タオルを取り替える際に確認してたが腫れは回復してるから次のアイスタオルで終わりにしよう。』


『あっ、じゃあ貸して、自分で乗っけます。』


言われるまま香にでアイスタオルを渡す。


スル!『あっ!』『あっ。』

ポトッ『あんっ!』


瞼に運ぶ途中でタオルの中にある保冷剤が隙間から落ちてきて首辺りにそれが接触する。


『そういえば織部は少し抜けている節があるあったな。首のとこ濡れてみたいだし拭いてやるからアイスタオルを乗せてなさい。』


『ご、ごめんなさい。お願いします。』


保冷剤を包み直すと香の瞼にのせ自分のハンカチを取り出すと身を乗り出す体勢で彼女の濡れた首を拭いていく。


ガラガラ


ゆっくりとドアが開かれる。


『...2人共何してるの?』


普段はバイタリティ溢れる声が今は重圧感のようなものが含まれていた。


俺は体勢を直し香も奏の声に気づき体を起こす。


『なんか香ちゃんのエロい声が聞こえたんだけど...それにさっきの体勢...香ちゃんがタオルで目隠しをされてつっ君は上半身が香ちゃんに覆い被さって首筋をさすられているような体勢に見えてたんだけど。』


『か、奏ちゃん誤解だよ!津倉君の(渡してくれた保冷剤)で(首を)濡らして(冷たさを)感じちゃって(びっくりして)声が漏れちゃっただけなんです!』


ちょっと〜織部さんちょっと言葉足りないよ。貴方の言葉はフォローになってませんよ。


バチーーーン。

( ‘ ^‘c彡☆))Д´)


火に油とか傷口に塩...


『まったく!つっ君はすぐ女の子の体に触れようとするんだもん!ベタベタ触れるのは私だけにしなさい!』


『あぁ、そういった観点で怒ってたのね。』


てかお前ならいいのかよ。


『大丈夫だよ奏ちゃん!土筆君は看病してくれた紳士さんだよ。』


『香ちゃんがそう言うなら...あっ!腫れ引いてるね。良かった良かった!』


『腑に落ちない結果だがまぁいいか。教室に戻るぞ。』


香の目の腫れが完治すると3人は教室へと戻る。朝礼までで事を終えたので授業は普通に受けることができた。


淡々と時間が過ぎ昼休みとなる。


奏、香、綾音の3人はいつも通り机を囲み食事を摂ろうとしていた。


『あっ!』


『どうかしたの香?』


『はい、昨日の事でいっぱいいっぱいになっちゃってお弁当用意してなかった事を忘れてました...』


『そう、なら都合がいいわ。ちょっとおかずを作り過ぎてしまったから食べてもらいたいのよ。』


『え?』


そう言うと綾音は自分のではないロッカーからクーラーボックスを取り出した。


『綾音ちゃん使われてないからって私用で使うのはよくないよ。』


『大丈夫よ。利用するのは必要な時だけだから。』


クーラーボックスを開くと中から二段式の重箱が出てきた。


重箱を広げると一段目に可愛いサイズのおむすびが詰められ二段目には彩り豊かなおかずが詰められていた。


『これってちょっとって量じゃないですよ!あっ!まさか私のために!?』


『うふふ。さてどうかしらね。とりあえず食事にしましょう。』


『ありがとう綾音ちゃん!私凄く嬉しいです!』


綾音は微笑みを見せると香は思いがけず抱きついてきた。少女2人の抱き合う光景を目の当たりにしたクラスメイト達は目を輝かせる者、顔を赤らめる者、股間をおさえる男子等々様々なリアクションを見せていた。


『でもこの量私を含めても女の子3人じゃ食べ切れそうにないと思うよ?』


『じゃあこうしましょう。人数が増えればいいわよね。男子とか。』


その発言と共に綾音は立ち上がり周囲を見回す。美少女達と食事を共にする事ができるかもとクラスの男子はソワソワしだす。綾音は席を離れるととある男へと近づく。


『ちょっとよろしいかしら?』


その男の肩に触れながら声を掛けると男は首だけ振り向く。声の主が綾音だと気づくと男は眉間に皺を寄せ溜息を出し気怠げな態度になり体ごと彼女の方へ向けた。


『何か用か越矢子?それともまた罰ゲーム?』


『罰ゲームって何の事かしら?』


『男避けで抱きついてくるやつに決まってるだろ。』


『あら、私みたいな美少女に抱きつかれているのに歓喜に至らないなんて貴方ってやはり変態?それとも男色派?』


『全ての者がお前を好色に捉えると思うなよ。それと俺はノーマルだ。』


『アブの付く?』


『付かん。それより何か用か?俺は長門と共にランチを楽しんでいるのだが。』


『要件は一つよ。2人には私と共に...』


『しない。じゃあな。』


『土筆、話はキチンと聞いてあげようよ。それで要件は何かな?』


『お昼を一緒にどうかと言いたかったのよ。もちろん奏と香もいるわ。お昼を作り過ぎたから減らすのを協力して欲しいから誘いに来たわ。』


『そう言う類なら協力してやる。長門もそれでいいか?』


『僕はそれでいいと思うよ。みんなで食べればさらに美味しくなるもんね。』


永神長門なががみながと

見た目が女の子と見間違うような中性的な顔立ちをしている男子。温良恭倹(おんりょうきょうけん)な性格と矮躯わいくな背格好から女性と間違い男子から告白されたことがある。男性と知って告白する者も少なくはない。男前な土筆と女性のような長門の組み合わせは一部の女生徒に盛名を得ている。



机を並べて5人で食事をし始める。


『5人ではよく話しますが一緒にお昼は久しぶりですね。』


『嫌われ者がいるから近づけないんだろ。よく人をおちょくるやつとかな。』


『私は基本周囲に対してそれなりの友好関係で接しているわよ。一部を除いてね。だから該当しないわ♪』


『神ちゃんも偶にはコッチ来ていいんだよ?』


『そうすると1人になっちゃう人が出るから僕はその人に合わせるよ。そうすれば寂しくならないからね。』


楽しく談笑しながら食事をしている1人の女生徒が近づいてきた。


『香ちゃんお客さんが来てるよ。』


クラスメイトの子が声を掛けに来てくれて廊下を指差した。


『ありがとうございます。』


一声かけて廊下に出る。するとそこにはラブレターを出した相手である亀梨桜兎が待ち構えていた。



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