クロエ参上
コフッ。
壁に打ち付けられた際の衝撃で息が洩れる。
赤い筋が頭部から流れている。
壁を背に、もたれかかることでなんとか上半身を起こす。
アリスちゃんの影、かと思ったそれは影ではなく漆黒のねこ(型生物)だった。
毛並みは荒れていて、所々に傷跡が見られ、瞳からは激しい敵意が感じられるものの、身の丈、色を別としての模様などはアリスちゃんと似ている気がする。
アリスちゃんとは違って良くなく声は、見かけよりまだ幼いときの高い音だ。
何かを伝えようとするかのように鳴いていたが残念ながらわからなかった。
洗って丁寧に梳いてあげたら、この子も気持ち良さそうなのにな、と少し残念に思っていたところで視界がブラックアウトした。
飛び出してきた人間を吹き飛ばした人間は相手から危害を受けることがなさそうだと判断したところで、相手に問いただした。
「俺の名はクロエ。このあたりに俺に似たやつがいるはずだ、おとなしくソイツをこちらに渡せ、さもなくば貴様らの命の保証はない」
そうはいったものの、相手は首を傾げて困った風な表情を一瞬見せた後、うっすらと笑みを浮かべて意識を手放した。
それがクロエにとって不愉快だったのか恐れだったのか咄嗟に手が出た。
見かけとは裏腹に、その一撃に込められた力は尋常ではない。
そのまま直撃していれば目の前の人間が目を覚ますことはないだろう。
クロエにとって、不意に反応してしまった、という不愉快さこそあれ、それだけのことでもあった。
しかし、それが現実になることはなかった。
目の前の人間に集中していて意識がまったく向けられていなかった横から、体全体に強烈な衝撃が走った。
2mほど身体を滑らせながらも体勢を整えたクロエが視界に捉えたのは今度こそ本物のアリスだった。
「あいたかったぜ、俺の半身」
よくわからニャいけど軽い身体を限界まで働かせて家のある森から一直線に駆けてきたところギルドのほうで土煙が上がっており、誰かが倒れており、そこに近づく黒い影を見た私は何はともあれ突っ込んだ。
考える余裕も時間もなかったのである。
身体を起こすと同時に晴れた土煙の先にいたのは色こそ違えど鏡に映したかのような、いや、色が違えばやっぱ別物かな?でも私そっくりの姿だった。
みゃあみゃあなんかいってたけどよくわからなかった。
こちらの世界に来て始めてあった同族?に現状を忘れてテンションの上がった私はとりあえずいった。
「えっと、初めまして?」




